読みもの
2021.01.01
高坂はる香の「思いつき☆こばなし」第42話

生誕200年! ロシアの文豪ドストエフスキーのギャンブル好きとユーモア

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

メイン写真:フョードル・ドストエフスキー(ヴァシリー・ペロフ画/1872年)

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今年、2021年にアニバーサリーを迎える人といえば。

ドストエフスキーです。生誕200年!

19世紀後半のロシアを代表する文豪。1821年、モスクワの医師の家庭に次男として生まれ、サンクトペテルブルクの工兵学校で学んだのち、一度、工兵隊製図局に就職。しかし1年ほどでやめてしまい、作家の道に進みました。

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フョードル・ドストエフスキー(1821〜1881)。デビュー後、20代で所属した空想的社会主義サークルが咎められ死刑判決。銃殺刑執行直前に皇帝ニコライ1世から特赦が与えられて5年ほどシベリアで服役した。

若い頃から浪費癖がものすごく、勤め人時代も無計画にお金を使い、常に借金をしていたといいます。それにもかかわらず、兄への手紙の中で「務めには、じゃがいものようにあきた」「食いぶちはすぐ見つける」といって、なんのあてもないまま仕事をやめてしまったとか。

作家として有名になったあとも、賭博で消えるお金に、稼ぐ金額が追いつかないという。

病気の妻を置いて出かけた愛人との旅の道中でルーレットにどっぷりはまり、負けがかさんで借金まみれになったうえ、のちに愛人とも破局するという出来事も。この経験に基づいてドストエフスキーが書いた小説『賭博者』は、プロコフィエフがオペラ作品にしています。

プロコフィエフ:オペラ《賭博者》/ヴァレリー・ゲルギエフ指揮 マリインスキー劇場(2012年)

代表作の長編小説『罪と罰』は、お金を貸してもらうかわりに悪徳出版業者と結んだひどい契約条件のもと、お尻に火がついた状態で書き上げられたものだということも知られています。

ドストエフスキーの作品といえば、この『罪と罰』はじめ『カラマーゾフの兄弟』など、長いストーリー展開の中で、主人公たちが、信仰や罪、社会的道徳の真実や人間の本質について延々と考えを巡らせるような長編小説が有名ですね。

しかし私がけっこう好きなのは、ドストエフスキーのユーモア短編小説。なにせドストエフスキーですから、普通のおもしろい話ではありません。皮肉、不条理、ありえない設定、滑稽な人間の言動、てんこもり。

ドストエフスキーに限らず、古いロシアの作家のユーモア小説を読むと、時々、ロシア系の音楽家たちが口走る、ひやっとするような、少しぬるりとするような、独特のジョークに通じるものを感じます。根本にある感性が受け継がれるのかもしれません。おもしろいものです。

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

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