大人だから味わいが深まる、子ども向け作品の世界へ！

　クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんと、絵本作家の本間ちひろさん。一見縁が遠そうな職業の2人が、神楽坂にあるサロンでイベントを開催します。

　何を隠そう、飯田さんと本間さんのキューピッドはONTOMO。

　飯田さんは小社に『ブルクミュラー 25の不思議 なぜこんなにも愛されるのか』の著作や『ブルクミュラー ピアノ曲集』の解説を書いてくださっているし、本間さんは樹原涼子先生の『やさしいまなざし』をはじめ、多くの楽譜に表紙の絵を提供してくれています。

　お互いに同じ出版社と仕事をしていて、顔と名前を知っているくらいの2人。

　アクションをおこしたのは、本間さんが描く楽譜の表紙がずっと気になっていたという飯田さん。現在も連載中の「飯田有抄と音楽でつながる仕事人たち。」のゲストとして本間さんを呼んでほしい！というラブコールを編集部がいただいて、「こどもの本専門店 ブックハウスカフェ」で2人は出会いました。

　この記事を読んでいると、きっと2人の芸術的な側面からすれば、これは恋なんじゃないかなー？と思うのです。

　絵本作家として、常にちいさな子どもたちにやさしいまなざしを向ける本間さんのイラストや文章の数々。専門的な知識を豊富におもちなのに、それを難しく解説するのを良しとしない飯田さんの音楽に対するやわらかな姿勢。違う分野でも、お互いをすっと理解して、尊敬しあう様子がとても楽しそうで、理想的な芸術のパートナーの誕生を感じさせます。

　イベントのきっかけは飯田さんが、大人のピアノ演奏者がショパンやリストの難曲にチャレンジするのもいいけど、大人の音楽として、聴かせる演奏に取り組んでほしいとの願いから始まりました。

　音楽も文学も、大人になるにつれて複雑で壮大なものを求めるようになります。プルーストの「失われたときを求めて」を読んで、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタを弾いて。もちろん、素晴らしいのですが、それらは時に重くて、つらい。

　子どものために書かれた作品はずっと少ない言葉と音符でつづられていますから、一見「かんたん」なものとして見過ごされてしまいます。でも、実は「かんたん」にすることってとても難しいことではないでしょうか？

シンプルさは究極の洗練である　――レオナルド・ダ・ヴィンチ

　そぎ落として、洗練させて、到達する美しさ。子どもに与えるものだからこそ、絶対にうそをついてはいけない。そんな珠玉の作品たちを飯田さんがピアノで、本間さんが朗読でそれぞれ紹介してくれる「大人のための ピアノと絵本のちいさなお部屋」。

　神楽坂にあるArt Salon香音里（KO-O-RI）の素敵な和室に座布団をしいて、忙しい日常で忘れてしまいがちな幼いころの記憶の扉を開く素敵なひとときを、2人の素晴らしい感性に任せてぜひ楽しんでください。