「ヴァイオリン・ソナタ第10番 ト長調」——前作から約10年、注目の初演はベートーヴェンの愛弟子が担当!
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
前作から約10年、注目の初演はベートーヴェンの愛弟子が担当!「ヴァイオリン・ソナタ第10番 ト長調」
「ヴァイオリン・ソナタ第9番《クロイツェル》」作品47から約10年、本日ご紹介するのは、ベートーヴェンの生涯最後のヴァイオリン・ソナタです。
暮れのウィーンには多くの音楽家が訪れ、ベートーヴェンとの交流を望む者も少なくなかった。(中略)フランスのヴァイオリニストのピエール・ロード(1774〜1830)も演奏旅行の途上に立ち寄りベートーヴェンに会っている。その際ベートーヴェンの新作のヴァイオリン・ソナタで演奏会をしたいと強く懇請していたのかもしれない。暮れも押し迫った12月29日にロプコヴィツ侯邸で開催された私的演奏会で、新作のヴァイオリン・ソナタ「ト長調」作品96がルドルフ大公のピアノとロードのヴァイオリンで初演されている。前作のヴァイオリン・ソナタ《クロイツェル》からおよそ10年ぶりのこの作品は、前作の難解さとは対照的に明快性に富む音楽として評判がよく、年明けの1813年1月7日にも大公とロードによって再演されている。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)135-136ページより
約10年ぶりに書かれたヴァイオリン・ソナタは、フランスのヴァイオリニストであるロードと、ルドルフ大公のピアノで初演されることになりました。ルドルフ大公は、かつてベートーヴェンが「ピアノ三重奏曲 変ロ長調《大公》」作品97を献呈した、たった1人の作曲の弟子です。大公がピアノを担当することになった経緯はわかりませんが、ベートーヴェンは彼に大きな信頼を置いていたことでしょう。作品は、そのルドルフ大公に献呈されることになりました。
ヴァイオリンとピアノの対話が美しい作品です。《クロイツェル》作品47と聴き比べて、明快さを感じてみてください。
「ヴァイオリン・ソナタ第10番 ト長調」Op.96
作曲年代:1812年2〜11月(ベートーヴェン41歳)
初演:1812年12月29日
出版:1816年
初演はピエール・ロードのヴァイオリンとルドルフ大公のピアノ
大公に献呈
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