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2020.09.22
おやすみベートーヴェン 第282夜【不滅の恋人との別れ】

「悲劇《タルペア》第2幕への〈導入曲〉」——インフレに悩まされるなか、新作の悲劇を上演。はたして収入は?

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

ウィーン会議、ナポレオンの没落......激動のウィーンで43歳になったベートーヴェン。「不滅の恋人」との別れを経て、スランプ期と言われる時期を迎えますが、実態はどうだったのでしょう。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ
編集協力:水上純奈

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インフレに悩まされるなか、新作の悲劇を上演。はたして収入は?「悲劇《タルペア》第2幕への〈導入曲〉」

3月26日にはホーフブルク劇場でクリストフ・クフナーの悲劇《タルペア》が、ベートーヴェン新作の付随音楽(WoO2a、2b)とともに上演された。しかしその収入は、ベートーヴェンが満足する額にはほど遠かった。4月になっても一向に回復の兆しのみえない弟カールは12日に遺言書をしたため、息子カールの後見人として兄ベートーヴェンを指定する。カールはしばらく小康状態を保つが、弟一家の生活はますます困窮を深めていった。5月1日にシュパンツィヒ主催のアウガルテン・コンサートが新作の劇音楽《タルペア》から《勝利の行進曲》と交響曲第5番を取り上げ大好評を博すが、版権の確立していない当時のことで、これが作曲者ベートーヴェンの収入になることはなかった。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)136-137ページより

悪い出来事の連続でベートーヴェンが収入減に頭を抱えるなか、悲劇《タルペア》が初演されました。しかし、この初演とその1ヶ月後の再演、どちらも思うような収入を得ることができなかったのです。

この後ベートーヴェンは、9月1日にルドルフ大公から支給された年金750フローリンでこの状況をしのいでいくことになりました。

作品紹介

「悲劇《タルペア》第2幕への〈導入曲〉」WoO2a

作曲年代:1813年3月(ベートーヴェン42歳)

初演:1813年3月26日

出版:1838年

Chr. クフナー原作の舞台劇への付曲

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
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