CDトランスポートで演奏の意図まで聴きとりたい! 6畳間仕事人のオーディオ改善計画
連載「飯田有抄と、音楽でつながる仕事人たち。」の番外編が続きます。
第2弾はオーディオ・アクティヴィスト生形三郎さんと選ぶ、デスクトップ用のCDトランスポート。CDプレーヤーだけよりCDトランスポート+DACのほうが個々の役割が細分化されますが、意外なほど音に違いが!
PC周りに置くのにぴったりのコンパクトな3機種を聴き比べました。
デスクトップ環境でCDもいい音を!
私の6畳仕事部屋のデスクットップ・パソコンの音響環境を改善していくこの企画。今回もオーディオ・アクティヴィストの生形三郎さんに、水先案内人となっていただいております。
前回、インターネットで聴くストリーミング音源の再生を考えましたが、せっかくアンプやスピーカーを導入したので、今度はCDそのものも再生させたい! という欲がでてきました。
これまでCDを再生するときは、パソコンとは離れたところに置いたボーズのCDプレーヤーを使っていました(少し音がモコモコする印象)。机で作業しながらサクッとCDを出し入れしたい。
現状のデスクトップ環境でCDをよりよい音で聴くには、「CDトランスポート」なる機械が必要とのこと。そこで、3つの製品を聴き比べしてみました。
[A]ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番へ短調作品57「熱情」第1楽章
ピアノ:反田恭平
アルバム「悲愴/月光/熱情=リサイタル・ピース第2集」より(COCQ-85422)
[B]モーツァルト:クラヴィーア協奏曲第15番変ロ長調 K.450第1楽章
フォルテピアノ:小倉貴久子、ピリオド楽器による室内オーケストラ
アルバム「J.C.バッハとW.A.モーツァルトのクラヴィーア協奏曲」より(ALCD-1176)
[C]バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」より「導入」
バーンスタイン指揮、(ブロードウェイ内外からの特別編成による)オーケストラ&コーラス(POCG-2378/9)
CDトランスポート3機種を試聴!
ティアック PD-301をDAC含むCDプレーヤーとして
最初に使用したのはティアックのPD-301。CDのデジタル信号をアナログ信号に変換させる機能(DAC/デジタル・アナログ・コンバーター)が内蔵されているので、通常の「CDプレーヤー」として直接アンプにつなげられます。ワイドFMやUSBに入った音源にサクッとアクセスできるのも魅力。
A、B、Cとも、とてもクリアで華やかさのあるサウンドで響きました。でも、もうすこし深みが欲しいような気もしました。
PD-301はアナログ出力を搭載しているので、単体のCDプレーヤーとしても使えるモデルです。
アナログ出力を直接アンプにつなぎ、まずはCDプレーヤーとして聴いてみましたが、ストレートで抑揚が控えめの、スッキリとした表現が印象的でした。先ほどのボーズのオールインワン一体型CDプレーヤーと比べると、やはりアンプやスピーカー、そしてCDプレーヤーが独立している強みが発揮され、楽器本来の音色やステージの響きが、よりリアルに、生き生きと描かれました。
ティアック PD-301 CDトランスポート+デノン DA-300USB
今度は、PD-301を手持ちのDAC(デノンDA-300USB)に接続し、「CDトランスポート」として使用してみました。
デジタル信号のみを外付けのDACに送る形にしてみると、響きに落ち着いた安定感と艶やかさが増したように感じます。
A: 奏者の息遣いや強弱の幅がよりリアルに感じられました。
B: フォルテピアノの打弦するサウンドが生き生きと音楽的に。オーケストラの響きもキビキビとしつつ、ふくよか。
C: 低音弦がスッキリと、なおかつよく響きます。打楽器のキレが出ました。
DAC部をデノンに置き換えることで、大幅な音質アップが楽しめました。これはDAC部のグレード自体の違いもありますが、デジタルデータの読み出しとアナログデータへの変換、それぞれを別の機器に分担させることのメリットも大きいと言えます。
オーディオ機器では、役割を分担させ、お互いの干渉を減らすことで、さらなる音質アップも狙えます。
ここでサブウーファーを調整
ところで前回、贅沢にもフォステクスのアクティブ・サブウーファー「PM-SUBmini2」を2台導入しましたが、ここで生形さんが再調整してくれました。「クロスオーバー周波数」という、サブウーファーに担当させる低音の音域を調整してくれたようです。この状態で[A]を再生してみたところ、設定後は低音やペダルで引き伸ばされた弦の鳴りに倍音が感じられ、より音場の広がりが生まれました!
サウンドウォーリア SWD-CT10
こちらはCDトランスポートに特化したサウンドウォーリアのSWD-CT10。ティアックの製品と音の印象がだいぶ異なります。
A: 音の発音がまろやかになり、全体にまとまりが出た印象。音圧を感じます。
B: ピリオド楽器特有の音の立ち上がりが、なめらかに綺麗に整えられました。古楽器の持ち味はやや失われてしまうかも。
C: しっとりとしたジャジーな雰囲気に。少し低音が弱めに感じました。
なお、通常のCDをハイレゾ音源のような音で楽しめる「アップサンプリング」機能があります。ボタンを押すだけで、CDの44kHzを、4倍以上の192kHzまで周波数を自動補間して再生してくれます。使ってみたところ、残響が豊かになりカッコいいサウンドが楽しめました。
ピアノの響きが特にふくよかで、やや温かみのある温度感が心地よい表現です。この機種は、アップサンプリングという、音質を拡張する機能を搭載していることも特徴です。
「SRC」ボタンをプッシュすることで、5段階で調整が可能で、サンプリング周波数を高めるほど、より滑らかで色彩感に富んだサウンドを楽しめましたね。
オラソニックNANO-CD1
3つの中ではもっともコンパクトで、スッキリとしたデザインのオラソニックNANO-CD1です。持ってみると意外と重さがあり、ヒンヤリとした金属的な触り心地も素敵です。こちらも「アップサンプリング機能」があります。96kHzで再生してみました。
A: バランスがとても良い。音色のテクスチュアがきめ細かく伝わります。
B: 冒頭の1音から、ピリオド楽器の子音豊かな音の立ち上がりが鮮やかに再現されました。楽器間の受け渡しや音色の違いもヴィヴィッドです。
C: 膜鳴楽器の「膜感」とでも言いましょうか、パーカッションの表情が鮮やかです。金管楽器のブリリアントな響きもよく、オーケストラ全体の立体感も感じられました。
今回試した製品の中で、もっとも重量級でガッチリとした筐体の作りをもったトランスポートです。音もそれを象徴するかのような、情報量に富んだ音でした。同時に、低域のふくよかさもきちんと引き出されるので、充実した音が楽しめましたね。
アップサンプリング機能をオンにすることで、より滑らかな質感が得られました。
おまけ: CDリッピングの音&映像用として
パイオニア BDR-XD07J-UHD
CDをパソコンに取り込むドライブも進化しているんですね。パイオニアBDR-XD07J-UHDでリッピングした音源「B」は、音の輪郭がスッキリ伝わる印象。パソコンでオペラのDVDやBlu-rayディスクの鑑賞も、ノイズの少ないより良い音で楽しめて、とてもコンパクト。
このドライブは、パイオニア独自の高性能なリッピングソフトが付属していることが特長です。
CDリッピングは、細かく言うと、リッピングするドライブやリッピングソフト、そして、その設定などによっても音が微妙に変わってきます。
おまけのおまけ:USB空き端子に挿すだけで音がきれいに
ボンノートDRESSING APS-DR005
「USBに挿すだけで音が良くなるんですよ」と、ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら生形さんが差し出す「ドレッシング」なるアイテム。ええ〜本当? と「B」を聴きながら半信半疑で挿してみたのですが、なんと! 伸びやかで品のあるサウンドへ。低音の伸びや打弦音がクリアになったから不思議。
DRESSINGは、パソコンなどのUSBポートから流入するノイズを抑えるためのアクセサリーです。APS-DR005は、ノイズを抑えるとともに、音質アップを狙うことができます。
今回の使用環境では、全体的に、音の表情に自然なメリハリが生まれました。
結論!
実際に試してみると、製品によって特徴がはっきりしていて、二人ともビックリ!! 個人的な印象では、ティアックが硬質でクリアなサウンド、サウンドウォーリアはまろやかでまとまりのあるサウンド、そしてオラソニックは立体的でバランスのよいサウンド、という印象が残りました。再生するジャンルによって、好みに応じた機種を選べるのは嬉しいですね。
価格と見た目、機能面からするとティアックに軍配があがります。サウンドウォーリアとオラソニックは、CD再生時に「トラック番号」のみ表示され、何分何秒と出ないのが残念。仕事柄、メモしておきたい情報なのです……。
最後はやはり、音の好みでしょうか。私がリアルに購入したいのは、オラソニックNANO-CD1です! クラシックを聴くには、音の立ち上がりと奥行きを豊かに楽しめるこちらが最適だと感じます。手持ちのCDを1枚1枚聴き直してみたくなるような、臨場感ある響きに心を奪われました。
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