「弦楽四重奏曲第5番 イ長調」——ベートーヴェンの慎重かつ入念な取り組み
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ベートーヴェンの慎重かつ入念な取り組み「弦楽四重奏曲第5番 イ長調」
ベートーヴェンの主要作品ジャンルの中で最も遅く着手されたのが弦楽四重奏であり、また、ピアノ・ソナタも交響曲も全て書き終えた最晩年の2年半すべての創造力を注いだのも弦楽四重奏である。このことはベートーヴェンが弦楽四重奏を最も崇高な音楽表現であるという信念をもっていたからと考えられる。最初の作品となる6曲セットの作品18に着手したのが1798年夏であったが、これ以前に初期稿の形であるにせよ2曲のピアノ協奏曲や10曲ほどのピアノ・ソナタ、そしてさまざまな形態による多くの室内楽を作曲していたことを考えれば、弦楽四重奏曲への着手がいかに慎重であったかが窺える。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)222、223ページより
この作品は、6曲セットである作品18のなかで4番目に作曲されました。「弦楽四重奏曲第2番 ト長調」のときにご紹介したように、ベートーヴェンはあるタイミングで作品18を見直して改訂しています。このことからも、弦楽四重奏に対するベートーヴェンの向き合い方が感じられますね。本日は「弦楽四重奏曲第5番 イ長調」。明るく華やかなこの作品を聴いてみましょう。
「弦楽四重奏曲第5番 イ長調」Op.18-5
作曲年代:1799年6〜8月(ベートーヴェン28歳)
出版:1801年10月モロ社(ウィーン)
6曲セットのOp.18の後半3曲の出版
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