「ピアノ、合唱と管弦楽のための幻想曲」——演奏会の大トリで大失敗!?
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
演奏会の大トリで大失敗!?「ピアノ、合唱と管弦楽のための幻想曲」
本日ご紹介する「ピアノ、合唱と管弦楽のための幻想曲」通称《合奏幻想曲》は1808年の12月22日にウィーンで行なわれたベートーヴェンのアカデミーで初演されました。交響曲第5番、6番やピアノ協奏曲などを一挙に演奏する大掛かりなものであったようです。
英雄様式期の傑作を集めた一世一代のアカデミーは、生涯忘れられないスキャンダラスな演奏会にもなってしまった。最後の演目《合唱幻想曲》の演奏が途中で乱れて中断し、最初から演奏しなおすという前代未聞の失敗をしでかしたのだ。この時の様子を伝える証言は多く、演奏会に居合わせた音楽家や貴族たちがそれぞれに書き残しているが、その原因はすべて憶測で人によってかなりの違いが見られる。(中略)それらを総合すると、12月に入ってから作曲され、この演奏会の数日前に完成された《合唱幻想曲》の練習で、本番演奏ではリピート(反復)しないという約束を、独奏ピアノを担当していたベートーヴェン自身がリピートしてしまったために、繰り返さず先に進んだオーケストラとの間に大不協和音を響かせてしまい、ベートーヴェンが大声で「止めろ、止めろ!もう一回、最初からだ!」と叫んだというものだ。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)102、103ページより
この作品は、12月になってから急いで書き上げられました。単純に練習不足による失敗だったようです。当時の証言が多いということは、よほど印象に残った演奏会だったのでしょうね。
その後1809年5月には、初演時に半ば即興だったというピアノ導入部が作曲されました。
「ピアノ、合唱と管弦楽のための幻想曲」Op.80
作曲年代:1808年12月(ベートーヴェン38歳頃)
初演:1808年12月22日
出版:1811年
テキスト:クリストフ・クフナー
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