
演奏を科学でサポートする世界初の「トレセン」誕生!その革新的プログラムとは

このたび東京・五反田に、音楽家のための心身サポートと熟達支援を提供する、世界初の教育プラットフォーム「ミュージック・エクセレンス・トレーニングセンター(トレセン)」が誕生しました。これは、楽器演奏における身体の使い方の研究で世界の先端をいく古屋晋一さんが中心となって立ち上げたもの。およそ四半世紀にわたる研究をもとに、科学とテクノロジーを駆使した独自のプログラムが組まれています。この未来を先取りするような「トレセン」を訪れ、古屋さん及びチーフコーチに最新の設備やプログラム内容について伺いました。

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...
扉を開けると、2台のピアノと共に複数のカメラやディスプレイなどのハイテク機器が並ぶ空間が広がる。ここは古屋晋一さんが代表理事を務める一般社団法人NeuroPianoが開設した「ミュージック・エクセレンス・トレーニングセンター(以下:トレセン)」。
5年間にわたり実施されたピアノアカデミー*の成果を発展させ、音楽家のための身体教育とトレーニングに特化した世界初の施設だ。スポーツ界では、オリンピック選手を支えるトレーニングセンターや専門スタッフが存在する。一方で音楽家には、そのような仕組みがほとんどない。
「身体の故障やメンタルの不調によって演奏活動を断念する方は少なくありません。文化を持続させるためには、音楽家自身を支える仕組みが必要です」。そう語る古屋さんは、「文化のSDGsを実現したい」という。音楽家が心身ともに健やかに成長し、生涯にわたって演奏活動を続けられる環境づくりをトレセンは目指している。
*ピアノアカデミー:ソニーコンピュータサイエンス研究所が10代のピアニストを対象に、身体教育と芸術教育を包括的に提供するピアノ教育プログラム。現在12歳で活躍中のピアニスト・天野薫さんは修了生のひとり
演奏者自身も気づいていない身体の使い方を テクノロジーで可視化
核となるのが、古屋さんが研究と教育実践をもとに体系化した身体教育カリキュラム「PEAC(Physical Education for Artists Curriculum)」。「なぜその問題が起きているのか」という原因に着目したアプローチを行っている。それを支えているのが、長年にわたる研究とテクノロジーだ。レッスン室には、姿勢や重心移動、鍵盤の動きを計測するセンサーやカメラが設置され、演奏者自身も気づいていない身体の使い方を可視化できる。
別室にはAIを活用した練習システムを備えたピアノを設置。演奏すると、指先の向きや鍵盤への入り方などについて具体的なアドバイスが表示される。5年間のピアノアカデミーで蓄積された指導データを基に、一人ひとりに合わせたフィードバックが行われる仕組みだ。
さらなる別室には、「外骨格ロボット」と呼ばれる指のトレーニング装置が。指に装着すると、ロボットが自動的にトリルや特定の指の組み合わせを高速で動かしていく。その際、自発的な動きはまったく必要とされない。複雑な運動パターンが何の無理もなく繰り返し体験できるのだ。古屋さんは、「これは筋力トレーニングではなく、脳のトレーニング」だという。効率的な運動学習を促す研究から生まれた技術であり、長時間の反復練習だけに頼らずに技術習得が促される。今回は短時間の体験だったが、装置を外したあと、指の動きの軽さを実感した。

(古屋晋一:ソニーコンピューターサイエンス研究所 東京リサーチ リサーチディレクター、一般社団法人 NeuroPiano 代表理事、ハノーファー音楽演劇メディア大学 音楽生理学・音楽家医学研究所 客員教授、東京音楽大学 特任教授、他)
「PEAC」に基づくレッスンを体験! 具体的なアドバイスで音が驚くほど変わる
続いて体験したのが、「PEAC」に基づくレッスンだ。まず筆者がショパンのエチュードの一節を演奏。その後、チーフコーチの塩木ももこさんが背中側から小さなボールを当て、「これを押し返すように意識してください」と声をかけられる。ボールを押し返そうとすると、自然と腹部や胴体で身体を支える感覚が生まれる。その状態でもう一度演奏すると、驚くほど音の響きが変わった。同じフレーズを弾いているにもかかわらず、音に厚みが増し、楽器全体がよく鳴るようになったのである。塩木先生によれば、「下半身や胴体が安定すると、指先が自由になり、音も変わる」のだそうだ。
さらに指先の方向や鍵盤への入り方についてアドバイスを受けると、わずかな身体の使い方の違いが音に直結することを実感できた。そして何より印象的だったのは、「こういう音を出したい」というイメージを実現するための具体的な手段が示されることだった。

古屋さんは、「私たちがやりたいのは芸術表現を教えることではありません。どんな音を目指すのか、どんな表現をしたいのかを決めるのは、先生やアーティスト自身です。私たちは、その表現を実現するための身体の使い方や学び方を支えたいのです。フランス料理にたとえると、ヴィシソワーズ(ジャガイモの冷製スープ)を作るのは先生方の役割。その前にジャガイモの皮をむくことが、私たちの役割なのです」と話す。
演奏家が健やかに、豊かな表現を追求できる未来を目指すトレセン。取材を終えて強く感じたのは、ここで行われていることが「表現を支える」ということだった。その挑戦は、音楽家と音楽文化の未来を支える新しい一歩となりそうだ。
◆カリキュラムコース:演奏に必要な身体の基盤をつくる
スケール・アルペジオコース
和音・オクターブコース
芯のある響きコース
ラインをつくるlegatoコース
コースに含まれる内容:コーチング、トレーニング、コンディショニング、レクチャー動画、リモートサポート、独習支援
月額 :33,000円
システム登録料:11,000円(初回)
スキル診断 :別料金(16,500円)
コース期間 :6ヶ月(全12回)
◆短期集中コース:身体の壁を突破する短期集中プログラム
コースに含まれる内容:コーチング、リモートサポート
月額 :60,000円(PEACメソッド認定コーチの場合)
95,000円(古屋の場合)
システム登録料:11,000円(初回)
スキル診断 :別料金(16,500円)
コース期間 :全4回/3ヶ月
◆自習コース:AIシステムとの伴走で、練習の質を高める
コースに含まれる内容:レクチャー動画、独習支援
月額 :11,000円
システム登録料:11,000円(初回)
スキル診断 :別料金(16,500円)
※各コースの詳しい内容は「サービスガイド」を参照
◆施設
・Steinway&Sons 2台設置のレッスンルーム
・Shigeru Kawai SK-2L 設置の練習室
・計測/コンディショニング対応の環境を完備
◆住所:東京都品川区西五反田7丁目8番9号 ピュイ アン ピエールB(フィル・パーク西五反田)2F
最寄り駅:JR山手線 等 「五反田」駅 徒歩8分 (A2出口)/東急池上線「大崎広小路」駅 徒歩7分/東急目黒線「不動前」駅 徒歩11分
◆問い合わせ:contact@neuropiano.org
◆無料会員登録はこちら:https://www.neuropiano.org/jp/membership」
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