秋らしいブラームス——ひんやりした風や紅葉、陽の光を感じて後期のピアノ曲を
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
若き日の感動って、ほぼ刷り込みのようなもので、大袈裟に言えば、一生を支配するようなことになったりする。
毎年、秋が深まろうとするころになると、どうしてもブラームスが聴きたくなるのですが。たぶんそのきっかけは、高校生のころのある日の体験。
当時は田舎に暮らしていて、どこへでもチャリンコで移動。1時間越えの移動とかも平気でぐるぐるペダルをこいでいた。若いってすごいな。
ある秋晴れの日、県道だか国道だかを、わーーっとこぎながら、耳にはイヤフォン(危ないから良い子は真似しないで)。たまたま聴いていたのは、ブラームスのピアノ協奏曲の第2番。
時々、紅葉した街路樹から落ち葉がさーっと降ってきたり、タイヤがパリパリと音を立てながら枯れ葉を踏み鳴らす。
そこに第3楽章のチェロの独奏が聴こえてきた瞬間の、秋らしい陽の光の加減とか、空気のひんやり感とかを、30年ほどたった今も思い出せるって、どういうことだろう。音楽を聴いていなければ、きっとこんなに記憶に刻まれていないはずだ。
ブラームス:ピアノ協奏曲 第2番 第3楽章
たいした音質でもないCDプレーヤーとイヤフォンだったはずだし、誰の演奏かも当時は意識すらしていなかったけれど。「秋にはブラームス」が刷り込まれてしまった瞬間。
秋らしいブラームスといえば、なんといっても後期ピアノ作品。
人生の秋をにじませる、渋くて、柔らかくて、諦めのある、優しい音楽。
軒先に出されたお役御免の扇風機の写真とともに、「3つの間奏曲」Op.117の第1曲 アンダンテ・モデラートをどうぞ。
ブラームス:3つの間奏曲」Op.117 第1曲 アンダンテ・モデラート
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