
ヴィオッティ&ウィーン・フィルが楽友協会で フレッシュなプログラムのソワレ公演

海外のクラシック界のニュースやコンサート、オペラ公演の様子を、現地在住の筆者がいちはやくお届け。今回はオーストリア・ウィーンの6月の音楽シーンから、コンサートとオペラをレポートします。
6月15日、ウィーン楽友協会大ホールでウィーン・フィルハーモニー管弦楽団第7回ソワレを聴いた。4日後にサマーナイト・コンサートに登場予定のロレンツォ・ヴィオッティによる指揮で、ウィーン・フィルが初めて弾く作品ばかりのフレッシュなプログラム。
1曲目はプーランクのバレエ音楽「《典型的動物》組曲」で、イソップ寓話などを手本にラ・フォンテーヌが書いた『寓話』が基になっている。プーランク独特の魅力的なメロディやハーモニーをていねいに表現して届けてくれる演奏で、ライオンのせつない恋や雄鶏たちの戦いなどの情景が、バレエなしでも色彩豊かに広がった。
2曲目のドビュッシー《春》は、ボッティチェッリの名画『プリマヴェーラ(春)』を想起させたマルセル・バシェの絵画からインスピレーションを得た作品。本来の編成である合唱が入った版を聴いてしまうと、アンリ・ビュッセルがオーケストレーションを行った版(一般に流通しており、この日もこちらの版だった)は味気なく思えるのだが、第1楽章のアンダンテ・モルト・エスプレッシーヴォなど、ウィーン・フィルだからこその温かみを感じられる箇所もあった。
後半は、アンデルセンの同名のおとぎ話を基に書かれたツェムリンスキー《人魚姫》。海の底で泡がポコポコいう様子、水が一気にざわめく様子……。描写があまりにリアルなので、その只中にいるかのような世にも不思議な心地になった。ライナー・ホーネックによるヴァイオリン・ソロは、儚げな人魚姫にぴったりで、プログラム初登場にして、ウィーン・フィルの歴史に残る名演奏となっていた。
ウィーン・カンマーオーパーが休館を前に ヴァインベルクとマルティヌーのオペラ上演

1953年に設立されて、アン・デア・ウィーン劇場の第2の会場として活躍してきたカンマーオーパーが、2026/27シーズンから休館となる。ウィーン市の財政再建に伴う予算削減の影響を受け、昨年の12月に「いったん休止」と発表されたが、『クローネン』紙は6月4日に「文化機関ウィーン・カンマーオーパーの終焉は、決定的となったようだ」と見解を出し、再開は難しそうな雲行きだ。6月2~19日に上演された、休館前の最後のプロダクションを観た。
めったに上演されないオペラ、ヴァインベルク《レディ・マグネシア》とマルティヌー《ツヴァイマル・アレクサンダー》の2本立てで、並べてみると、これら2作の共通点が浮き彫りになる。どちらも20世紀に作曲されて、作曲者の死後になって初演され、主要な役は「夫、妻、愛人または崇拝者、そしてメイド」。2作品とも、オペラにおける典型的なテーマの一つ「貞節」を、喜劇的にグロテスクに扱っている。
前半の《レディ・マグネシア》は、ヴェルディ《オテロ》のパロディといったところで、ジョージ卿が妻レディ・マグネシアを殺そうとした瞬間に、彼女がくしゃみをして起きてしまい失敗。妻の愛人アドルフスに毒を盛るが後悔し、解毒効果のある石膏を食べさせているうちに、内部から固まって立像になる奇っ怪なストーリーを、エレキ・ギターやジャズのリズムを取り入れたヴァインベルクの音楽がさらに深く掘り下げていた。
これに対し、休憩後の《ツヴァイマル・アレクサンダー》(ツヴァイマルはドイツ語で「2回」または「二つ」の意)は、モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》を連想させる。夫アレクサンダーが、妻アルマンドの貞節を試すために旅に出て、髭を剃って家に戻り「アレクサンダーの従弟」と名乗って彼女を誘惑。しかしその「情事」のせいで、妻はすっかり変わってしまい、以前は拒んだ崇拝者のオスカーをランデヴーに誘うのだった。
2作品の核に迫る演出(アンナ・ベルンライトナー)や、シュールな絵画を見ているような舞台と衣裳(マンフレッド・ライナー、ハナー・エリンガー)は出色の出来。ヨゼフィーネ・ゲーマン(レディ・マグネシア/アルマンド)、ピーター・カーク(ジョージ卿/オスカー)、ジェイコブ・フィリップス(アドルフス/アレクサンダー)、イレーネ・デルガド=ヒメネス指揮ウィーン室内管弦楽団ほかによる演奏もすばらしく、せっかく育ってきた伝統が途絶えるかもしれないことが残念でならなかった(6月5日)。





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