レポート
2026.07.09
海外クラシックNEWS~from ドイツ②

90歳になったズービン・メータを迎え ミュンヘンの3つのオーケストラがコンサート 

海外のクラシック界のニュースやコンサート、オペラ公演の様子を、現地在住の筆者がいちはやくお届け。今回は、5月末から6月にかけてのドイツ・ミュンヘンの音楽シーンから、コンサートとオペラをレポートします。

来住千保美 Chihomi Kishi
来住千保美 Chihomi Kishi

音楽学/音楽ジャーナリスト。1991年からドイツのケルン、デュッセルドルフ、現在はミュンヘン在住。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒業、ドイツのケルン大学法学部を経て...

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

ズービン・メータが指揮したミュンヘン・フィルの舞台から ©Tobias Hase

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今年4月に90歳になったズービン・メータを迎え、2026年5月末から約1カ月間、ミュンヘンの主要な3つのオーケストラがコンサートを行った。

まず5月30日に、バイエルン州立管弦楽団(バイエルン州立歌劇場のオーケストラ)がスタートをきった(ナツィオナールテアター)。 メータは1998年から2006年までバイエルン州立歌劇場の音楽総監督を務めた。プログラムは当初予定のマーラー「交響曲第3番」から、ブラームス「交響曲第4番」とシューベルト「交響曲第8番《ザ・グレイト》」に変更された。メータの健康上の理由とされ、メータはこの後予定されていたバイエルン州立歌劇場でのプッチーニ《トゥーランドット》指揮も降板した。シューベルトでは木管群を最前列に配置したことがたいへん興味深い。

6月18、19、20日はミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団に登場した。(所見日:6月18日、イザールフィルハーモニー) メータは同フィルの名誉指揮者でもある。こちらも直前にプログラムが変更された。もともとモーツァルト「クラリネット協奏曲」とブルックナー「交響曲第9番」の予定が、ブルックナーのみチャイコフスキー「交響曲第5番」に変更された。

6月25日と26日、メータはバイエルン放送交響楽団を指揮した(所見日:6月25日、ヘラクレスザール)。これはメータ90歳とピアノのルドルフ・ブッフビンダー80歳を祝う特別コンサートで、プログラムはワーグナー「《リエンツィ》序曲」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」、チャイコフスキー「交響曲第4番」だった。こちらもチャイコフスキーはもともとR.シュトラウス《ツァラトゥストラはかく語りき》の予定だったが、オーケストラ側の事情により変更された。

どのコンサートもメータを愛する聴衆は大喝采、スタンディング・オヴェーションで讃えた。3つの異なるオーケストラを聴いて共通する思いは、音楽の原点だ。演奏そのものにはテンポ設定など疑問が残る部分もある。しかし、それより指揮、演奏する者と聴く者全員が一体となった、音楽への愛と尊敬を感じる。

バイエルン州立歌劇場の《トゥーランドット》再演 次期音楽監督がペトル・ポペルカに決定

6月6日バイエルン州立歌劇場で上演されたプッチーニ《トゥーランドット》(指揮:ヘンリク・ナナシ、演出:カルルス・パドリッサ/ラ・フラ・デルス・バウス、美術:ローランド・オルベーター、衣裳:チュ・ウロス、他)の目玉は、ズービン・メータの指揮とカラフ役のヨナス・カウフマンで、チケットは早々に売り切れていた(上述のようにメータはキャンセル)

観客には青と赤のセロファンが入った紙製の眼鏡が配られ、指示に従って眼鏡を使用すると映像が立体的に見える。大掛かりな美術と併せたスペクタクル・オペラだ。カウフマンの中音域は色彩に富み魅力的だが、高音はひっかかり、声が伸びないのが残念だ(トゥーランドット役:オルガ・マスロヴァ、リュー役:エルモネラ・ヤオ、他)。

また同歌劇場の次期音楽総監督が、ペトル・ポペルカに決定した。任期は2029/30年から。

山田和樹がバンベルク響デビュー

山田和樹とバンベルク響 © Jonathan Kromer
バンベルク響にデビューした山田和樹 ©Jonathan Kromer

5月22、23日、山田和樹バンベルク交響楽団に指揮デビューした(所見日:5月23日、バンベルク・コンツェルトハレ)。プログラムはベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」(マルティン・ヘルムヒェンp)、ドビュッシー《おもちゃ箱》、ビゼー《子供の遊び》。今シーズンの同響のモットー「シュピールフロイデ」(演奏や遊びの喜び)に添ったものだが、稀なプログラムだ。しかし山田の明晰なタクトと牽引力のおかげで、オーケストラからも文字通り「演奏の楽しみ」が伺えた。聴衆も大喝采だった。

ライン・ドイツ・オペラの音楽総監督決定と新劇場建築中止

ライン・ドイツ・オペラ(デュッセルドルフとデュースブルク)の新音楽総監督が、エヴァン・ロジスター(46歳)に決定した。2027/28シーズンから、まず5年間の契約。ロジスターは2018年から25年までワシントン・ナショナル・オペラの首席指揮者を務めた。

また同オペラのデュッセルドルフの新劇場建築計画が、同市の財政難を理由に白紙撤回された。

来住千保美 Chihomi Kishi
来住千保美 Chihomi Kishi

音楽学/音楽ジャーナリスト。1991年からドイツのケルン、デュッセルドルフ、現在はミュンヘン在住。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒業、ドイツのケルン大学法学部を経て...

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