《ミサ・ソレムニスニ長調》より「グローリア」——就任式典が開催! 有名な肖像画の話題も
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
就任式典が開催!有名な肖像画の話題も《ミサ・ソレムニスニ長調》より「グローリア」
1820年3月9日、チェコのオルミュッツでルドルフ大公の大司教即位式典が行われた。ベートーヴェン自ら検定を申し出たお祝い用のミサ曲は式典には間に合わなかった。《ミサ・ソレムニス》の作曲は2月時点では〈キリエ〉と〈グローリア〉まではほぼ書き終えていたが、〈クレド〉以下はまだ作曲中であった。それでもベートーヴェンは2月10日(BB 1365)と3月9日(BB1370)にボンの出版社ジムロックに宛てて「大ミサ曲を125ルイドール=金貨250ドゥカーテンで提供できる」と出版交渉を始めている。
このころベートーヴェンは、ミュンヘン出身の肖像画家ヨーゼフ・カール・シュティーラー(1781〜1858)のモデルになっている。(中略)シュティーラーは1819年にフランクフルトのフランツ・ブレンターノ家あるいはアントーニエ個人からの依頼で、ベートーヴェンの肖像画の注文を受け、19年中にも何種類かのポーズによるスケッチを描いていた。シュティーラーは1820年の夏にはウィーンを去るのだが、筆談帳への書き込みからは夏のメードリングで別ポーズの全身肖像画を描きたいと、ベートーヴェンに申し入れていたことが窺える。左手に《ミサ・ソレムニス》の表題の記されたノートを持って右手の鉛筆で作曲している姿を描いた有名な肖像画はこの時期に作成されたのである。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)169、170ページより
ついにルドルフ大公の大司教就任式典が開かれました。ミサ曲の完成は間に合わなかったようですが、出版交渉をしていたということは、彼の中で完成は見えていたのかもしれませんね。
そして、ベートーヴェンといえば! という有名な肖像画は、この時期に書かれたものだったのです。左手にもっている楽譜に注目してみてください。
本日は2曲目の「グローリア」をお楽しみください!
《ミサ・ソレムニス ニ長調》Op.123
作曲年代:1819年4月初旬〜23年3月(ベートーヴェン48歳〜52歳)
初演:1823年3月26日
出版:1827年4月
ルドルフ大公に献呈
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