
サックス奏者・住谷美帆の音楽鑑賞:初めて聴くことでかえって作品の世界に深く没入できる

コンサートを聴くとき、どんなところに注目していますか? 予習はする? 初めて聴く曲や現代作品はどう楽しむ? 演奏家自身は、どんなふうに音楽を聴いているのでしょうか。
今回は、5人のアーティストに「鑑賞のヒント」についてアンケート。演奏家ならではの視点から、普段の鑑賞スタイルやコンサートをより楽しむためのこだわりや工夫を教えてもらいました。1人目は、サックス奏者の住谷美帆さん。

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
気になる楽器をひとつ選んでその音をなぞるように聴くのもおすすめ
Q1. ご自身が聴衆としてコンサートに足を運ぶとき、どんなことに注目して聴いていますか?
住谷美帆 演奏そのものはもちろん、ソリストとオーケストラ(あるいはピアノ)、カルテットの各楽器の音量バランスや、プログラム全体の構成にも注目しています。また、聴衆の層やホールの響きの特徴を捉え、それに応じてどのような工夫をして演奏しているのかも気になるところです。
さらに、曲中でブレスを取る位置や合図の出し方、立奏・座奏での体の使い方といった細かな点から、MCがある場合の話し方や速度、お辞儀や歩く速さ、目線に至るまで、演奏家のさまざまな振る舞いにも目を向けています。
何に注目して聴けばよいかわからないときは、気になる楽器をひとつ選び、その音をなぞるように聴いてみるのもおすすめです。

茨城県水戸市出身。東京藝術大学音楽学部器楽科を首席で卒業。卒業時にアカンサス音楽賞、安宅賞及び三菱地所賞を受賞。
2018年7月、スロヴェニアにて開催された第9回国際サクソフォンコンクールにて女性として初めて優勝。コンクール創立以来初の快挙を成し遂げた。また、アイオロス国際管楽器コンクール サクソフォン部門第2位、総合第5位、第34回日本管打楽器コンクール第2位等、受賞歴多数。
TV 朝日「題名のない音楽会」、BSジャパン「エンター・ザ・ミュージック」、日本テレビ「ヒルナンデス」、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」等メディア出演も多く、多方面より注目を集めている。
これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、藝大フィルハーモニア、シエナ・ウインド・オーケストラ等と共演しているほか、ソロでは、世界的ピアニスト イリヤ・ラシュコフスキーと共演。
近年は、フランス European University of Saxophoneや台湾や韓国でのマスタークラスの開催、イタリア・パレルモ音楽祭への出演、スロヴェニア国際コンクールの審査員を務めるなど、海外での活動も多い。2018年、1stアルバム『プロムナード』をキングレコードより発表。県の名声を高め、今後より一層活躍されるとして令和2年度茨城県知事奨励賞を受賞した。昭和音楽大学非常勤講師。〈ぱんだウインドオーケストラ〉メンバー。
先入観を持たずに楽しむためにあえて事前に音源を聴かないことも
Q2. コンサートに行く前に、演奏される曲について予習をすることはありますか?
住谷美帆 若い頃は事前に予習してからコンサートを聴くこともありましたが、現在は、知らない曲ほどあえて音源を聴かずに足を運ぶこともあります。初めて聴くことで、かえって作品の世界に深く没入できるからです。
ただし、まったく手がかりのない状態で聴くのではなく、演奏前にプログラムノートをよく読み、作品についてのヒントだけを得てから耳を傾けるようにしています。特にコンテンポラリー作品は、先入観を持たずに楽しむため、事前に音源を聴かないようにしています。
Q3. 初めて聴く曲や、少し難しく感じる現代作品などを楽しむためのコツはありますか?
住谷美帆 まずは、聴いて素直に感じたことを大切にしています。初めて聴く現代作品の場合は、細かなディテールを追うよりも、音楽の全体像や空間に広がる響きを楽しむようにしています。また、「すごい演奏だ」と評価するよりも、自分にとって「面白いか、面白くないか」という感覚を大事にしながら聴いています。
サクソフォンとピアノがどのように響き合っているのか感じて味わってほしい
Q4. 最近聴いたコンサートで、特に印象に残っていることや、思わず誰かに話したくなったような出来事があれば教えてください。
住谷美帆 9月17日にNHK交響楽団 × アウグスティン・ハーデリヒの演奏会に足を運びました。以前から一番好きなヴァイオリニストであるハーデリヒさんの演奏を、念願かなって生で聴くことができました。 実際にその音楽に触れた瞬間、演奏家を志した頃の気持ちが鮮やかによみがえり、とても懐かしく、感慨深い時間でした。
フランス南東部の町ギャップで聴いたヨーナタン・ラウティオラさんのリサイタルも心に残っています。前半ではサクソフォンの演奏を、後半ではサクソフォンアンサンブルをバックに歌を披露され、その幅広い音楽表現に驚きました。サクソフォン奏者でありながら、歌という異なる表現方法も自在に取り入れたステージがとても印象的でした。
Q5. ご自身の演奏会で、「ここはぜひ注目して聴いてほしい」「この瞬間を味わってほしい」と思うことはありますか?
住谷美帆 長年ピアノを演奏していた経験もあり、ピアノとのデュオでは、ピアノのペダルや弱音器を使ったときに生まれる響きを意識しながら、サクソフォンの音をどのように重ね、溶け込ませていくかを考えています。 それぞれの楽器の音を個別に聴いていただくというよりも、2つの楽器が1つの音楽としてどのように響き合っているのか、アンサンブルとして味わっていただけたら嬉しいです。
コンサート会場の空気感や時間の流れが魅力
Q6. 録音や配信ではなく、実際にコンサート会場で音楽を聴くことの魅力は何だと思いますか?
住谷美帆 コンサート会場でしか感じられない、その場の空気感や時間の流れが魅力だと思います。 実際に会場で聴くことで、音の細かなニュアンスや息づかい、音色の変化など、録音や配信では捉えきれないディテールまで感じ取っていただけると思います。
また、同じ曲、同じ演奏であっても、その日の会場の雰囲気やお客様との空気感によって、演奏は少しずつ変わります。その瞬間にしか生まれないライブ感や、会場にいる人と音楽を共有する感覚を味わっていただけたら嬉しいです。
日時: 2026年12月18日 (金)19:00 開演
会場: 浜離宮朝日ホール
出演: 住谷 美帆(サクソフォン)、阪田 知樹(ピアノ)
曲目:
ダリウス・ミヨー:スカラムーシュ Op.165c
フェルナンド・デュクリュック:アルト・サクソフォンのためのソナタ 嬰ハ調
阪田知樹:アルト・サクソフォンとピアノのためのソナチネ
阪田知樹:新作の小品(住谷美帆委嘱作品)
リヒャルト・シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18(サクソフォン版)
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