弦楽四重奏曲第7番ヘ長調 第1,2楽章——爆発的創造期に突入! ラズモフスキー1曲目
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
爆発的創造期に突入! ラズモフスキー1曲目 弦楽四重奏曲第7番ヘ長調 第1,2楽章
《レオノーレ》改訂版が初演されていた1806年4月ころのスケッチ帳に、弦楽四重奏曲のための集中的なスケッチが現れる。(中略)この時作曲していたのはウィーン貴族界の名士と言われたロシア全権大使のアンドレイ・キリロヴィチ・ラズモフスキー伯爵から依頼された弦楽四重奏曲である。
作品18(弦楽四重奏曲第1~6番)を完成させた後、ベートーヴェンは弦楽四重奏曲の作曲からしばらく遠ざかっている。約6年の間をおいて1806年4月から同年11月までの半年強で3曲からなる《ラズモフスキー四重奏曲》が生まれる。作品18とは音楽表現の多彩さと新鮮さ、そして響きの充実度において隔世の感がある。この6年間には交響曲第2番、第3番《エロイカ》、ピアノ協奏曲第3番、ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲、そしてオペラ《レオノーレ》などが書かれている。また、1806年夏にはこの四重奏曲セットの作曲と並行して交響曲第4番やピアノ協奏曲第4番も作曲されており、創造力の爆発期に生まれた弦楽四重奏曲となっている。セット中の第1番ヘ長調四重奏曲は3曲中で最も長大な作品で、その規模は《エロイカ》交響曲に相当する。また、この作品でベートーヴェンは、主題呈示法や楽章配列に新機軸を打ち出している。
全楽章の主題がカンタービレ(歌のように)な性格をもっているのも大きな特質だが、第1楽章開始主題をチェロに呈示させるという大変に印象深い方法も、18世紀まではもっぱら和声的バス声部担当として甘んじていたチェロ奏者には新鮮な驚きであっただろう。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)88,89,226 ページより
「ラズモフスキー四重奏曲」と呼ばれる由来であるアンドレイ・キリロヴィチ・ラズモフスキー伯爵は、ベートーヴェンのパトロンのひとり、フランツ・ヨーゼフ・マクシミリアン・フォン・ロプコヴィッツ侯爵の義理の兄弟にあたる人物です。
弦楽四重奏曲第8番ホ短調Op.59-1
作曲年代:1806年4~7月(ベートーヴェン36歳)
出版:1808年1月美術工芸社(ウィーン)
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