飯田有抄と音楽でつながる仕事人たち。

第8回:クラシック音楽バー「bar valse」オーナー齊藤容平さん 

インタビュー
2018.02.15

あなたは普段、クラシック音楽をどんな環境で楽しんでいますか? コンサートホール? 自室のオーディオ? またはイヤフォンを使って通勤電車の中? さまざまなスタイルで楽しめる昨今ですが、たまにはこんな聴き方はどうでしょう。落ち着いたバーで美味しいお酒をいただきつつ、しゃれた音楽に耳を傾ける……。そんな場所を提供してくれているのが、東京は目黒のクラシック音楽バー「bar valse」(バー・ヴァルス)。オーナーの齊藤容平さんにお話をききました。

仕事人
齊藤容平 クラシック音楽バー「bar valse」オーナー
齊藤容平
仕事人
齊藤容平 クラシック音楽バー「bar valse」オーナー
東京都出身。國學院大學 文学部卒。   酒類メーカーや様々な飲食店を経験後、 ライブハウスBlues Alley Japanに入社。 さまざまなジャンルの音...
聞き手・文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
飯田有抄
聞き手・文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。   20...
目次

クラシック音楽バー「ヴァルス」は、こんなお店

ホールの音色を疑似体験――柔らかな響きが心地良い空間

――こちらのバーは、オープンしてどのくらいですか?

齊藤 1年半くらいです。目黒はもともと地元なのです。カウンター席だけでやろうと思っていたので、細長いスペースを探していたのですが、ここを見つけるまでは半年ほどかかりましたね。でもその間、物件を見つけるよりも先に、スピーカーを選んでいました(笑)。

――クラシック音楽バーの要、スピーカー! 先ほどから、芳醇なピアノの音色が聴こえています。スリムで見た目も美しいですね。どんなスピーカーなのですか?

齊藤 ブロッドマンというウィーンのメーカーのものです。ベーゼンドルファーというピアノがありますね。あのメーカーのオーディオ部門から独立した会社の製品なのです。

――え! ベーゼンドルファーの!?  憧れのピアノです。そのメーカーからの独立部門ということは、なるほど、ピアノの響きと相性がいいはずですね……

齊藤 もともとオーディオの知識があるわけではなかったので、詳しい方にいろいろ教えていただきながら探していましたが、銀座のSOUNDCREATEというお店で出会ったこのスピーカーになりました。

――こちらにした決め手は?

齊藤 ピアノと室内楽をメインでかけることと、コンサートホールにいるような包み込まれる感じの音をイメージしていました。もちろん、音楽を聴くためにコンサートに行けたら、それに越したことはないですが、みなさん忙しいとなかなか頻繁には行けないでしょうし、少しでもここで疑似体験をしていただけたらいいなという思いもあって、行き着いたのがこのスピーカーでした。建物自体も、音がなんだかよく響くんですよね。

――確かに。引っ越しで家具を全部出した部屋みたいな(?)、残響がありますね。それにしてもこのスピーカー、高級な代物ですよね……

齊藤 店を開くときに、真面目くさって「資金繰りはこうだから、この予算の範囲内で探そう」とするよりは、遊びを極める精神で選びました。どうせやるなら、「これが欲しい、じゃあ、資金繰りはどうするか」という順番で考えたほうが楽しいですよね。

お店の名前はドビュッシーのピアノ曲に由来

――ピアノと室内楽がメインとのことですが、どんな曲やCDが多いですか?

齊藤 ほとんどが自分のコレクションですが、もともとフランスものが好きですね。お店の名前も「ヴァルス」ですし。

――これはラヴェルの「ラ・ヴァルス」からきているんですか?

齊藤 いえ、実はドビュッシーなんです(笑)。ドビュッシーの「レントより遅く」というワルツ、あの曲が店の名前の由来。店名の下にも一応小さく「La plus que Lente(レントよりも遅く)」って入れてあります。

――あ、ほんとですね。

齊藤 店名をつけるときに定冠詞の「ラ」をつけるかどうしようか悩んでいて、いろいろ調べていたら青山に「ラ・ヴァルス」っていう中華料理屋さんがあるというのがわかった。パクってるみたいなのもイヤなので、「レントより遅く」をつけて、うちドビュッシーですよ……みたいな(笑)。

 「レントより遅く」という曲は、クラシックといっても、あまりクラシックぽくないですよね。諸説あるようですが、ドビュッシーが大衆歌のようなものを聴いて、それを自分なりにピアノ曲にしたそうで。大衆的なものも実は好きだけど、素直になれなくてちょっと距離置いてます、みたいな雰囲気がいいですよね(笑)。その距離に悲哀みたいなものも感じられて。

 短い曲だし、BGM的にも聴ける。あまりクラシックに馴染みのないお客さんにも、「これ、うちの店名の由来の曲なんですよ」って紹介しやすい。これがバッハの「シャコンヌ」とかだったら、お客さん疲れちゃう(笑)。

軽やかにクラシックを楽しんでほしい

――ということは、あまりクラシックに馴染みがない方でも、気楽に来ていいんですね?

齊藤 もちろんです。うちはこう、軽くいきたい。あくまでもバーですから、お客さんが帰るときに「あ、そういえば、ここはずっとクラシックがかかっていたな」くらい、軽い感じでありたいです。うちは音楽をかける店ですが、「私語厳禁」なんかではありません。お客さん同士で、いろいろな話に花を咲かせながら、音楽を楽しんでいただきたい。

 CDもそういう雰囲気で聞いてもらえる選曲が多いです。今かけているのは、アルド・チッコリーニというピアニストの、ワルツばかりを集めた曲集のCDですね。ショパン、シャブリエ、ビエルネ、シベリウス、グリーグ……。

――軽やかだけど、素敵ですね。お客さんの様子によって曲を変えたりもしますか?

齊藤 そうですね、早い時間帯と、夜も更けてきた時間帯では変わります。クラシックといっても幅広いですからね。ブルックナーの交響曲第7番のような重厚長大な作品と、シャブリエの狂詩曲「スペイン」みたいな華やかな曲が、実は同じ年に書かれているんですよね。幅広い中からうまくチョイスしていけばいい。ベートーヴェンでウィスキー飲みながらソナタを語るもよし、プーランクを聴きながらみんなでワイワイやるのもいいし。

――お客さんが「これ聴きたい」とCDを持ち込むことはありますか?

齊藤 ありますよ。他のお客さんがいいよ、と言ってくれたら、マーラーのオーケストラ曲をかける場合もあります。あとはイベント的に、その日がクラウディオ・アバドの誕生日なら「アバド祭り」ということにして、アバド指揮の音源ばかりかけたり、「アメリカ音楽ナイト」と称して、アメリカものに絞ってコープランドの交響曲をかけるようなこともあります。そういう日は、事前にフェイスブックやツイッターなどでアナウンスしています。

――ここにくれば、楽しくクラシックと付き合えますね。齊藤さん、DJみたい。

齊藤 クラシックって、まだ一般の方々のなかには、権威的、教養主義的、お金持ちの道楽みたいなイメージがある。音楽関係のいろんな人たちがそれを払拭しようと工夫していますね。たとえば、演奏会のプログラムを工夫したり。

 僕もそういうところに少しでも貢献したい。クラシックって意外とライトな側面もあるんだ、と。それでいいと思う。フランス音楽でもなんでも、これだったら聴けるというのから派生させていろいろ聴いて、いつか「ベートーヴェンの精神性」を語ってもいい。日本では学校の授業で無理やりクラシックを聴かされたり、出会い方が不幸すぎるのかもしれないですね。

――なんとなくクラシックを聴いてみたいという人も、齊藤さんが作ってくれる美味しいカクテルやお料理を楽しみながら、気楽にくつろげるから素敵です。でも、このお店には、ピアノ音楽ファンなら垂涎モノの、もう一つ、貴重なアイテムがあると聴いてやって来たんですよ。

齊藤 あ、これですね……(齊藤さん、一冊のアルバムを取り出す)

なぜ「ヴァルス」は居心地がよいのか

祖父は日本の草分け的な調律師・斎藤義孝さん

――あ、こちらがウワサの、おじいさまのアルバム!

齊藤 そうなんです。私の祖父・斎藤義孝のアルバムなのですが、往年の名ピアニストたちとの交流を納めた写真やメッセージをまとめています。祖父は戦前から戦後にかけて、ピアノの調律師の仕事をしていました。

* * *
【ここで解説しよう!】

 齊藤容平さんのおじいさま、斎藤義孝さんは1906(明治39)年北海道生まれ。1924(大正13年)に、外国ピアノ輸入商会の技術部に入社し、世界各国のピアノ60種類以上について深く学ばれたという。まさに、日本のピアノ技術者としての草分け的存在なのだ!
旧帝国劇場、旧日本青年館、日比谷公会堂など、都内における音楽ホールのピアノ調律のほとんどを担当し、第一線で活躍していた。なので、戦後からさかんに来日するようになった超有名ピアニストたちがコンサートやレコーディングで弾くピアノの調律・調整を、斎藤義孝さんが手がけてきた。

『調律師からの贈物――グランドピアノの基礎知識』(音楽之友社/昭和57年)という著書も出版されていた。ピアノの歴史・構造・調律や整音・仕事を任された往年のピアニストたちについて記された、日本のピアノ文化を知ることのできる貴重な本だ。

* * *

――ある意味、日本のピアノ文化にとてつもなく大きな貢献をなさったおじいさまです。こちらのアルバム……往年の巨匠たちが並んでいるではありませんか! おじいさまとアルフレッド・コルトーが握手していますよ! 感謝のお手紙もついている……。

齊藤 そこに記されているサインの年代などから、そのときの来日で録音された音源などを探しているんです。祖父が調律したピアノを弾いているので、見つかれば、そういう音源を入手しています。ときどき、お客さんから情報をもらうこともありますね。たとえば、サムソン・フランソワの来日音源などがあります。年代が書かれていなければ、日本に何回来日したかを調べて検討をつけたり。

――これはバックハウス、こちらはイェルク・デームスの若いころ! クラウディオ・アラウにルビンシュタイン……みんな「Cher Saito(親愛なる斎藤さんへ)、」とメッセージを寄せてくれていますね。ルビンシュタインは「Thank you for a wonderful job on the piano! To the great masters Yoshitaka Saito in my warm hearts for his wonderful work and his great help (偉大なる技術者・斎藤義孝さんの優れた仕事と大きな助けに、心から感謝をささげます)」と。アルゲリッチは「his beautiful work(彼の美しい仕事に)」、ヴァン・クライバーンは「friendship(友情)」という言葉を使ってる。そうそうたるピアニストたちにクラクラします! 彼らと同じ時を過ごしたおじいさまの写真を見ていると、その時代にタイプトリップできるような気持ち。

齊藤 ピアノ好きの人にはたまらないアルバムみたいですね。あ、それはミケランジェリがピアノを選定している写真です。うちの祖父や、当時第一線で活躍していた有名な調律師たち4名が一堂に会しているんだそうです。

 お客さんの中には、「あ、○○さんが写っている!」とか、写りがあまりよくなくて僕は誰なのかわからなかった写真でも「この弓の持ち方と体型はハイフェッツに違いない」と教えてくれた方もいます。

 このアルバムをきっかけに、巨匠ピアニストについての思い出や録音の話に花が咲いたり、いろんな話題につながっていくのが面白いですね。

豊富な話題に、時間を忘れられる場所

――おじいさまが調律や調整をされたピアノのCD、何か聴かせてもらえますか?

齊藤 これなんかは面白いですよ。アルフレッド・コルトーのスタジオ録音「コルトー・イン・ジャパン1952」(BVCC-37439〜40)。1ヶ月ほどの来日全国ツアーに祖父がついていき、最後にスタジオ録音したものなんです。1952年だから、戦後からまださほど時間が経っていないですよね。エラールのピアノを使用しています。何度も録音を撮り直したのに、日本の技師たちは嫌な顔一つしなかったので、コルトーはとても親日家になったそうです。ショパンの「雨だれ」なんかはとても味わいのあるいい演奏。一方でスケルツォの2番は勝手に音を増やしたり外したりして、かなり即興的なんですが、いい録音です。

 ちなみにコルトーって、漢字の当て字があるのご存知ですか?

――「孤留島」!!!

齊藤 このツアー中に訪れた山口県の無人島を、コルトーがとても気に入ったらしくて、プレゼントしてもらったそうです。そして、この島はこう名付けられたんですって。

――そういうエピソードを、こういう録音を聴きながら教えてもらえるなんて、楽しいです!

齊藤 今、スマホで一人でいくらでも音楽を聴くことはできる。もちろんコンサートに一人で行って、自分の中で消化するのもいい。でも、たまには誰かと一杯飲みながら、音楽について「ああだったね、こうだったね」と反芻するのもいいじゃないですか。そういう場所があってもいいかな、と思う。

――いろんなお客様がいらっしゃるでしょうから、情報もいろいろ飛び交いそうですね。

齊藤 人それぞれ捉え方が違って面白いですよ。このカウンターにはプロのピアニスト、ピアノ愛好家、ピアノの販売をしてる人、調律師、オーディオ好きが並ぶこともある。同じショパンの曲でもそれぞれの聴きどころが違う。演奏家の方はタッチとかペダルの使い方について、調律師の人はピアノの状態、オーディオの人は鳴りがどうなのか、とか。

――お酒やお料理を作りながら、いろんな方のお相手をするって大変ですね。

齊藤 大変だけど(笑)楽しいですね。そこから得られることがいっぱいある。僕は自分の持論を出すというよりは、お客さんの思いを聞くことにしています。そのほうが僕も得られるものがいっぱいあるし。だからね、うちはみんないらっしゃると長く過ごしてくれるんですよ。

 そうやって、お客さんが時間を忘れてゆっくりできるというのは誇りに思えます。ここで知り合った人同士でイベントが生まれる、なんていうこともありますよ。

▼ アルバムの写真のエピソードと、カクテルと料理について語る齊藤さん

お酒に詳しくなくても、齊藤さんに相談すれば自分好みのカクテルを作ってくれる。ボトルがかわいいシカゴのオーガニックジンKOVAL(写真の真ん中)。
常連さんに評判の「メカジキのマティーニ蒸し」がまろやかで上品な味。

オーナー齊藤容平さんって、どんな人?

自分で持つなら「クラシックを聴ける店」と決めていた

――齊藤さんがこのお店をオープンするにいたる経緯を教えてもらえますか?

齊藤 学生時代にアルバイトで働いた飲食店の店長が、お酒とお料理にとても詳しい人で、年がら年中いろんなお店に連れて行ってもらい、楽しい世界だなぁと思いました。大学卒業後にお酒のメーカーに就職した時期もあったのですが、やはり現場で働きたい、と。いつか自分の店を持つことを視野に入れながら、ダイニングバーやライブハウスで働きました。

 ライブハウスは10年くらい。ジャズ、ロック、ソウル、ポップスなど、ノンジャンルで幅広い音楽が聴けるお店。いろんなミュージシャンたちと話ができたし、開演前の30分で、マックス130人分のドリンクのオーダーに応えることもあって、すごく鍛えられましたね。お酒は20年間飲み続けています(笑)。

――ご自身のお店を持つときは「クラシック音楽」のお店にしたいと、ずっと思っていたのですか?

齊藤 そうですね、家ではずっとピアノの音が絶えず聴こえてくる環境でしたから、そういうルーツは必ず影響していると思います。

 家は1階が調律所になっていて、2階から4階に親戚みんなで住んでいました。工房には遠方からも楽器が持ち込まれています。北海道の古い学校のピアノを、創立記念日に蘇らせるべくオーバーホールをしてほしい、という依頼もありました。

 祖父は僕が小3のときに他界したのですが、調律は叔父と私の父が継いでいます。僕が物心継いた頃には、もう祖父は寝たきりになっていたので、あまり話を聞けなかった。それもあって今、祖父の調律したピアノの音源などを探したくなるのかもしれないです。

――お父様たちから、調律師として後を継ぎなさいと言われたことはありましたか?

齊藤 ありませんでした。僕は3人兄弟の末っ子なので、特に好きなことをやらせてもらっています。長男は自分から調律の道について父に尋ねたことがあったようですが、父は「自分の好きなことをやれ」と。

 僕は高校時代から意識的にクラシックのコンサートに出かけるようになったけれど、そのときからお客さんの年齢層が高かった。正直、「クラシック人口は減っていく」と思ったし、それでいて当時はピアノの調律師がとても多くて、後を継ぐにはリスクが高いのでは……と感じたのは事実。自分は別の形で、クラシック音楽の良さを知ってもらう仕事ができないかな、と考えました。

 ところが逆に今は、調律師が足りない時代になっているんです。調律師とは職人なので、若い人たちが参入したがらないようです。とくにメーカー専属の調律師はいても、どんな国のどんな楽器でも扱えるという人は減っている。

――かつては、小さなお子さんでもピアノを習うといえば、家庭に1台アップライトピアノを購入するのが基本でしたが、今では調律のいらない安価な電子ピアノを最初に買う家庭が増えています。町の調律師さんは確かに減っているのでしょうね。でも、学校やレストランなどの公共施設からアコースティックのピアノがすっかり姿を消すことはないと思いますし、なにしろコンサートホールには素晴らしい名器がある。これからも確かな技術をもった調律師さんは絶対必要ですよね。

齊藤さんとクラシックとの“衝撃的な”出会い

――ところで、高校時代になってから意識的にクラシックを聴き始めたのには、何かきっかけがあったのですか?

齊藤 それまで「そこに流れているもの」としか思っていなかった音楽を、「クラシック音楽」というジャンルとして認識したのが、高校で吹奏楽部に入ってからです。クラリネットを吹いていました。ただ、自分は大学に入ったらジャズをやろう、と思っていたんです。

 ところがある日、指揮者の佐渡裕さんが「自分はロック少年だったのに、ストラヴィンスキーの『春の祭典』を聴いて指揮者になろうと思った」とテレビで話していた。どんな曲だろうとさっそく聴いたら、頭の中が真っ白になるくらいの衝撃を受けました。その日のうちに3回くらい繰り返して聴いた。何が起きたのかよくわからないくらい、トランス状態のような感じで。そのときから近現代の音楽に目覚め、次第にロマン派、ベートーヴェンの時代というように、遡ってクラシックを聴くようになりました。

 よくN響の定期にも通いましたよ。学生の当日券がその頃は1000円だったんです。月6回通える値段。部活が終わるとガクラン姿のまま走っていって、はぁはぁ息弾ませながら聴いて、ああよかったなぁ〜なんて反芻しながら帰ってくる。まわりは、おじいちゃん・おばあちゃんばっかりだったけど(笑)。

 

「鳥の声」を探して、耳をリセットする

――お店は遅くまで開いていますよね。1日のスケジュールはどんな感じですか?

齊藤 お店は2時まで。寝るのは、日にもよりますが、5、6時くらいかな。で、10時か11時くらいに起きる。オープンは18時。仕込みや事務作業のために、だいたい14時か15時には店に入ります。夜商売だと、時間をあまり不規則にしてしまうと、本当に体のリズムが崩れてくる。できるだけ、寝る時間と起きる時間は変えずにおこうと。

――気分転換やリラックスしたいときはどんなことをしますか?

齊藤 公園に行って、鳥の声を探します。

――素敵ですね。私も鳥の声を聴くの大好きです。

齊藤 すごく面白いですよね。近所の白金台の自然教育園とか、明治神宮御苑だとか、都内でも野鳥が多い。「あ、シジュウカラが鳴いてる、どの辺だろう?」と耳を済ます。カワセミもいます。カワセミって、すごく小さい声でキキキキって鳴くんです。それを、耳を済ませて探す。「あ、今聴こえた!」って。

 それ以外何も考えない。仕事のことも何もかも忘れて。そうすると、耳も気持ちも不思議とリセットされます。鳥たちの写真を撮るのもすごく楽しいですね。狭い空間で音を聴き続けるし、陽に当たらない職場ですから、そういう時間はとても大切にしています。

カワセミの写真とイラスト:飯田有抄
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