インタビュー
2026.11.03
特集「鑑賞のヒント」アーティストにアンケートFile.5

ピアニスト・金子三勇士の音楽鑑賞:作曲家が伝えたかったことと向き合う

コンサートを聴くとき、どんなところに注目していますか? 予習はする? 初めて聴く曲や現代作品はどう楽しむ? 演奏家自身は、どんなふうに音楽を聴いているのでしょうか。
今回は、5人のアーティストに「鑑賞のヒント」についてアンケート。演奏家ならではの視点から、普段の鑑賞スタイルやコンサートをより楽しむためのこだわりや工夫を教えてもらいました。5人目は、ピアニストの金子三勇士さん。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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開演前の雰囲気から楽しむ

Q1. ご自身が聴衆としてコンサートに足を運ぶとき、どんなことに注目して聴いていますか?

金子三勇士 演奏会の楽しみ方は、開演前から始まります。私は開場時からホールのホワイエに行くのが好きです。一人ひとりのお客様がどのような表情で入ってこられるのか、そこから期待感が伝わってくることがあります。

次に注目するポイントは、皆がホールに入り、席に座り、ベルが鳴り、照明が変わった瞬間。ここで会場全体が心地のよい静かさに包まれると、素晴らしいコンサートの予感!

演奏が始まると、その日のアーティストがどのような思いで作曲家と向き合っているのか、プログラム構成の意図や背景にあるストーリーについても考えます。私は奏者の個人的な表現やパフォーマンスよりも、まずは作曲家へのリスペクトがどの程度感じられるか、作品へ思い入れなどを探りたくなりますね。演奏家のそうした思いは不思議と音に現れるのです。

心に残るコンサートでは、演奏者が自身のすべてを作曲家と作品に捧げる世界観があり、会場の空気が止まり、時間までもがストップするような瞬間が生まれます。

金子三勇士(かねこ・みゆじ)
2008年バルトーク国際ピアノコンクール優勝。
6歳より単身ハンガリーに留学。11歳より飛び級でハンガリー国立リスト音楽院大学に入学、16歳で帰国した後、東京音楽大学付属高等学校に編入、清水和音、迫昭嘉、三浦捷子の各氏に師事。
これまでにゾルタン・コチシュ、シルヴァン・カンブルラン、ジョナサン・ノット、小林研一郎、広上淳一、山田和樹、鈴木優人など、国内外の名だたる指揮者と共演。オーケストラではハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団、NHK交響楽団などと共演。20ヵ国近く世界各地で演奏活動を行う。2026年には日本デビュー15周年を迎え、全国各地で記念コンサートを開催する。
キシュマロシュ名誉市民。スタインウェイ・アーティスト。
オフィシャルHPhttps://miyuji.jp/

作曲家がなにを伝えたかったのか考える

Q2. コンサートに行く前に、演奏される曲について予習をすることはありますか?

金子三勇士 学生の頃は勉強も含め、予習をして行くことが多かったです。しかし、最近ではその日演奏される曲目も把握しないままコンサートに出かけることも。事前準備をせず、先入観なしに当日の演奏を楽しみたいという思いが強くなったのかもしれません。

Q3. 初めて聴く曲や、少し難しく感じる現代作品などを楽しむためのコツはありますか?

金子三勇士 作曲家がこの作品を書いたときに、なにを伝えたかったのか。そう考えると、どのような音楽であっても当事者意識を持って聴くことができます。たとえかなり斬新なテイストの曲であっても、その背景には必ずストーリーがあり、思いがあり、何かしらの感情表現があります。これは音楽に限らず、現代アートの作品にも共通するのではないでしょうか。

先入観なく聴いてもらいたい

Q4. 最近聴いたコンサートで、特に印象に残っていることや、思わず誰かに話したくなったような出来事があれば教えてください。

金子三勇士 演奏を聴いて、自然と涙があふれてくる瞬間。自分が音楽家だと、なかなかそういう瞬間に出会えません。私がよく「泣いてしまう」のはクリスティアン・ツィメルマン氏のコンサートです。

Q5. ご自身の演奏会で、「ここはぜひ注目して聴いてほしい」「この瞬間を味わってほしい」と思うことはありますか?

金子三勇士 たとえ演奏される機会が多い有名曲であっても、伝統的な解釈を一度忘れていただき、先入観なく聴いていただきたいです。私は伝統的な演奏よりも、当時作曲家たちが思い描いた世界観、そして彼らがイメージしていたであろう解釈を大切にしています。その結果、時には聴き馴染みのない演奏になることもあります。

コンサートで一期一会の体験を

Q6. 録音や配信ではなく、実際にコンサート会場で音楽を聴くことの魅力は何だと思いますか?

金子三勇士 デジタル音や映像ではなく、五感、いや、六感? で味わう瞬間芸術の美しさ。生演奏でしか生まれない一期一会の体験があるからこそ、私たちはいつの時代もコンサートホールに出かけて行くのです。

いつでも、どこでも音楽に触れることができるテクノロジーがあるからこそ、その先には人から人に届ける生きた音楽が求められるのではないでしょうか。

出演情報
金子三勇士 ピアノ・リサイタル

日時: 2026年11月5日(木)13:30開演

会場:  横浜みなとみらいホール大ホール

出演: 金子三勇士(ピアノ)

曲目:
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 ハ短調 Op.13
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」 嬰ハ短調 Op.27-2
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 ヘ短調 Op.57
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

詳しくはこちら

プラハ交響楽団 ニューイヤー名曲コンサート

日時: 2026年1月15日(金)19:00開演

開場: サントリーホール大ホール

出演: トマーシュ・ネトピル(指揮)、金子三勇士(ピアノ)、プラハ交響楽団

曲目: 
ベートーヴェン:劇音楽『エグモント』序曲 Op. 84
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 Op. 73 「皇帝」
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op. 95 B. 178 「新世界より」

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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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