インタビュー
2021.08.27
連載「じっくりショパコン」第8回

第18回ショパンコンクール本大会参加者、注目のコンテスタントは?

音楽コンクールの最高峰、ショパン国際ピアノコンクール、略してショパコン。連載「じっくりショパコン」では、2021年に延期となった第18回ショパン国際ピアノコンクールをより深く楽しむべく、ショパンやコンクールの本質に迫っていきます。
第8回は、7月に開催された予備予選通過者について、高坂はる香さんが注目のコンテスタントを紹介します! 10月の本選に向けて、“推し”を見つけたり、予備予選の動画を見返したり、目一杯楽しみましょう。

ナビゲーター
高坂はる香
ナビゲーター
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

第18回ショパン国際ピアノコンクール予備予選、審査中の様子。
©Wojciech Grzedzinski

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ショパン国際ピアノコンクールは、7月にワルシャワで予備予選が行なわれ、本大会に出場する87名(9名の予備予選免除者含む)のリストが発表されました。

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実は私、ここまで個々のコンテスタントのお名前を出すことは避けてきたのですが、ここからはいよいよ本大会! ということで、お名前出しも解禁しつつ、注目のコンテスタントをご紹介してみたいと思います。

予備予選通過者を国別に見ると……?

さて、今回の本大会出場者87名、国別で多いのは順に、中国22名、ポーランド16名、日本14名、韓国7名、イタリア6名など。もともと応募者が多かったとはいえ、中国勢が強いですね。もちろん国でまとめることはできませんが、実際配信を聴いていて、主張のはっきりしたピアニストが多かった印象でした。

一方、ポーランド以外のヨーロッパからのコンテスタントは少なめで、ドイツ、イギリスもゼロ、さらにいえば、ショパンは半分フランス人ですけれど、フランスもゼロという。

少し珍しい国でいうと、まずはキューバ。ホルヘ・ゴンサレス・ブアハサンさんは、14歳で国の奨学金を得てパリ国立音楽院に留学、ホルテンス・カルティエ=ブレッソン(関係ないですけど、著名な写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンのいとこだそうです!)のもと学んだピアニスト。

そして、タイからも1人。1992年生まれのサン・ジッタカーンさんは、アメリカで学んだピアニストで、第1回シゲル・カワイコンクールで第2位になったりしています(このときの1位は三浦謙司さん)。ちなみにこれは2010年のショパンコンクールを真剣に聴いていた方にしか通じない話題だと思いますが、師事した先生のなかにユーリ・シャドリンの名前があって、なつかしい気持ちになりました(ワルシャワ音大の椅子を持ち込んで弾く姿と味わい深い演奏で話題になっていたけれど、セミファイナルを手の故障で棄権。前回は奥さんの応援でワルシャワに来ていました)。

2010年のショパン国際ピアノコンクール本大会ステージ1でのユーリ・シャドリン

2010年、2015年のファイナリスト4人が再挑戦!

と、冒頭からマニアックな方面から注目をあげてしまいましたが、ここからはもう少しみなさんが普通に関心のありそうなほうに。

まずは、過去のファイナリストの再挑戦。2015年組からは、日本の小林愛実さん。最近「24のプレリュード」を収録したアルバムをリリースしたばかり。前回とはレパートリーを変えて挑むそうです。

2度目の挑戦となる小林愛実さん。
©Darek Golik

そしてラトビアのゲオルギス・オソーキンスさん。低い椅子に腰掛けた独特の演奏スタイルで、超個性的ショパンを聴かせるピアニスト。最初に聴いたときの、覚醒する感触は忘れられません。

ポーランドのシモン・ネーリンクさんは、ルービンシュタインコンクール優勝による予備予選免除での再挑戦。こうしてみるとこの2015年回、入賞できなかったファイナリスト4人中の3人が再挑戦ということになりますね。

そして2010年ファイナリストからは、ロシアのニコライ・ホジャイノフさん。11年前とも一味違う練り上げた演奏を予備予選で聴かせていました。コロナ禍の時間を使ってショパンの全作品を勉強したようで、動画を公開しています。

ニコライ・ホジャイノフYouTubeチャンネルよりショパン:エチュード第1番

日本のピアニストたちからも目が離せない!

あとはやはり、すでにたくさんのファンのいる日本のピアニストたち。バリバリに熱く情感豊かな演奏だけでなく、自身のレーベルや株式会社の設立など多彩な活動でも注目を集める、反田恭平さん。ポーランドに留学し、じっくりとショパンに向き合ってきた成果を披露してくれるのでしょう。

©Darek Golik

牛田智大さんは、前回の浜松コンクール2位入賞により、予備予選免除で本大会に出場します。彼もまた、本来予定されていたコンクール前のタイミングである2019年に「24のプレリュード」を録音するなど、ショパンをつきつめる時間を経ての挑戦です。こうした人気ピアニストたちはオーケストラとの共演機会も多く、ショパンの協奏曲を本番で演奏する経験も積んでいるので、本選まで完成度の高いパフォーマンスを届けてくれるはず。

そして、角野隼斗さん。東京大学卒業、フランスのIRCAMで音楽情報処理を研究、同時にクラシックのピアニストとしてもピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリで優勝という経歴が注目されてきましたが、最近はYouTuberのかてぃんさんとしても人気爆発。予備予選に挑戦する様子は、先日TBS「情熱大陸」でも放送されていましたね。

©Darek Golik
舞台袖での様子。
©Darek Golik

また、パデレフスキコンクール優勝、浜松コンクール3位でたびたび日本にも来ている、韓国のヒョク・リさん、日本人として初めて高松コンクールに優勝した古海行子さん、名古屋大学医学部に在学中という異色のバックグラウンドが話題の沢田蒼梧さんなどなど……。

古海行子さん
©Darek Golik

ほかにも、各地のコンクールでの演奏が印象に残っている人、これまで演奏を聴いたことがなかったけれど予備予選の配信を聴いてハッとさせられた人など、挙げるときりがありません。

とにかく毎日が聴きどころとなりそうな顔ぶれ。演奏順は、9月30日17時からの抽選会で決定され、10月3日からいよいよコンクールの演奏がはじまります。

予備予選審査中の様子。本選が待ち遠しいですね!
©Darek Golik
ナビゲーター
高坂はる香
ナビゲーター
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

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