「自作主題による32の変奏曲」——《運命》直前! 同じく「ハ短調」で書かれた実験的な作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
《運命》直前! 同じく「ハ短調」で書かれた実験的な作品「自作主題による32の変奏曲」
ベートーヴェンは変奏曲を22曲(第1作は11歳のときの《ドレスラー変奏曲》WoO63)残しているが、そのうちの12曲は1790年代にピアニストとして活躍した時代の作品である。すべて第三者によるオペラやバレエ音楽などに含まれるヒット曲(アリアや舞曲旋律)を主題とした装飾変奏で、ベートーヴェン一流の即興性に富むピアノ表現を誇示するものとなっている。しかし、1800年の自作主題による「6つの易しい変奏曲」WoO77を経て、1802年の自作主題による「6つの変奏曲」作品34および同年の《プロメテウス変奏曲》作品35からは、従来の装飾変奏とは別の変奏表現の可能性を追求する段階へと入ってゆく。
《プロメテウス変奏曲》のあと4年の空白をおいて、1806年に書かれる《自作主題による32の変奏曲》WoO80は、いかにもベートーヴェンらしい「ハ短調」主題が設定されているが、これに作品番号を与えなかったのは実験的な新しい試みに満ちているからかもしれない。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)247ページより
明後日からご紹介する言わずと知れた名作、交響曲第5番《運命》の直前に、同じ調性「ハ短調」で書かれた変奏曲です。交響曲や弦楽四重奏と並んで、生涯作曲し続けることになるジャンル「ピアノのための変奏曲」。傑作を連発する時期の、ベートーヴェンの実験性あふれる作品をお楽しみください。
「自作主題による32の変奏曲」WoO80
作曲年代:1806年秋(ベートーヴェン35歳)
出版:1807年4月
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