「交響曲第8番 へ長調 第2楽章」——温泉地で作曲に集中し、あの有名人との出会いも
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
温泉地で作曲に集中し、あの有名人との出会いも「交響曲第8番 へ長調 第2楽章」
ベートーヴェンが2年続けてテープリッツを訪れた理由のひとつが実現する。ゲーテとの出会いだ。すでにベッティーナ・ブレンターノ(フォン・アルニム)を仲介としてふたりの偉大な芸術家の邂逅が準備されていた。ゲーテがこの地に到着した4日後の7月19日から2日間にわたってふたりは芸術談義に花を咲かせ、近隣の景勝地ビリンの散策を楽しんだり、夕べにはベートーヴェンのピアノ演奏を楽しんだりしている。ゲーテはこの出会いの晩に妻宛に「あのように集中的で、エネルギッシュで、しかも内省的な芸術家にはかつて会ったことがない」といった内容の称賛と感動の手紙を書いている。
8月8日にはブレンターノ一家とともに15キロほど離れたもうひとつの温泉地フランツェンス・ブルンにまで足をのばし、ここに1ヵ月滞在して交響曲第8番の作曲に打ち込んでいる。この地でもやはり、逗留中の音楽家たちとチャリティー・コンサートなどを開いたようだ。すでにブレンターノ一家はウィーンに向けて帰途についていたが、ベートーヴェンは9月8日にカールスバートに戻り、1ヵ月半ぶりにゲーテと再会し、1週間ほどの滞在中に一層親交を深めた。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)132、133ページより
「交響曲第7番 イ長調」を作曲し終わってから、夏には温泉地に滞在して第8番の作曲に集中していたようです。そしてその前後には、ゲーテとの対面を果たしています。以前、ゲーテが書いた悲劇《エグモント》に曲をつけたこともあり、ベートーヴェンにとっては念願の対面だったことでしょう。
本日お聴きいただく第2楽章は、少し短めです。緩徐楽章ではなく、へ長調の軽やかさや明るさを存分に楽しめる楽章です。
「交響曲第8番 へ長調」Op.93
作曲年代:1812年(ベートーヴェン41歳)
初演:1814年2月27日
出版:1817年春S.A.シュタイナー社(ウィーン)
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly