イベント
2026.06.22
7月20日、銀座・王子ホールで1日限りの貴重な音楽祭

日本を室内楽が熱い国にしたい! 今年初開催「室内楽の環 音楽祭」の溢れる魅力

デュオやカルテット、ピアノや管楽器も登場する華やかな組み合わせで、楽しさ満載、ファンも倍増中の室内楽に、新たな音楽祭「室内楽の環」が、東京・銀座、室内楽を聴くなら最高峰の王子ホールに登場する。
7月20日、待ちに待った夏休み冒頭を飾る「室内楽の環 音楽祭2026」は、昼・夜にわたり、昼公演は弦楽四重奏、公開レッスン、トランペットソロ、ピアノ五重奏曲に六重奏、曲も「スター・ウォーズ」やモーツァルト、ライブが稀有で聴き逃せないマルティヌーの《キッチン・レビュー》まで作品も編成も、また、楽しみ方も多彩を極める。

小倉多美子
小倉多美子 音楽学/編集・評論

武蔵野音楽大学音楽学学科卒業、同大大学院修了。現在、武蔵野音楽大学非常勤講師。『音楽芸術』、『ムジカノーヴァ』、NHK交響楽団『フィルハーモニー』の編集に携わる。『最...

「室内楽の環 音楽祭2026」の会場となる東京・銀座の王子ホール

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アメリカが生んだ若手世代のヴィルトゥオーゾ、エリック・シルバーガーが初来日! ブラント・フレドリクセンとの練りに練ったプログラムの夜公演

「室内楽の環」がもたらす果実のなかでも、注目されている1つが、初来日のエリック・シルバーガー(ヴァイオリン)と、ブラント・フレドリクセン(ピアノ)のデュオが繰り広げられる夜公演だ。フレドリクセンは、ジュリアードやマンハッタン音楽院等に在職の講師陣によるオンライン・レッスンが関心を集めているSOUP International Music Programにおいても人気ピアニスト。

エリック・シルバーガー(ヴァイオリン)

コロンビア大学およびジュリアード音楽院を修了。第14回チャイコフスキー国際コンクール入賞をはじめ、国際的に高い評価を受ける。

サンフランシスコ交響楽団、マリインスキー劇場管弦楽団など世界各地のオーケストラと共演し、ソリスト、室内楽奏者として活躍。

各国メディアから「魂を震わせる演奏」「圧倒的技巧を誇るヴィルトゥオーゾ」と称されるなど、その豊かな表現力と卓越した技巧で注目を集めている。待望の初来日が実現!

ジュリアード音楽院を修了しただけでなく、コロンビア大学も政治学で卒業しているエリック・シルバーガーは、第14回チャイコフスキー国際コンクール第5位(2011)など米国内外の難関コンクールで入賞、すでに、ドナルド・ラニクルズ等々の指揮者たち、そしてマイケル・ティルソン・トーマス(指揮)サンフランシスコ交響楽団、ヴァレリー・ゲルギエフ(指揮)マリインスキー歌劇場管弦楽団、ロリン・マゼールやベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団等々、世界の主要オーケストラや指揮者と共演を重ねている、アメリカが生んだ若手世代のヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニスト。だが、その活動は実に幅広く、エネルギッシュだ。

創設に関わった1つに、次世代の育成や幅広い音楽ファンへの貢献を目指し世界規模の活動を企図して設立された「クラシカル・ブリッジ」の国際音楽祭がある。これまでニューヨーク、フランスや韓国で開催され、今年も韓国で、ミッシャ・マイスキー(vc)、オーギュスタン・デュメイ(vn)、ダヴィッド・カドゥッシュ(p、昨年の「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」の記憶も新しい)やエドガー・モロー(vc)などフランスの新鋭をはじめ、名だたるアーティストたちと共演したばかりである。

2016年には 「ハワイ国際音楽祭」 を共同創設。ここでは、教育プログラム、多様なコラボレーション——ウクレレの名手ジェイク・シマブクロ、グラミー賞ヴォーカリストのカラニ・ペア、著名なハワイアン・シンガーのライアテア・ヘルム、スラック・キー・ギターの名手ジェフ・ピーターソンなどハワイを代表するアーティストと共演している――を通じて「さまざまな音楽スタイルや演奏のあり方に触れ得た」と語るシルバーガーの活動は、さらに幅を拡げ、深化している。

教育に関しては、オンライン音楽教育プラットフォーム「トーンベース(tonebase)」のヴァイオリン部門創設に携わり、初年度の運営を担った。

室内管との共演も活発で、その1つが、指揮者ユクシン・ダイが今年立ち上げたサンフランシスコ・カメラータ・オーケストラのアーティスティック・パートナーである。3月の共演に続き、9月にもベートーヴェンのトリプル・コンチェルトを共演予定だ。来日直前には、クレイグ・マッデン・モリスがシルバーガーのために書いたヴァイオリン協奏曲をロンドン交響楽団と録音予定である。

今回「室内楽の環」の夜公演では、シルバーガーが「その構造の中に自由と表現の多様性を織り込んでいる」と深く愛するフォーレの「ヴァイオリン・ソナタ第1番」がプログラムに入っている。そこで共演するピアニストがブラント・フレドリクセンで、彼は「クラシック録音財団(The Classical Recording Foundation)」(ニューヨーク、2002年設立)のヤング・アーティスト賞を2016年に受賞している。

室内楽の名手フレドリクセンがワイゲルの新作を携えて

フレドリクセンの活動、手掛ける作品は実に幅広い。ニューヨーク・フィルのメンバーやメトロポリタン歌劇場、ジュリアード音楽院のメンバー、ニュー・ヘレニック弦楽四重奏団、アメリカ弦楽四重奏団、ハリントン弦楽四重奏団等々、数多くの共演を重ねており、豊かな室内楽の世界を紡いでいる国際的な室内楽巧者である。それだけでなく、シルバー・ベイ夏期音楽祭の創始者でもあり、同音楽祭は創設地のニューヨークからドイツ、イタリア、ギリシャ、ノルウェーへと規模を拡げている。

ブラント・フレドリクセン(ピアノ)

カーネギーホール、リンカーンセンターをはじめ世界各地で演奏を行うコンサートピアニスト。
ニューヨークの名門マンハッタン・スクール・オブ・ミュージック、プレカレッジにて30年近く後進の指導にあたる教育者としても名高い。
室内楽プログラム「シルバー・ベイ夏期音楽祭」創設者・芸術監督、『That’s Not Tango: アストル・ピアソラ ― 音楽に捧げた人生』音楽監督としても知られる。SOUP室内楽プログラム講師

レパートリーも、ドイツ語のナレーションを伴うR.シュトラウス《エノック・アーデン》や『That’s Not Tango: Astor Piazzolla-a Life in Music』の音楽監督を手掛けるなど、幅広い。

夜公演では今回、シルバーガーのためにウィリアム・ワイゲルが書き下ろした新作《ヴァイオリンとピアノのための3つの対話》が世界初演される。ニューヨークを拠点に、弁護士としても活躍する(!)ワイゲルの作品の多くは、12音技法を基盤とし、師の系譜を辿ればシェーンベルクに連なる。ワイゲルについてフレドリクセンはこう語る「書法は高度で独創的ですが、聴く人の心に素直な感動を生む作曲家です。動機の明快な展開や構造感が、豊かな色彩感と質感を引き立て、革新性と表現とが絶妙な均衡をとるワイゲル作品の演奏は、とても魅力的です」。

ウィリアム・ワイゲル(作曲)

ニューヨークを拠点に活動する作曲家。室内楽、歌曲、オペラなど幅広い作品を手がけ、知性と親しみやすさを兼ね備えた独自の音楽世界で注目を集めている。2018年には、ウォレス・スティーヴンズの詩による歌曲集がカーネギホールにて初演され、好評を博した。

多彩で本格的、贅沢な体験の3部からなる昼公演

登場する楽器や編成、曲目、アーティストのどれをとっても、多彩を極める昼公演。

音楽祭は、日本を代表するヴァイオリニストの1人、滝千春率いる弦楽四重奏による「スター・ウォーズ」のテーマで開幕。第1部「はじめての室内楽」の始まりだ。モーツァルト「セレナーデ」、バーバーの美しい《弦楽のためのアダージョ》を名手で堪能した次は、第2部「公開レッスン」へ。滝千春が講師として登場し、シューマン「ピアノ五重奏曲」(第1楽章)の演奏がどのように作り上げられていくのかが、目の前で繰り広げられる。

そして王子ホールの3階バルコニー席から、ジブリの名作「天空の城ラピュタ」でパズーが屋根の上で吹く《ハトと少年》を、新進気鋭のトランペット奏者・中島愛実が高らかに響かせて開幕を告げる第3部「こんなに違う!室内楽」と題され、キッチンのお鍋や食器が登場人物となるバレエのために書かれたマルティヌー《キッチン・レビュー》が最後を飾る。この人気曲は、室内楽ファンにとって必聴だ。

きっと、楽しくてあっという間に1日が終わる頃、音楽と生涯の友だちになっていることだろう。

滝 千春(ヴァイオリン)

桐朋女子高等学校音楽科を経て、チューリッヒ芸術大学、ベルリン・ハンス・アイスラー音楽大学を修了。ユーディ・メニューイン国際コンクール第1位をはじめ、国内外の主要コンクールで受賞を重ねる。小澤征爾ら名指揮者と共演し、ソリスト、室内楽奏者として国内外で活躍。『PROKOFIEV STORY』『Schnittke CLOWNS』などのアルバムが軒並み高い評価を受けている。
現代日本を代表する作曲家たちより作品の献呈や委嘱を受ける音楽のミューズでもある。
ここに注目! 夜公演の聴きどころ

夜公演は、モーツァルトの「クラヴィーアソナタ、ヴァイオリン伴奏付き」の中でも、ピアノとヴァイオリンが互角に奏で合うK.454に始まり、シルバーガー珠玉の録音があるフォーレ「ヴァイオリン・ソナタ第1番」ワイゲルの新作に、古今のヴァイオリン・ソナタの中でも最も華麗なR.シュトラウスで締めくくる。

 

フレドリクセンはこのプログラムを「異なる時代を横断しながら、幅広い感情の旅を生み出すことを目指している」と語る。「各曲はヴァイオリンとピアノの関係を、和声的・旋律的・感情的にそれぞれ独自の方法で探求する傑作であり、これらの作品群が1つになることによって、豊かで多彩な感情の景色が生まれます。室内楽の力は、奏者間に生まれる共同体としての一体感にあります。だからこそ、演奏者同士が深く心を通わせ、そのつながりを聴衆とも分かち合うことができるのです」。

 

そしてフレドリクセンが「想像力や感情への扉を開く」と言う室内楽をぜひ、王子ホールで存分に味わってほしい。

公演情報
室内楽の環 音楽祭2026

日時:2026年7月20日(月・祝)

 

昼公演

第1部 はじめての室内楽 14:15開演

第2部 公開レッスン 15:00頃開演

第3部 こんなに違う!室内楽 16:00頃開演

夜公演

エリック・シルバーガー&ブラント・フレドリクセン デュオ・リサイタル 18:30開演

 

会場:銀座・王子ホール

 

出演:

昼公演

第1部 はじめての室内楽:

滝 千春(ヴァイオリン)、安田真理奈(ヴァイオリン)、美島咲子(ヴィオラ)、田中 渚(チェロ)

第2部 公開レッスン:

講師 滝 千春(ヴァイオリン)ほか

第3部 こんなに違う!室内楽:

中島愛実(トランペット)ほか

夜公演

エリック・シルバーガー(ヴァイオリン)、ブラント・フレドリクセン(ピアノ)

 

曲目:

昼公演

第1部 はじめての室内楽

ジョン・ウィリアムズ:スター・ウォーズのテーマ

モーツァルト:セレナード第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第1楽章

バーバー:弦楽のためのアダージョ 作品11

第2部 公開レッスン

シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44 第1楽章

第3部 こんなに違う!室内楽

久石 譲:「ハトと少年」

エルガー:ピアノ五重奏曲 イ短調 作品84 第2・3楽章

マルティヌー:キッチン・レビュー H.161 六重奏

夜公演

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454

フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調 作品13

ワイゲル:ヴァイオリンとピアノのための3つの対話(世界初演)

R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18

 

料金:

昼公演 自由席 2,000円

夜公演 自由席 7,000円

通し券 一般 7,500円/U-29 6,500円 

 

主催:SOUP室内楽プログラム

助成:デニス&ヴィクトリア・ロス財団

詳しくはこちら

 

小倉多美子
小倉多美子 音楽学/編集・評論

武蔵野音楽大学音楽学学科卒業、同大大学院修了。現在、武蔵野音楽大学非常勤講師。『音楽芸術』、『ムジカノーヴァ』、NHK交響楽団『フィルハーモニー』の編集に携わる。『最...

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