3人の作曲家が物語と音楽をつないでピアノの絵本楽譜に!『ある日、オリーブの丘で』
埼玉県出身。DTPや自転車など専門誌の編集部を経て、音楽之友社に入社。2015〜2022年3月に編集部のWeb担当として、Webマガジン「ONTOMO」やオンラインシ...
そのタイトルにもあるとおり、この楽譜は、「ぼく」が友だちを探しに出かける冒険物語と、それに付ける音楽とを、3人の作曲家が順にバトンを渡しながら創作していったもの。全12曲の合間にお話と水彩画が挟まれ、絵本の世界に音楽を寄せたような形で一冊にまとまっている(実際の作業としては、でき上がったお話と音楽を想像しながら、絵本作家・イラストレーターの本間ちひろが絵を描いている)。
去る11月2日には、春畑・樹原・轟みずからがピアノを弾き、本間が朗読をする全曲初演&トークセッション「作曲家談話室 その3 『ある日、オリーブの丘で』できました!」が、カワイ表参道 コンサートサロン パウゼで開催。この模様は、11月20日(土)から12月19日(日)まで、Vimeoの配信で視聴できる。
トークで春畑が「本来、作曲家同士って仲が悪いんですよね(笑)」と言っていたが、思わず納得(?)してしまうくらい、ファッションも性格も作品も異なり、三者三様のキャラクターをもつ3人の作曲家。Facebookのコメント欄で会話がはずんだことが事の発端だそうで、そこから密にやりとりしながら2週間ごとにバトンタッチして執筆を進め、ピアノを教える人、学ぶ人の雑誌「ムジカノーヴァ」に1年ほど連載。
トップバッターの樹原が「弾く人が“これは私だ”と思ってくれるような、どこにでもいそうな子どもを主人公に」してやりとりを始めた。轟は、作曲家の大先輩2人との作品づくりに重圧を感じつつ、「何を書いても“そうくるんだ”とやさしく受けとめてくれた」と話す。トリを務める春畑は「話を広げるのは得意だけれど、最後に完結させるのは大変。でも、変な発想をしがちな私は、どこに行くのかわからないような、迷子になるような話を作ろうと思って」臨んでいたとのこと。
曲には、ストーリーの展開や情景が思い浮かぶような仕掛けが散りばめられている。
「ぼく」の友だちである鳥の鳴き声があちこちで聴こえてきたり、夜が明ける様子を延々と続く繰り返しで表したり、大きい謎の「ふさふさ」と一緒に戯れるキャラクターを左手を右手が追いかけるカノンで表現したり、その「ふさふさ」のモチーフを展開させたり……。
このような聴きどころを紹介したあと、お互いに意識したり共有したりしながら進んでいく初演での音楽は、聴き手にも少しの緊張感と新鮮な刺激をもたらした。
この音楽に、本間はさらに視覚的な世界観を加えた。「ムジカノーヴァ」誌の連載に寄せた挿絵は使わず、楽譜ではモノクロ印刷になることを踏まえたうえで、色彩豊かな水彩画を新たに描き下ろしている。会場にはギャラリーのごとく、カラーの原画が並べられ、その世界観に来場者からも感嘆の声が上がっていた。
本間は、「私は“自分が一番好きな音を決める”と思って聴いたら、前のめりになれた。専門家だけが語るのではなく、この曲でどの音が好き? なんで好きなんだろう? とピアノに心得がなくても、物語があることで会話に入れるのがいい」と語る。
絵本のようなピアノの曲集『ある日、オリーブの丘で』だからこそ、家族や友人と語り合いながら弾き合い、聴き合いをしてみたら、豊かなコミュニケーションが生まれるだろう。
演奏と語りで2時間近くにも及んだこのイベントの様子は、配信で視聴できるので、クリエイターたちの思いや音楽、朗読に、じっくりと耳を傾けてみては?
視聴期間: 11月20日(土)12:00~12月19日(日)23:57
配信プラットフォーム: Vimeo
出演: 樹原涼子、轟千尋、春畑セロリ
朗読: 本間ちひろ(絵本作家/イラストレーター)
料金: 4,000円
使用楽譜: 『お話と音楽のバトン ある日、オリーブの丘で』
配信の視聴はこちら
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