北米のケルト音楽アーティスト~北米に脈々と息づくケルト音楽の継承者たち
ヨーロッパの西から世界中へ広まっていったケルト文化。アメリカ・カナダに根を下ろした移民たちも、現代に至るまでケルトのスピリットを受け継いだ音楽を生み出している。
今回は、そんな北米のアーティストをご紹介。中でも、9~10月にかけて全国的なツアーを行なうゴサード・シスターズは見逃せない。歌って踊り演奏する三姉妹の楽しいステージは、ケルト音楽の入門者にもオススメだ。
世界のケルト音楽を発見する旅へ、音楽プロデューサーの野崎洋子さんがご案内!
1966年千葉県生まれ。日本大学文理学部出身。 メーカー勤務を経て96年よりケルト圏や北欧の伝統音楽を紹介する個人事務所THE MUSIC PLANTを設立。 コンサ...
ケルト文化はヨーロッパの西の端から世界中へと広がっていった。アメリカ大陸が発見されると、飢饉や生活の苦しさに耐えていた彼らは、より良い生活、自由を求めて、夢を追いかけ始める。今回はそんなケルト民族の末裔たちによる北米のケルト音楽をいくつか紹介したい。
ニューファンドランド島で結成された「海の男のケルト」バンド、グレイト・ビッグ・シー(カナダ)
なんといっても私が好きなのは、カナダのバンド、グレイト・ビッグ・シー。現在活動は停止してしまっているが、カナダのニューファンドランド島で結成された、「海の男のケルト」バンドだ。最近、弁護士事務所みたいな名前の似たようなサウンドの英国バンドが流行っているが、私に言わせれば、20年以上前に存在していたこっちの方が俄然オリジナル。97年の作品『Play』の廉価版(1,300円+税)が、2016年にワーナーミュージックより発売された。松山晋也氏が監修する「Irish & Celtic Heartbeat」というシリーズの1枚。シリーズの他のCDも要チェックだ。
ビルボード/ワールドミュージックチャート常連の実力派、ロリーナ・マッケニット(カナダ)
北米では最大の売上/知名度を誇るケルト音楽のアーティスト、ロリーナ・マッケニット。実はチーフタンズ(アイルランドのバンド)のゲストとして90年代に来日したこともある。完璧なアルバム・コンセプト、サウンド・プロデュース……と何を取っても一流だ。グラミー賞にもノミネートされ、カナダでもっとも権威のあるジューノ賞も何度も受賞。アメリカのビルボード/ワールドミュージックのチャートの常連であり、日本ではプログレッシブ・ロックのファンも彼女に関心を寄せているようだ。
フィドル、バンジョー、ギターのパワフルな演奏に虜! イースト・ポインターズ(カナダ)
昨年、ケルティック・クリスマス出演で話題をさらった三人組、イースト・ポインターズもカナダの出身。2016年にカナディアン・フォーク・ミュージック賞を勝ち取った。フィドル、バンジョー、ギターのパワフルな演奏は一度聴いたら忘れられない。再来日、熱烈希望!!
来日ツアー決定! 歌って踊れるアメリカの三姉妹、ゴサード・シスターズ(アメリカ)
そしてこの秋、最大の注目株。アメリカはシアトル近郊のエドモンズから彗星のようにあらわれた、グレタ、ウィロウ、ソラナのゴサード三姉妹。全員がヴァイオリンを演奏し、あらゆる歌、ダンス等のコンテストで優勝を果たした実力をもつ。たった3人のステージながら、インストゥルメンタルはもちろん、歌、ダンスなどエンタテインメント性溢れるステージで、誰でも楽しめるフレンドリーな内容となっている。なんと来月〜10月にかけて、20ヶ所以上にも渡る全国ツーが決定したので、これは見逃せない。
オリジナル曲の他、アイルランド/スコットランドなどの伝統曲も披露される予定だが、今、3姉妹たちは来たる大規模ツアーに向けて日本の歌の練習にも余念がない。
循環しつながる、しなやかなケルト文化
こうして眺めてみると、新しい世界を求めて地球全体に散らばったケルト文化が、現代ではそんな風に、音楽を通じて多くの人をつなげる役割を担っているところが興味深い。彼らは皆、自分のルーツを大切にしながらも、とても自由でしなやかで、他の文化との融合にも柔軟な態度でのぞむ。歴史上、日本にケルト系の移民はやってこなかったのかもしれないけれど、現代の日本に多くのケルト音楽のリスナーが存在し、独自のケルト・バンドが存在する事に今さらながら驚く。ケルト美術の研究家である鶴岡真弓先生が語っていたように「始まりと終わりのない、循環しつながるケルトの世界観」がそんなところにも見てとれる。
いずれスペインやフランス、オーストラリアなどの他の地域のケルト・グループも紹介していきたい。
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