イベント
2021.06.01
6月20日(日)京都市交響楽団

芥川賞作家・藤野可織のミステリアスな新作小説をクラシックと朗読で表現する演奏会

音楽と小説。聴覚や視覚、作品を楽しむ五感の場所は違うけれども、これらには「物語性を秘めている」という共通項がある。2021年6月20日、ロームシアター京都で行なわれる「京都市交響楽団×藤野可織 オーケストラストーリーコンサート『ねむらないひめたち』」は、音楽と小説の物語性を通して、新たな楽しみ方を発見する特別なコンサートになりそうだ。

桒田萌
桒田萌 ライター

1997年大阪生まれ。夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。音楽をはじめとする、幅広いジャンルで取材・執筆を行う。『まいどなニュース』『デイリ...

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「奇病」を描いたミステリアスな物語とフランス音楽

体が硬直して砂色の飴に覆われた人間があちこちに横たわる世界——これが「伝染病によるもの」と聞けば、現代の私たちの目にはリアルな世界に映ってしまう。

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これは小説家の藤野可織による『ねむらないひめたち』の物語。主人公はタワーマンションに住む小さな姉妹。父も母も昏睡状態に入ってしまった状態で、彼女たちはどう生き延びるのか。力強いサバイバル小説ではない。淡々と、しかしドラマチックに暮らしが描かれていく。

このストーリーに交差していくのが、ラヴェルやドビュッシーによるフランス音楽、またシベリウスやストラヴィンスキーによる作品だ。ミステリアスな藤野さんの筆致と、幻想的な音の広がりが交互に展開する。朗読と音楽による一体作品、これがどんな世界を紡ぎ出し、聴衆にどんな感性を生み出させるのか、まだ想像もつかない。

「今よりほんの少し未来の話を想定して書きました。眠り姫の物語をベースとしています」と話す藤野さん。彼女は京都生まれの芥川賞作家でありながら、自身も12歳までピアノを習い、クラシック音楽に親しんできたという。

この作品を書くにあたり、ロームシアター京都のメインホールを見学したという藤野さん。4階に上ったとき、「あまりにも高くて驚いた」そうだ。作品にはその感覚を取り入れ、「タワーマンション」「舞台」をキーポイントとなる場所に設定している。

「私は小説家なので裏方側の人間であり、舞台には縁が薄い気がしています。しかし時折劇場に足を運ぶと、いつも『今舞台にいる人々も、私と同じ時間を過ごす生身の人間なのだ』と驚くことがあります。そんな感覚も、今回の物語に表れているような気がしています」

「オーケストラとのコラボレーションは思いもしなかった組み合わせの仕事で、驚きました」と語る藤野さん。新作小説は新潮社発行「新潮」7月号(6月7日)に掲載予定。

音楽と小説の持つ「物語性」を引き出すコンサート

「伝染病」を扱っている点から、極めて現代的なテーマの物語であるように思える。予想もつかない事態に見舞われたとき、人々はどう動き、この状況を終えた世界に何が待っているのか。

「この物語は、現実を悲観するものではありません。主人公の姉妹は強く、しっかりと考えて、今を生き抜いている。作品を通して、音楽とともに切ない気持ちを誘うこともありますが、ポジティブな要素もあるのではないでしょうか」(ロームシアター京都 音楽事業担当部長 柴田智靖さん)

選曲は、藤野さんの持つ独特の世界観にマッチする音楽を、ロームシアター京都のメンバーが受け持ったという。
「フランス音楽はリズミカルでなく、くっきりしない浮遊感があり、『今自分はどこにいるのか』と感じさせる。これは藤野さんの作品の醸し出す、ファンタジーのように世界観を行き来する感覚にぴったりです」(柴田さん)

ロームシアター京都 音楽事業担当部長の柴田智靖さん。

京都市交響楽団を指揮するのは、三ツ橋敬子

三ツ橋さんは、初めて作品を読んだときに「結末を予想できないおもしろさ、ページをめくるごと衝撃を感じた」という。「奇病がテーマであるため、現代の世の中で私たちが抱えている人間的な感情と、姉妹たちの行動や思いを重ねて読みました」と感想を語る。

「今まで、音楽からインスピレーションを得て作られた朗読との共演経験はありますが、書き下ろし小説によるものは初めて。新作と既にある名曲をコラボレーションさせ、まったく新しい世界を生み出すのは、とても楽しみです。新たなファンタジーを指揮台から膨らませていきたいです」(三ツ橋さん)

取材会にて、リモートで参加する指揮者の三ツ橋敬子。

朗読は、女優や声優として活躍している川栄李奈が担当。京都市交響楽団の特別コンサートマスターである会田莉凡の出演も予定している。各分野の一線を走る女性たちが集結した。

物語で描かれるメインキャラクターも「女性」。藤野さんは「女性の自分だからこそ書けるものを」という思いから、もとより「女性」をテーマに多くの作品を書いてきた。独自の視点から描く女性の姿が、さらに作品に味わいを持たせている。

女優の川栄李奈。物語の朗読を担当する。

音楽と小説から物語を受け取ることで、聴衆の心の中にどんなストーリーが生まれ、そしてロームシアター京都にどんな世界が広がるのか。新たな融合が楽しみだ。

イベント情報
京都市交響楽団×藤野可織 オーケストラストーリーコンサート 「ねむらないひめたち」

日時: 2021年6月20日(日)14:00開演(上演時間:約2時間)

会場: ロームシアター京都 メインホール

指揮: 三ツ橋敬子

小説: 藤野可織

朗読: 川栄李奈

演奏: 京都市交響楽団(コンサートマスター:会田莉凡)

予定曲目:

ラヴェル:組曲《クープランの墓》より「プレリュード」、「フォルラーヌ」

ストラヴィンスキー:バレエ《カルタ遊び》より抜粋

ラヴェル:《スペイン狂詩曲》より「夜への前奏曲」、「マラゲーニャ」

シベリウス:悲しきワルツ

ドビュッシー(管弦楽編曲):3 つのジムノペディ 第 1 番

ドビュッシー:《夜想曲》より「雲」

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

★藤野可織ほか出演者によるトークも予定

主催: 京都市、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)

チケット料金(全席指定):
S 席 5,000 円、A 席 4,000 円、B 席 3,000 円、ユース S 席(25 歳以下)3,000 円

桒田萌
桒田萌 ライター

1997年大阪生まれ。夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。音楽をはじめとする、幅広いジャンルで取材・執筆を行う。『まいどなニュース』『デイリ...

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