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2019.03.18
東京芸術劇場/特集「ホールでひとときを」

音楽ジャンルや舞台のカルチャーが交差する多彩なプログラム——池袋西口広場に立つ東京芸術劇場

新たな文化施設の建設が進む池袋西口で、中心的な存在なのが東京芸術劇場。オーケストラやオペラ、吹奏楽、ジャズなどの多彩な音楽や、さまざまな舞台芸術を発信している。世界に一つしかない回転式のパイプオルガンのコンサートを毎月1回ほど開催し、GWには赤ちゃんからシニアまで楽しめる「TACT FESTIVAL」(タクト・フェスティバル)を音楽と演劇の枠組みを越えて行なうなど、公共のホールとして広く創造発信するほか、2つのアカデミーを開設して人材育成にも努めている。

取材・文
山田治生
取材・文
山田治生 音楽評論家

1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

提供:(公財)東京都歴史文化財団
写真:ヒダキトモコ
写真上:コンサートホールの入り口がある5階からは、地下までの空間が見下ろせて圧巻。

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池袋駅西口から徒歩1分の広場に立つ東京芸術劇場。写真提供:東京芸術劇場

音楽と演劇の両輪で創造発信する

池袋にある東京芸術劇場は、東京都の文化施設である。音楽専用のコンサートホール、演劇・舞踊・ミュージカルなどに使われるプレイハウス、シアターイースト、シアターウエストの4つのホールを有し、そのほか、ギャラリーや展示スペースも併せもつ。2009年から野田秀樹が芸術監督を務め、演劇部門では野田色の濃いプログラムが組まれている。

音楽部門では、「海外オーケストラシリーズ」「東京芸術劇場シアターオペラ」「芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミー」「オルガン・ア・ラ・カルト」NEO-SYNPHONIC JAZZ at 芸劇」など、オーケストラ、オペラ、吹奏楽、ジャズなど多彩な公演が提供される。

話題性でいえば、「海外オーケストラシリーズ」におけるフィンランドの作曲家・指揮者エサ=ペッカ・サロネンと、1990年の芸劇オープニング公演以来のいちばん近しいフィルハーモニア管弦楽団による3公演20201月)、「東京芸術劇場シアターオペラ Vol.13」で振付家・ダンサー矢内原美邦が演出するオペラ《ラ・トラヴィアータ》(椿姫)20202月)であろう。

2019年1月に上演された「東京芸術劇場シアターオペラ Vol.12」のモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》の舞台。振付家・ダンサーの森山開次が演出し、日本語で上演された。©Hikaru.☆

はじめの一歩としてオススメなのは、東京芸術劇場が誇るパイプオルガンのコンサート。コンサートホールのオルガンは回転可能な2面に設置され、クラシック・デザイン面にはルネサンス様式とバロック様式の2台のオルガンがあり、モダン・デザイン面には19世紀から現代までの音楽に対応するオルガンがある。フランスのマルク・ガルニエ社製。

1215分から約30分の「ランチタイム・パイプオルガンコンサート」と、夜7時半から約1時間の「ナイトタイム・パイプオルガンコンサート」がある。

東京芸術劇場コンサートホール・ジェネラルマネージャーの鈴木順子さんは「世界でも一つの回転するオルガンです。毎月1回、ナイトタイムかランチタイムのコンサートがあり、できるだけたくさんの方に来てもらえるように低料金(夜は1000円、昼は500円)に設定しています」と語る。

東京芸術劇場コンサートホール・ジェネラルマネージャーの鈴木順子さん。
2つの面をもつ回転式のフランス製のパイプオルガンを備えたコンサートホール。写真のオルガンはフランス・シンフォニック様式の面。毎月1回のコンサートでは、必ずオルガンの回転が見られる。音響設計は永田音響設計事務所による。写真提供:東京芸術劇場
ルネサンスとバロック様式の面。写真提供:東京芸術劇場

2019年5月4~6日にはTACT FESTIVAL 2019(タクト・フェスティバル/TACT =Theater Arts for Children and Teens)が開催され、55日には鈴木優人&読売日本交響楽団「マサト先生のミュージック・エデュケーション・プログラム ~リズム! リズム! リズム!~」がある。

鈴木さんは「管弦楽入門のために久石譲さんが書いた『オーケストラシリーズ となりのトトロ』という曲があるので、フルオーケストラと温水洋一さんの語りを入れて、楽器紹介もします。また、鈴木優人さんが『ライヒを入れたい』と言っていたので、打楽器やピアノが活躍するスティーヴ・ライヒのオーケストラ作品を入れます。そして最後はラヴェルの《ボレロ》です」と語る。子ども向けのプログラムだが、大人も十分に楽しめそうである。

東京芸術劇場内は、ショップやレストランも充実している。

2階には、20186月にオープンしたばかりのカフェビチェリン メトロポリタンシアターがある。1763年にトリノで創業されたイタリアン・カフェの老舗。プッチーニやヘミングウェイが愛したという。看板メニューは店名でもあるチョコレートドリンク「ビチェリン」。

2階プレイハウスの隣りにあるカフェ「ビチェリン メトロポリタンシアター」。

しっかりと食べたいなら、同じく2階の本格的なイタリアン・レストラン「アル・テアトロ」。終演後に一杯飲んで感想を語り合いたいときは、1階にあるベルギービールカフェ「ベル・オーブ」がオススメ。また1階の「シアターアートショップ」ではアート・音楽系のグッズが買える。開演までのひとときを過ごすのもよい。

音楽をモチーフにしたグッズも楽しい「シアターアートショップ」。
1階のオープンスペースにあるカフェ「ベル・オーブ」。女性に人気のフルーツビールや自社輸入のベルギービール各種のほか、ベルギー料理やスイーツも魅力。

現在、東京芸術劇場に隣接する広場「池袋西口公園」(豊島区が管理)では、野外劇場を建設するための大規模な工事が行なわれている。クラシック・コンサートから演劇、イベントまで使える多目的ステージとして201911月完成予定。今後、東京芸術劇場との提携事業も予定されている。池袋駅西口前の風景が変わり、一層、音楽が楽しめる街となるだろう。

コンサートホール・エントランス前のアート広場の天井にあるフレスコ画。東京の名所がいくつも描かれている。
公演情報
「TACT FESTIVAL 2019」

日時: 2019年5月4日(土・祝)・5日 (日・祝)・6日 (月・休)

出演: 鈴木優人(指揮)、読売日本交響楽団(管弦楽)ほか

詳細はこちら

「ランチタイム・パイプオルガンコンサート」

Vol.132 2019年5月23日(木) オルガン:都築由理江 発売:3月20日(水)

Vol.133 2019年7月18日(木) オルガン:小野なおみ 発売:5月29日(水)

Vol.134 2019年9月26日(木) オルガン:安杏菜 発売:7月24日(水)

Vol.135 2019年11月14日(木) オルガン:森亮子 発売:10月2日(水)

Vol.136 2020年1月16日(木) オルガン:川越聡子 発売:11月20日(水)

Vol.137 2020年3月12日(木) オルガン:平井靖子 発売:1月22日(水)

[各回]11:15開場、12:15開演、12:45終演予定

料金:全席自由500円

詳細はこちら

「ナイトタイム・パイプオルガンコンサート」

Vol.26 2019年4月18日(木) オルガン:湯口依子 発売:2月20日(水)

Vol.27 2019年6月20日(木) オルガン:小林英之 発売:4月24日(水)

Vol.28 2019年8月29日(木) オルガン:原田靖子 発売:6月26日(水)

Vol.29 2019年10月17日(木) オルガン:フロリアン・パギッチュ 発売:

9月4日(水)

Vol.30 2020年2月13日(木) オルガン:新山恵理、合唱:The Metropolitan Chorus of Tokyo ※松下耕/東京芸術劇場 新作委嘱作品、世界初演 発売:12月25日(水)

[各回]18:30ロビー開場、19:30開演、20:30終演予定

料金:全席指定1,000円

詳細はこちら

「東京芸術劇場シアターオペラ Vol.13」オペラ《ラ・トラヴィアータ》(椿姫)

日時: 2020年2月22日(土)

出演: ヘンリク・シェーファー(指揮)、矢内原美邦(演出)、読売日本交響楽団(管弦楽)ほか

曲目: ヴェルディ『ラ・トラヴィアータ』

「海外オーケストラシリーズ」エサ=ペッカ・サロネン&フィルハーモニア管弦楽団

日時: 2020年1月23日 (木)・28日 (火)・29日 (水)19:00開演

出演: エサ=ペッカ・サロネン(指揮)、庄司紗矢香(ヴァイオリン)、フィルハーモニア管弦楽団(管弦楽)ほか

曲目
[プログラムA]ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲第1番、ストラヴィンスキー/バレエ音楽『火の鳥』 ほか

[プログラムB]ストラヴィンスキー/バレエ音楽『春の祭典』 ほか

[プログラムC]マーラー/交響曲第9番 ほか

 

問い合わせ: 東京芸術劇場ボックスオフィス Tel.0570-010-296(休館日を除く10:00〜19:00)

会場: 東京芸術劇場

東京芸術劇場

[運営](公財)東京都歴史文化財団

[座席数] コンサートホール1999席

プレイハウス834席+立ち見90人

シアターイースト272~324席

シアターウエスト195~257席

[オープン]1990年

〒171-0021

東京都豊島区西池袋1-8-1

[公演問い合わせ]0570-010-296(休館日を除く10:00〜19:00)

http://www.geigeki.jp/

取材・文
山田治生
取材・文
山田治生 音楽評論家

1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

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