連載
2026.06.01
月刊誌『音楽の友』連動企画 フレッシュ・アーティスト・ファイル 【Q&A】

中江万柚子さん(ソプラノ)、宝塚歌劇団を経て、オペラ界のディーヴァへ!

月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、20の質問を通して演奏家たちの素顔を紹介していきます。第18回は、ソプラノ歌手の中江万柚子さんにご登場いただきました。

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

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1995年生まれ。中学校卒業とともに宝塚音楽学校に入学し、男役として19歳まで宝塚歌劇団に在籍。翌年から桐朋学園大学の声楽科に入学し、オペラ歌手への道を志す。昨年の東京二期会《さまよえるオランダ人》ゼンタ役で華々しく東京デビューを飾ったいま大注目の若きディーヴァ。その素顔をお届けする。

東京都出身。桐朋学園大学音楽学部声楽専攻、同大学院音楽研究科声楽専攻(オペラコース)修士課程首席修了。二期会オペラ研修所特待生。最優秀賞、川崎靜子賞受賞。丹藤麻砂美、宮本益光の各氏に師事。東京二期会《コジ・ファン・トゥッテ》フィオルディリージ役でデビュー。《さまよえるオランダ人》ゼンタ役では比類なき存在感と歌声で観客を魅了。華やかな舞台姿とステージプレゼンスが高く評価された。 EXPO2025大阪・関西万博イタリア館コンサート、東京二期会ニューイヤーコンサート2026等多数出演。Tokyo Opera Daysでは指揮者レオナルド・シーニや演出家ペーター・コンヴィチュニーと共演を果たし、いずれも好評を博す。《ドン・ジョヴァンニ》ドンナ・アンナ役、《椿姫》ヴィオレッタ役、《仮面舞踏会》アメーリア役等をレパートリーとする。二期会会員。

華やかな舞台への憧れ

Q1 小さいころの夢は?

4歳ぐらいまで、ディズニー・プリンセスに憧れていました。当時プリンセスが特集されている雑誌を買ってもらい、その付録を宝物のように大切にしていました。

Q2 タカラジェンヌを目指したきっかけは?

母親が宝塚歌劇団の舞台が好きで、幼少期から一緒に舞台やビデオを観る機会が多く、自然と宝塚の世界を目指すようになりました。もともとプリンセスや華やかなドレスへの憧れがあったので、最初は娘役に憧れていました。

Q3 小学生のころ、好きだった教科は?

音楽と体育。座学だと国語ですね。国語に力を入れている学校だった影響もあって、気がついたら読み書きが好きになっていました。

Q4 自身をどんな性格だと思う?

ポジティヴなタイプだと思います。よく食べ、よく寝て、よく笑う——この三原則を大切にしています。楽しいことが大好きなので、練習も楽しいことを取り入れて習慣化するようにしています。

Q5 練習前のルーティンを教えて。

発声練習の前にストレッチをするようにしています。東京ディズニーランドやシーのパレードで使われている音楽やお気に入りのアニメの主題歌などその日の気分で聴きたい音楽を流しながら、15分ほどフォームローラーで背中や首裏をほぐし、身体と心のテンションを上げてから練習に入ります。バレエや、宝塚時代に行なっていたエクササイズのメニューを取り入れることもあります。身体を伸ばすと、自然なかたちで横隔膜や腹筋など歌うために必要な筋肉に力が入るようになるので、役に立っていますね。疲れているときは「ラジオ体操」から始めます。呼吸が整い、血の巡りがよくなります。

Q6 好きな食べ物は?

チョコレートとチーズです。とくに生チョコには目がない(笑)。バレンタインデー・シーズンは、チョコ好きの友人と催事場に行って、「今年はいくらまでにする?」などと話し合いながら、チョコレートを買いに行っています。催事場のパンフレットを眺めるだけで幸せになれますね。購入したチョコレートは、練習後のご褒美として毎日一粒ずつ食べます。

Q7 嫌いな食べ物は?

辛いもの。ワサビや和からしなど、鼻にくる辛いものが苦手です。唐辛子系の辛さやマスタードなら大丈夫なのですが……。

Q8 本番前の勝負メシはある?

必ず食べるのは白米。公演の日の朝は、白米、納豆、味噌汁、卵というオーソドックスな日本の朝食です。お米を食べると安定する感じがして、腹持ちもよいので欠かせません。私は本番前でも食べないと体力が持たないタイプなので、衣裳が入らなくならない程度に、ガツガツ食べます(笑)。

食事制限や体調管理で気をつけているのは「お酒」と話す中江さん。「人によって違うと思いますが、私は声帯周りや顔が浮腫(むく)むと、声が出しづらくなると感じます。ただお酒は好きなので、身体と相談しながら、量と種類をいろいろ試しています」(中江)

最愛の作曲家はヴェルディ

Q9 クラシック音楽の世界に興味を持ったきっかけは?

ドラマ『のだめカンタービレ』です。放映当時、家族全員で夢中になって観ていました。じつはドラマ撮影のエキストラにも参加していて、千秋先輩が指揮するオーケストラを聴く、聴衆の一人として出演しています(笑)。数年前に『のだめ』に関するコンサートに出演する機会があって、人生の伏線回収がこんなところであるんだ、と感激しました。

Q10 好きな作曲家は?

ヴェルディです。学生時代にいちばん聴いていたのがヴェルディのオペラ作品で、純粋に音楽が大好き。ヴェルディ作品のすごさは、楽譜に書いてあるとおりに歌えばドラマが完成するところ。考え抜かれたスコアです。

昨年《さまよえるオランダ人》にゼンタ役として出演したこともきっかけに、ワーグナーの魅力にも目覚めています。じつはこの作品で初めてワーグナーに触れたのですが、いざその世界に入ってみると音楽が雄弁で、すごく興味深いです。これからどんどんその魅力に浸かっていきたいです。

Q11 今後、挑戦してみたい役は?

ヴェルディでは《仮面舞踏会》のアメーリア役と《イル・トロヴァトーレ》のレオノーラ役、そしてプッチーニ《トスカ》のタイトルロール、ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》のイゾルデです。ドラマティックで衝撃的なラストを迎える役に惹かれます。そして自分自身でも、そういう役が合っていると感じるというか、演じている想像がつくのです(笑)。

Q12 憧れのアーティストは?

アンナ・ネトレプコさん(S)です。学生時代にいちばん聴いていたCDが“ネト様”の歌で、大学院の修了時には母親に卒業祝いとしてコンサートのチケットをプレゼントしてもらいました。ホールで360度どの席にいてもすばらしい響きを届けてくれて、楽曲ごとに役の感情がダイレクトに伝わってくる—— 一瞬で音楽世界に引き込む、ディーヴァたる雰囲気、その魔力に圧倒されました。

調べてみたら、ちょうど身長が私と同じくらいで、そこにも親近感を覚えています(笑)。

Q13 音楽をやめたいと思ったことはある?

いまのところ深刻にやめたいと思ったことはありません。歌いだすと、楽しくなってしまうので(笑)。

学生時代、オペラクラスの助演で来てくださっていた先生が、私によく『オペラ、やめないでね〜』と仰ってくださっていて、それがすごく頭に残っています。継続は力なりという言葉を信じてこれからも邁進していく所存です!

Q14 大切にしている言葉は?

恩師の丹藤麻砂美先生の「小さくまとまるな、もっと大きく自由に」という言葉です。先生は「いまはまだできないことがあってもよいから、とにかく歌いたいように歌いなさい」 と鼓舞してくださるのです。私は細かいテクニックの部分が気になってしまうのですが、そうなっているときに、いつもこの言葉が心をほぐしてくれます。

取材時、映画『国宝』についての話題も。「歌舞伎とオペラの文化は違いますが、『人生をかけた闘い』を目の当たりにして、同じ舞台に立つ者として襟を正される思いがしました」と感想を話してくれた

音楽を通じてつながりたい

Q15 1日休みがあったら、なにをしたい?

全然知らない温泉へ日帰りで行ったり、行ったことのない遠くの公園で紅葉を眺めたりしたいですね。仕事のスイッチをオフにして、なにもせず、ポカーンと過ごしたいです。

Q16 最近ハマっている本は?

『マードル』(G・T・カーバー 著、千葉敏生 訳)というミステリーパズルの本です。移動中や練習の合間に論理パズルを解くことで、音楽から離れて頭をリセットできます。謎解きが好きで、「謎解きイヴェント」にもよく参加しています。

Q17 趣味は?

犬を2匹飼っているのですが、ワンちゃんたちと一緒にカフェへ行くのが好きです。愛犬も「カフェ」という言葉を覚えていて、「早く支度しなさいよ」と催促してくるほどです。

Q18 会ってみたい作曲家は?

ヴェルディとワーグナー。二人は同い年で、互いにライヴァル視していたようですが「本当のところ、それぞれどう思っているの?」ときいてみたいですね。ですが、会ってみたいというよりは、生きているところを透明人間として見てみたい(笑)。彼らが、実際のところお互いの作品をどのように解釈しているのか、リアルタイムで脳内を覗いてみたいなと思います。

Q19 これまで音楽を続けてこられた理由は?

やっぱり好きだから、それに限りますね。 舞台はお客さまの存在あっての芸術であり、一人では成しえないもの。お客さまと音楽を通してつながる感覚が私はすごく好きなのです。たくさんの舞台を通して、みなさまと音楽を共有する体験を増やしていけたらよいなと思ってます。

Q20 20年後どうなっていたいですか?

「なぜ音楽を続けてこられたのですか?」と同じ質問されたとき、「やっぱり好きだったから、やめられなかったですわ」と笑って答えていたいです(笑)

ひとたびポージングをしていただくと、ガラッと空気が変わり、そこは舞台の世界……。取材時には一つひとつの質問に丁寧にお答えくださった中江さん。今後のさらなる飛躍に大注目です!
中江万柚子さんInformation
音夏 おんなつ

日時:7月25日(土)18時30分

会場:サントリーホール ブルーローズ

出演:樋口 達哉(テノール)、中江万柚子(ソプラノ)河原 忠之(ピアノ)

問合せ:info@onnatsu.com

詳細はこちらから

荒川区民オペラ第23回公演 ヴェルディ作曲 オペラ「椿姫」

日時:8月2日(日)14時

会場:サンパール荒川

出演:小﨑雅弘(指揮)、中江万柚子(ヴィオレッタ)、横山慎吾(アルフレード)、佐野正一(ジェルモン)、藤田真由(アンニーナ)、荒川オペラ合唱団、荒川オペラバレエ、荒川区民交響楽団、他

演出:澤田康子

詳細はこちらから

 

月刊誌『音楽の友』Information

『音楽の友』2026年2月号(1月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、中江万柚子さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!

「音楽の友」2026年2月号記事詳細はこちら

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