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2020.06.19
おやすみベートーヴェン 第187夜【作曲家デビュー・傑作の森】

「交響曲第3番 変ホ長調《英雄》第2楽章」——ベートーヴェンが怒り心頭?その訳とは

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ
編集協力:水上純奈

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ベートーヴェンが怒り心頭?その訳とは「交響曲第3番 変ホ長調《英雄》第2楽章」

昨日に引き続き、本日は「交響曲第3番 変ホ長調《英雄》」の第2楽章です。この作品は、もともとナポレオンを指す《ボナパルト》という名前だったことをご紹介しました。1804年5月に自らを皇帝を名乗るようになったナポレオンと、この交響曲について見てみましょう。

つまり、ベートーヴェンが本当に「あの男も所詮は平凡な人間に過ぎなかったのだ。自己の野心のために全ての人の人権を足下に踏みにじったのだ」と怒り心頭で浄書スコアの表紙を抹消したという話が事実であったとしても、それは5月や6月のことではなく、ナポレオンが実際に戴冠式を行った同年12月2日以降のことであったと思われる。なぜならば同年8月26日付でライプツィヒの出版社ブライトコップフ・ウント・ヘルテル社に宛てた手紙(BB188)に「今提供できるのはオラトリウム、新しい大シンフォニー、全オーケストラを伴うヴァイオリン、チェロとピアノフォルテのためのコンチェルタント、3つの新しい独奏ソナタ」と列挙し、「このシンフォニーは本来ポナパルトとタイトルされたもので、通常の全ての楽器の他に特別に3本のオブリガート・ホルンを必要とします」と明記しているからだ。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)73-74ページより

ベートーヴェンが怒り心頭で表紙を抹消したというエピソードは興味深いですが、彼はナポレオンが皇帝に即位するとわかってからすぐに交響曲のタイトルを変えた、というわけではなかったようです。 

今までの交響曲では考えられない「葬送行進曲」と名付けられた第2楽章は、威厳を感じる重々しい主題で始まります。この楽章が「英雄の死と葬送」をテーマにしているため、ナポレオンに失礼にならないよう、彼の名前を直接タイトルにしなかったという説もあるそうです。

作品紹介

「交響曲第3番 変ホ長調《英雄》」Op.55

作曲年代:1803年(ベートーヴェン32〜33歳頃)

初演:1805年4月7日

出版:1806年10月美術工芸社(ウィーン)

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

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