「弦楽四重奏曲第1番 へ長調」——兄を亡くした親友へ贈る四重奏曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
兄を亡くした親友へ贈る四重奏曲「弦楽四重奏曲第1番 へ長調」
作品18の曲番は、1801年6月と10月の2期に分けてウィーンのモロ社から初版出版された際につけられた番号で並べられているが、作曲成立順とは異なっている。作品18-1の「へ長調」四重奏曲にだけ、現在知られている形とはかなり内容の異なる初稿写本が完全な形で残されている。1799年2月から4月にかけて作曲された初稿で、この夏、実兄が亡くなったという報せを受けて帰郷する親友アメンダに、記念品としてプレゼントするために作成された写本である。その表紙には「四重奏曲第2番 へ長調」という表記と友情溢れる献辞がある。
「親愛なるアメンダ! われらの友情の小さな記念としてこの四重奏曲を受け取ってください。また、時折演奏し、その都度われらが過ごした日々を思い出し、それがどれほど素晴らしいものであったか、そして、これからも常に素晴らしいものであるかを心にとどめておいてくれますように。
君の真なる、そして思いやりある友
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
ウィーン、1799年6月25日」
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)52、53ページより
6曲ある弦楽四重奏曲作品18の中で、2番目に書かれた第1番は、ベートーヴェンの親友であるアメンダへと贈られました。この作品の優しい音色は、実のお兄さんを亡くしたというアメンダに響いたでしょう。2人の友情を感じる暖かい作品ですね。
「弦楽四重奏曲第1番 へ長調」Op.18-1
作曲年代:1799年2〜4月(ベートーヴェン28歳)
出版:1801年6月モロ社(ウィーン)
1800年夏改定が決定稿
Op.18は3曲ずつ2回に分けて出版
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