
山田和樹率いるバーミンガム市響がバーゼル公演 ウォルトンはじめ指揮の牽引力が光る

スイスの3月の音楽シーンから、コンサートとオペラのレポートをお届けします。
山田和樹が音楽監督を務めるバーミンガム市交響楽団のヨーロッパ・ツアーが3月7日からベルギーで始まり、3月17日にバーゼルの市立カジノホールでその演奏を聴いた。
冒頭からウィリアム・ウォルトン「序曲《ポーツマス・ポイント》」で彼らのペースに引き込んだが、両者の組み合わせによるデビュー・アルバムがウォルトンで、ドイツ・グラモフォンより発売された直後だと知り納得した。2曲目のモーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番」(バイバ・スクリデvn)は合格点、休憩後はムソルグスキー(ラヴェル編)「組曲《展覧会の絵》」で再度山田の牽引力が光った。
チューリヒ歌劇場の快進撃

今月のチューリヒ歌劇場は内容が濃くて勢いがすごい。3月8日はオルガ・ノイヴィルト《モンスターズ・パラダイズ》をハンブルクに続いて初演した。ノーベル文学賞作家のエルフリーデ・イェリネクがトランプ大統領誕生時に書いた戯曲を台本として、過去を皮肉るオペラを作り始めたが、トランプ氏の再選により現実の揶揄となったもの。
開演前にディズニー・ヒロインたちが劇場内を歩き回るコスプレ文化や、津波、ゴジラなど日本を想起させるものが頻出するトビアス・クラッツァーの演出は、馬鹿げた皮肉によって現実問題を問う。
ティトゥス・エンゲルの指揮は現代曲を美しく響かせ、音楽的皮肉も生かした。超高音が続出するソプラノ(サラ・ドゥフリス)とメゾソプラノ(クリスティーナ・シュタネック)の二人の吸血鬼は、台詞部分では女優に置き換わり、演劇作品となる。
トランプ氏を模した独裁者を踏み潰したゴジラが太平洋に去って行くという結末で、あえて狂った調律を施したピアノとオーケストラがだんだんと調和していく。その音楽自体が、調和の難しい世界の現状を皮肉る響きの余韻を残した。
11日はヘンデル《ジュリアス・シーザー》のチューリヒ初演だったが、それは別の機会にレポートしよう。21日にはチューリヒ歌劇場管弦楽団のツアー・プログラムをトーンハレで披露した。キリストの受難に捧げる音楽がテーマの前半は、ハイドン《十字架上のキリストの最後の7つの言葉》に、レグラ・ミューレマンの歌うモーツァルトやペルゴレージの声楽曲を散りばめ、柔らかな声が救いとなった。後半はプロコフィエフ《ロメオとジュリエット》で指揮のジャナンドレア・ノセダ音楽監督の真骨頂が発揮された。ツアーが行われるディジョンとハンブルクで、当歌劇場の色を印象づけることとなるだろう。
ビリャソンがバロック・アンサンブルとトーンハレ登場
ローランド・ビリャソンが、カウンターテナーのマールテン・エンゲルティエス創設のバロック・アンサンブル、PRJCTアムステルダムと、3月23日にトーンハレを訪れた。
ザルツブルク・モーツァルト週間の芸術監督を契約延長したビリャソンはすっかり「モーツァルト伝道師」となっており、今回も聴衆を楽しませた。故郷のメキシコで道化師として働いた経験はいまでも生きており、それを通してモーツァルトへの愛と次世代支援の使命感を発信した一夜だった。
ビリャソンは以前、声帯の手術を受けたあとにモーツァルトやバロック・レパートリーに注力し、リハビリ効果にもなったようだが、声の艶は戻らなかった。それでもアジリタ(細かく速い音型を素早く歌うテクニック)もなんとかこなし、《羊飼いの王様》、《イドメネオ》、《ルーチョ・シッラ》、《皇帝ティートの慈悲》からのアリアを歌った。
15人ほどの団員のレヴェルは高く、それらの序曲やカウンターテナーでもあるエンゲルティエスが歌う《ポントの王ミトリダーテ》のアリア2曲でビリャソン節を正統派に引き戻しながら、最後は《魔笛》より〈パ、パ、パ〉(二重唱)で締めくくった。
このツアーでは、訪れる地の若手を応援する趣旨で、毎回別のソプラノが登場する。当地ではルツェルン市立劇場で同役を歌っているエスター・アリーヌ・シュナイダーが起用され、アンコールでもパミーナとパバゲーノの二重唱を好演した。





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