「ピアノ・ソナタ第22番 へ長調」——本当はソナタじゃない? 特異な作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
本当はソナタじゃない? 特異な作品「ピアノ・ソナタ第22番 へ長調」
先日ご紹介した《ヴァルトシュタイン》と、この後に書かれるピアノ・ソナタ第23番《熱情》という2つの大作に挟まれた、2楽章構成の愛らしいソナタ。しかし、「ソナタ」と呼ぶには少し風変わりな作品なようです。
平野 第1・第2楽章ともにヘ長調で書かれています。これは異例なことです。また、どちらもソナタ形式になっていません。(中略)
ソナタ「形式」は使われていませんが、「ピアノのためのソナタ」ではあるので、ソナタということになります。(中略)
出版はしたものの、ベートーヴェンがこの曲を本当にソナタとして望んで出版したかったかどうか、その真意は定かではありません。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)20,21ページより
小山さんと平野さんは音楽的な関連性から、この作品を《ヴァルトシュタイン》の2楽章のために最初に書かれた「アンダンテ・ファヴォリ」と、現在の《ヴァルトシュタイン》の2楽章に使われた作品とのあいだに作曲されたもの。試し書きしたものではないか、と推測しています。
出版がベートーヴェンの本意でなかったとしても、美しく、愛らしい作品です。
「ピアノ・ソナタ第22番 へ長調」Op.54
作曲年代:1804年(ベートーヴェン34歳)
出版:1806年美術工芸
「ベートーヴェンとピアノ」続巻 発売中!
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