「ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調《ヴァルトシュタイン》」——10年越しの感謝を示した超大作
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
10年越しの感謝を示した超大作「ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調《ヴァルトシュタイン》」
今回ご紹介する「ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調《ヴァルトシュタイン》」は、今までのピアノ・ソナタと比べると、音域や強弱の使い方などが格段に進化している作品。規模もかなり大きいものになっています。
それはこの作品が1803年、当時の有力なパトロンであるリヒノウスキー侯を介して、エラール社から贈られた新製品、68鍵のピアノに刺激されて作曲されたからです。
では、なぜこの作品のニックネームは《リヒノウスキー》や《エラール》ではないのでしょうか?
平野 この作品を献呈されたフェルディナント・フォン・ヴァルトシュタイン(1762-1823)はベートーヴェンにとって重要な存在です。彼がボン時代にまだクラヴィコードしか持っていなかった時に、ヴァルトシュタインがボンに来てベートーヴェンの才能を高く評価して、当時新製品だったシュタイン製のピアノをプレゼントしたのです。恐らくその時の記憶が、エラールの新しいピアノをもらったことでよみがえったのでしょう。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)17ページより
ベートーヴェンは10年前、ボン時代に自分を認めてくれたヴァルトシュタイン伯爵への感謝の念を、この大規模な作品で示したのですね。創作を大いに刺激した、フォルテピアノでの演奏も併せて聴いてみましょう。
1802年製エラール、クリストファー・クラーク複製の楽器による演奏
「ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調《ヴァルトシュタイン》」Op.53
作曲年代:1803年〜1804年(ベートーヴェン33歳〜34歳)
出版:1805年5月美術工芸
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