ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》第4楽章——ピアノ音楽の未来を切り開いた作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ピアノ音楽の未来を切り開いた作品 ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》第2楽章
4日間にわたってご紹介した《ハンマークラヴィーア》ソナタ。最終日は、この作品が作曲されたピアノについてみていきましょう。
小山 当時普及していた1台のピアノではカヴァーしきれない音域が使われています。先の時代を見越して作曲していた証ではないかと思うわけです。というのも、シュトライヒャーのピアノで出せる高音域と、ブロードウッドのピアノで出せる低音域、両方のピアノにまたがる音域で《ハンマークラヴィーア》は作曲されているのですから。
——小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ 限りなき創造の高みへ』(音楽之友社)97ページより
ベートーヴェンが晩年に愛した2台のピアノ。ナネッテ・シュトライヒャーのものと、ロンドンから贈られたブロードウッド。驚くべきスピードで新しい楽器が開発されていた当時、最新式のピアノをもってしてもカヴァーできない音域を、ベートーヴェンはこのソナタに要求しました。
そして未来のピアノはベートーヴェンが予想通り、88鍵という巨大なものに落ち着くのです。
ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》op.106
作曲年代:1817年〜1818年(ベートーヴェン47歳〜48歳)
出版:1819年9月アルタリア社他多数同時出版
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