《大フーガ》(4手)変ロ長調——最高傑作の内容を余すところなく反映させたピアノ連弾版
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
高傑作の内容を余すところなく反映させたピアノ連弾版 《大フーガ》(4手)変ロ長調
「弦楽四重奏曲第13番」初稿の終楽章は、初演で難解すぎると評され、楽譜出版社の説得を経て単独小品《大フーガ》Op.133として出版されました。今日紹介するのは、この《大フーガ》をピアノ4手版に編曲したものです。
あらゆるピアノ連弾作品の中で、きっと、もっとも難しい音楽だ。ピアノ・ドゥオを組んでいる方々はぜひとも挑戦を! うまくいけば最高の感動間違いなし!
ベートーヴェン音楽の賛美者で、アマチュアのチェリストでもあったサンクトペテルブルクのガリツィン侯爵からの依頼で作曲した弦楽四重奏曲変ロ長調Op.130のオリジナルのフィナーレ(第6楽章)は、初演と再演を担当したプロの弦楽四重奏団にとっても演奏困難であり、聴き手には、ちんぷんかんぷん! 理解不能な超前衛であった。ベートーヴェンは、友人や出版社に説得されてOp.130のために新たなフィナーレを作曲、差し替えたものをガリツィン侯爵に献呈した。
でも、ベートーヴェンは、この長大なフーガのフィナーレこそ自分の全身全霊を傾けた最高傑作という思いがあり、《大フーガ Grande Fugue》Op.133と銘打って単独で出版。さらに、このフーガの内容を余すところなく反映させたトランスクリプションとしてピアノ連弾用に編曲し、「4手のための《大フーガ》Op.134」としても出版。いずれもルドルフ大公に献呈したのである。
解説:平野昭
技術的な難しさ、そして聴き手にも難解すぎた《大フーガ》は、ベートーヴェンの作曲家人生の集大成ともいえる作品です。ピアノ連弾用に編曲された今日の作品でも、ベートーヴェン作品の最高傑作を味わってみてください。
《大フーガ》(4手)変ロ長調Op.134
作曲年代:1826年9月(ベートーヴェン56歳)
出版:1827年5月
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly