連載
2026.07.15
月刊誌『音楽の友』連動企画 フレッシュ・アーティスト・ファイル 【Q&A】

宮川春菜さん(ギター)、音楽への熱き想いで、新たな道を走りだす

月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、20の質問を通して演奏家たちの素顔を紹介していきます。第19回は、ギタリストの宮川春菜さんにご登場いただきました。

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

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2002年生まれ。小学2年生でギターをはじめ、わずか2年後の第39回日本ギターコンクールで、初出場にして金賞受賞という快挙を成し遂げた宮川さん。その後も第13回J.S.バッハ国際ギターコンクールや、2025年のアンドレス・セゴビア国際ギターコンクールで優勝を飾るなど、国内外で輝かしいを活動を続けています。いま注目の若手ギタリストの素顔に迫ります。

宮川春菜(みやがわ・はるな)
小学2年生から牧瀬豊に師事。小学4年生の時に第39回日本ギターコンクールに出場し、初出場ながら金賞を受賞。同コンクールでは5年連続金賞と、4年連続日本ギター協会賞を受賞。山陰ギターコンクールで2年連続優勝。特別賞「米子市長賞」受賞。弱冠12歳にして地元奈良県でソロリサイタルを開催するなど注目を浴び、クラシック・ギター界の期待の新星としてTVや新聞・雑誌でも紹介される。2019年 第27回山陰ギターコンクールプロフェッショナル部門優勝。特別賞「鳥取県知事賞」受賞。2020年 第42回ジュニアギターコンクール高校生の部優勝。第一線で活躍するギタリストも獲得した最優秀賞にも輝く。2021年 第1回イブラ・グランド・アワード・ジャパン・コンクールにてAYAKO WATANABE PRIZEを受賞。翌年5月に当コンクールの副賞として、NYカーネギーホールで演奏。2022年 第28回Mottola国際ギターコンクールYoung C部門第1位。2023年 日本・スペインギター協会 創立50周年記念「第41回スペインギター音楽コンクール」第2位(聴衆賞を獲得)。グランドファイナルでは自身初となるオーケストラ協演による「アランフェス協奏曲」全楽章を演奏。2024年 第13回J.S.バッハ国際ギターコンクール優勝。9月にはめぐろパーシモンホール(小ホール)にて都内ホールデビュー公演となる「Genesis」を開催。2025年5月からクラシックの名門ホールを巡る東名阪ツアー「Progress」を浜離宮朝日ホール、ザ・フェニックスホール、宗次ホールにて開催。同年、日本ギター協会主催の神戸日本ギターコンクール2025プロフェッショナル部門第1位、スペイン・リナレスで開催されたアンドレス・セゴビア国際ギターコンクール優勝。自身初となるCD『Strelitzia』が各コンサート会場にて発売中。

ギターを弾くことで救われる

Q1 小さいころの夢は?

ケーキ屋さんとフィギュアスケートの選手。フィギュアスケートはテレビで試合を観て、家のなかで演技を真似してみるというような遊びをよくしていました(笑)。

Q2 小学生のころ、好きだった教科は?

体育です。走るのが好きで、長距離も短距離もどちらも得意でした。

Q3 出身地(奈良県・三郷町)はどんな場所?

静かなところですね。都会でも田舎でもない絶妙な空気感で、なにより人が温かい。私が通っていた地元の小・中学校には、いろいろなバックグラウンドを持つ人がいたのですが、みんながそれをありのままに受け入れる、そんな場所でした。

Q4 自身をどんな性格だと思う?

基本的にはおおざっぱで、細かいことは気にしないタイプ。そのいっぽうで繊細かなと思うところもあって…… たとえば物事を見聞きしたときに感じるものがほかの人よりも多い気がするのです。その繊細な部分はギターを弾くことによって救われている感覚があります

Q5 好きな食べ物は?

お蕎麦です。幼いころ、祖父と一緒にナマコやスルメイカ、酢昆布などをよく食べていたせいか、周囲からは「好きな食べ物が渋すぎる」とよくいわれます(笑)。ちなみに、甘いものでは「雪見だいふく」が好きです。

Q6 苦手な食べ物は?

コーヒーやビールなど「苦いもの」が苦手ですね。

Q7 本番前の勝負メシはある?

ないですね…… ただ、できるだけ胃もたれしないものを食べるようにはしています。コンサートのスケジュールによっては、きちんと食事の時間を取れないこともあるので、いつも「inゼリー」のようなゼリー飲料を常備しておいて、危ないと思ったらエネルギー補給をするようにしています。

小学生の頃からギタリストになることが夢だったと語る宮川さん。ギターのなかでもクラシックを選んだ理由は師匠との偶然の出会いからだった。使用楽器は、スペイン・グラナダの楽器工房によるホセ・マリン・プラズエロ2013年製

レジェンド・山下和仁の存在

Q8 好きな作曲家は?

J.S.バッハ。バッハは特別な存在で、とくに《シャコンヌ》は一生をかけて勉強したい作品です。弾けば弾くほど、その奥深さに圧倒されます。「バッハが曲に込めた想い」と「私が弾くからこそ生まれる《シャコンヌ》」をどう結びつけるか。時間をかけて熟成させていきたいですね。

ギターの作曲家では、タレガをとても尊敬しています。定番の《アルハンブラの想い出》はもちろん、《ヴェニスの謝肉祭の変奏曲》も華やかでタレガらしさが詰まっていて大好きです。タレガの作品の魅力は、ギターの多様な奏法がこれでもかと出てくるところ。《グラン・ホタ》などもそうですが、グリッサンドやトレモロ、ギターのボディを太鼓のように叩いて音を出したり、スネアドラムのような音を模したり。ギターならではのアレンジがギュッと凝縮されているところが好きです。

Q9 今後、挑戦してみたい作品は?

コンチェルトのレパートリーを増やしたいと思っていて、ロドリーゴ、ヴィラ=ロボス、ヴィヴァルディなど、いろいろな協奏曲に取り組んでいきたいと思っています。

クラシックギターとオーケストラという編成は珍しいですし、音量のバランスなど難しい面もありますが、だからこそギターの新たな魅力が伝わるような演奏をしていきたいです。

あと、クラシックの作品ではないのですが、コ・デ・ルシア《地中海の舞踏》という曲がものすごくかっこよくて挑戦したい! フラメンコやフォークといったいろいろなジャンルのギター奏者のかたと共演できたらおもしろいなと思っています。

Q10 憧れのアーティストは?

山下和仁さんです。楽器の限界を超えるようなスピード感と迫力…… 人間離れした演奏だと思います。内に秘めた音楽への情熱が、ギターを通して全部出てくるような印象があり、画面越しであっても、その熱量が身体の芯にズドンと響いてきます。

私は山下さんのレパートリーにも影響を受けていて、コンサートでも山下さんの編曲をたくさん演奏させていただいています。

実際にお会いすることは叶いませんでしたが、亡くなられたあと、世界中のギタリストが言葉を尽くしてSNSなどでコメントを寄せているのを見て、改めてどれほど絶大な存在だったのかを痛感しました。

Q11 練習前のルーティンを教えて。

1日15分、必ず基礎練習(スケールや左手のスラーなど)を行うことをルーティンにしています。

もともとルーティンはなかったのですが、一昨年初めて挑戦したセゴビア国際ギターコンクールをきっかけにはじめました。周りの参加者たちのバランスのとれた技術に衝撃を受け、彼らに話を聞いてみると基礎を徹底的に固めていた。そこで私も自分の癖や音の乱れを徹底的に整理しようと思いました。改めて基礎練習に取り組んでから、周りからも「音が変わった、芯とみずみずしさが出た」と言われるようになり、基礎の大切さを実感しています。

Q12 音楽をやめたいと思ったことはある?

一度もないですね。小・中学生のころは、周りの友達が遊んでいるなかで練習するのがつらくて、泣きながらギターを弾いたこともありました。でもギタリストになりたいという夢があったので、つらくてもそれが当たり前だと思っていました。

山下和仁から影響を受けてレパートリーにした作品の一つとして、ヒメネス(山下編)「歌劇《アロンソの結婚》間奏曲」を挙げる。「右手一本で、上で16分音符を刻みながら下で3連符を弾くような超絶技法が出てくるのですが、これを弾けるようになったら見える世界が変わるかも!と思って、猛練習しました。コンクールでも勝負曲として演奏しました」(宮川)

趣味は「昭和歌謡」を歌う、聴くこと

Q13 完全なオフの日があったら、何をしたい?

1日だけなら、「なにもしない」です(笑)。もし体力が残っていればアウトドアが好きなので、釣りをしたり、季節がよければ泳いだりしたいですね。海なし県の奈良で育ったせいか、水を眺めるだけでテンションが上がってリフレッシュできます。

長期の休みがあれば海外旅行……と思いますが、結局ギターを持っていって勉強してしまう気がします(笑)。

Q14 趣味は?

昭和歌謡を歌うこと、聴くこと。一人でカラオケに行って、山口百恵さん、松任谷由実さん、尾崎豊さんなどの曲を熱唱しています(笑)。あと、東京に出てきてからは古着屋さん巡りにもハマっています。下北沢に行って、普段着のコーディネートをあれこれ考える時間がとても楽しいです。

Q15 お気に入りの本は?

フランスの作家のモーリス・ルブラン著『アルセーヌ・ルパン』です。全20巻あるのですが、小学生のときに出合い、一気に読みました。泥棒側から見たミステリーの話で、頭も使うのですが、ものすごくのめり込める大好きな小説です。

Q16 最近、感動した芸術作品はある?

ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのフィギュアスケート・ペア競技での「りくりゅうペア」(三浦璃来・木原龍一)のフリーの演技をみて、感動でしばらく涙が止まりませんでした。

フィギュアスケートは、スポーツでありながら表現が占める比重が大きいと思っていて、1曲終わるまで一瞬も集中力を切らせない緊迫感は、音楽とも共通していて大好きなのです。りくりゅうペアのフリーの演技は、あの瞬間にしか生まれない奇跡的なパフォーマンスで、世界のすべてが二人に味方をしたような、本当にすばらしいものでした。

Q17 好きな映画やドラマはある?

映画は『オペラ座の怪人』(監督:ジョエル・シュマッカー)です。劇中の音楽が好きなのはもちろんですが、歪んだ師弟愛みたいなものの根底にある「孤独感」というのが、自分もふくめて、音楽家たちにすごく共通するな……と。音楽に向き合い、音楽を通じていろいろな人とつながることによって思いを消化する、これまで自分が経験してきたこともふくめて、映画を通じていろいろな場面を思いだしました。

ドラマだと『カルテット』(監督:坂元裕二)がすごく好きです。それぞれの事情を抱えて集まっているクァルテットというのが魅力的で、演奏家としても、すごくおもしろく観ました。

Q18 会ってみたい作曲家は?

ジュリアーニとパガニーニに会ってみたいです。

ジュリアーニは破天荒だったようで、人生も劇的。賭博で借金を作って詐欺事件を起こし、指名手配されて女装して故郷イタリアに逃げ帰った…… なんてエピソードがある人で(笑)。でも彼の音楽は、その強烈な自分軸がすごく楽しい音になって表れているのが魅力的です。実際どんな人だったのか、すごく気になります。

パガニーニはヴァイオリンのイメージが強いですが、じつは大のギター好き。演奏会の時間以外はホテルでギターを弾いていた名手でもあったそうです。その超絶テクニックを聴いてみたいですね。

Q19 これまで音楽を続けてこられた理由は?

私は高校まで公立の学校に通っていたのですが、どこか周りと感じかたや考えかたが違う気がして、うまく周囲の輪に入れない自分をネガティヴにとらえてしまう時期がありました。なんといえばいいのか、自分のなかに、どこか欠落している部分があるような感覚というか……。

音楽は、そんな誰にもわかってもらえないような自分のなかの孤独や感覚をすべてわかってくれる気がしたのです。 音楽が私の弱さをすべてパワーに変えてくれたのです。「ここまで続けてこられた」というよりは、音楽はなくてはならない存在というほうがしっくりしますね。私はいろいろな場面で音楽に救われていると思います。

Q20 20年後どうなっていたいですか?

ギターやクラシック音楽の魅力を、日本をはじめもっと多くの人に広める広告塔のような存在になっていたいです。

クラシックは長い歴史の中で大切にされてきたすばらしい音楽ですが、これからの時代に合った新しい角度からの楽しみかたもまだまだあると思います。「この人が弾いているなら聴いてみようかな」「ギターを始めてみようかな」と、誰かの新しい一歩のきっかけになることを目指して、これからも走り続けます!

今後開拓していきたいレパートリーは、ピアソラなど南米の作曲家の作品や、現代作曲家たちの作品。「クラシック音楽を軸にしながら、いろいろなジャンルの要素が入っている作品を演奏したいです」(宮川)
宮川春菜さんInformation
第20回 Hakuju ギター・フェスタ 2026 20周年記念ガラ・コンサート 

日程:8月22日(土)11時

会場:Hakuju Hall

問合せ:Hakuju Hall チケットセンター 03-5478-8700

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宮川春菜 ギター・リサイタル

日時:2026年9月5日(土)14時

会場:宗次ホール

問合せ:宗次ホールチケットセンター 052-265-1718 

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アクト・ニューアーティスト・シリーズ2026 No.153 宮川春菜(ギター)

日時:12月6日(日)14時

場所:アクトシティ浜松 音楽工房ホール

問合せ:公益財団法人浜松市文化振興財団 文化事業課053-451-1114

詳細はこちら 

 

ゆめプラ サロンコンサート2026「ほとばしる才能 若き巨匠」

日時:12月12日(土)15時

会場:ゆめたろうプラザ 響きホール (愛知県)

問合せ: ゆめたろうプラザ0569-74-1211

詳細はこちら

月刊誌『音楽の友』Information

『音楽の友』2026年5月号(4月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、宮川春菜さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!

「音楽の友」2026年2月号記事詳細はこちら

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