レポート
2026.10.20
海外クラシックNEWS~音楽祭編-ペーザロ・ロッシーニ音楽祭2026/Worldwide classical music report about Music Festivals, " Rossini Opera Festival Pesaro 2026"

ペーザロ・ロッシーニ音楽祭はフランス・オペラ《コリントの包囲》でオープン

欧州で行われた、2026年夏の音楽祭から、イタリアのペーザロ・ロッシーニ音楽祭(2026年8月11日~23日)のもようをお届けします。

三光 洋 Hiroshi Sanko
三光 洋 Hiroshi Sanko

1961年生まれ、兵庫県神戸市出身。1986年渡仏。パリ第8大学でベアトリス・ディディエ、パリ国立高等音楽院=高等師範=トゥール大学合同音楽学課程でデイヴィッド・チャ...

《コリントの包囲》は、欧州がギリシア熱に包まれていたとき、ロッシーニによって作られた © Amati Bacciardi / ROF

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今夏47回目を迎えたペーザロ・ロッシーニ音楽祭(ROF)の開幕公演は、3幕の歴史悲歌劇《コリントの包囲》だった(オーディトリウム・スカヴォリーニ、8月11日所見)。

《コリントの包囲》は、いまからちょうど200年前の1826年に、パリ・オペラ座(ル・ペルティエ劇場)で初演された。19世紀の文化首都だったパリを征服しようとしてロッシーニが初めて書いたフランス・オペラで、大きな成功を収めた。同じ年に画家のドラクロワが『ミソロンギの廃墟に立つギリシア』を描いており、オスマン・トルコ帝国からの独立戦争に対し、欧州全体がギリシア熱に包まれていた時代だった。

この作品は、1820年にナポリで初演された2幕のイタリア・オペラ《マホメットⅡ世》を書き直したものだが、変更点は、パリ・オペラ座の公演に欠かせなかったバレエの加筆や、台本の翻訳に留まらない。オーケストレーションにいっそうの厚みが持たされ、合唱に大きな役割が与えられており、傑作《ギョーム・テル》(ウィリアム・テル)をはじめとするフランス・グランド・オペラへの道を開いた重要な作品だ。

本公演の意義は、指揮を委ねられたカルロ・リッツィが、音楽学者ダミアン・コラ=ガレが精緻な作業によって完成させた批評校訂版の楽譜を使ったことだった。というのも、20世紀まではフランス語を再度イタリア語に翻訳した台本を使い、音楽を大幅にカットした本来の作品からはかけ離れた楽譜が使われていたからだ。

オペラの指揮に練達したリッツィに導かれたボローニャ市立劇場管弦楽団は、ロッシーニが求めたドラマの緊迫感のある演奏を聴かせてくれた。ソロ歌手にも、音楽だけで3時間近い大作にふさわしい適材がそろった。

なかでも、ヒロインのパミラ役のヴァシリーサ・ベルジャンスカヤは、輝かしい高音、卓越したベルカントの技法で傑出していた。ネオクレス役のマキシム・ミロノフも繊細な音色と流れるようなヴォカリーズを披瀝した。8人のソリストのうち6人までがアカデミア・ロッシニアーナ出身の若手だったことは、同音楽祭がオペラ上演だけでなく次代の歌手の養成にも大きな役割を果たしていることを示している。

残念だったのは、戦地のトルコ兵たちが携帯電話にかじりつき、タバコを吹かすといった場違いな演技と、過剰な映像によってドラマの核心をぼかしてしまった演出家ダヴィデ・リヴァモアによる惨たんたる新演出だった。

それでも、ロッシーニが目指した、ベルカント一辺倒でない音楽によるドラマを、実際に耳にできたのは大きな収穫だった。

ROFの《コリントの包囲》から © Amati Bacciardi / ROF
ROFの《コリントの包囲》から © Amati Bacciardi / ROF
三光 洋 Hiroshi Sanko
三光 洋 Hiroshi Sanko

1961年生まれ、兵庫県神戸市出身。1986年渡仏。パリ第8大学でベアトリス・ディディエ、パリ国立高等音楽院=高等師範=トゥール大学合同音楽学課程でデイヴィッド・チャ...

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