インタビュー
2026.10.23
特集「鑑賞のヒント」アーティストにアンケートFile.1

ヴァイオリニスト・中野りなの音楽鑑賞:各パートを順番に聴いて探検!

コンサートを聴くとき、どんなところに注目していますか? 予習はする? 初めて聴く曲や現代作品はどう楽しむ? 演奏家自身は、どんなふうに音楽を聴いているのでしょうか。
今回は、5人のアーティストに「鑑賞のヒント」についてアンケート。演奏家ならではの視点から、普段の鑑賞スタイルやコンサートをより楽しむためのこだわりや工夫を教えてもらいました。一人目は、ヴァイオリニストの中野りなさん。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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オーケストラの演奏会では指揮者に注目!

Q1. ご自身が聴衆としてコンサートに足を運ぶとき、どんなことに注目して聴いていますか?

中野りな やはり演奏そのもの、そして演奏家が表現する音楽を聴きますが、オーケストラのコンサートの場合は、まず指揮者の動きに注目することが多いです。私は奏者側の立場でもあるので、指揮者が音ではなく手や体の動きによって、その音楽をどのように解釈し、表現しようとしているのか、そしてどのように音楽を導いていくのかにとても興味があります。また、その指揮に対してオーケストラがどのように反応しているのか、どのような音を出しているのかを聴いていると、とても面白いです。

リサイタルや室内楽の公演の場合も似ていますが、作品をどのように解釈し、表現しているのか、また楽器同士でどのような掛け合いが行なわれているのかを聴きながら楽しんでいます。

中野りな(なかの・りな)
2004年生まれ。2021年第90回日本音楽コンクール優勝。2022年第8回仙台国際音楽コンクールにおいて、史上最年少の17歳で優勝、及び聴衆賞を受賞し大きな注目を浴びる。以降、国内主要オーケストラとの共演やリサイタル等演奏活動を本格的に開始し、現在最も将来が期待される若手ヴァイオリニストとして高い評価を得ている。
2023年4月より桐朋学園大学「ソリスト・ディプロマ・コース」に特待生として在学し、辰巳明子氏に師事。現在、ジュリアード音楽院の最も名誉あるKovner Fellowhipの奨学生として在学し、川﨑雅夫氏に師事している。
フォンテックよりプーランク、R.シュトラウスのソナタ他を収めたアルバムを2023年12月にリリース。ロームミュージックファンデーション2023年度及び2024年度奨学生。2025年度江崎スカラシップ生。
使用楽器:1702年製アントニオ・ストラディヴァリウス〈ライアル〉(一般財団法人ITOHより貸与)

予習する派? しない派? どちらにも楽しみ方がある

Q2. コンサートに行く前に、演奏される曲について予習をすることはありますか?

中野りな 何らかの予習をすることが多いです。音源を聴き流してみたり、時間があれば楽譜を見ながら聴いたり、あまり時間がとれないときにはYouTubeでスコア付きの動画を見ながらコンサート会場に向かうこともあります。

作品や作曲家については事前に調べることもありますが、コンサート会場に少し早めに行き、プログラムノートを読んで軽く予習することのほうが多いかもしれません。

ただ、予習ができなかったときであっても、むしろ何も先入観を持たずに作品を聴けるので、そのときならではの気づきもあり、純粋に音楽を楽しめています。

Q3. 初めて聴く曲や、少し難しく感じる現代作品などを楽しむためのコツはありますか?

中野りな 現代作品などで少し難しく感じる場合は、各パートに順番に意識を向けて、それぞれが何を演奏しているのか注意深く聴いていきます。そうすると、それまで聴こえてこなかった音も少しずつ聴こえてくるようになるので、未知の世界を少しずつ探検していくようで面白いです。

コンサートは一皿ずつ味わう料理のコースのように

Q4. 最近聴いたコンサートで、特に印象に残っていることや、思わず誰かに話したくなったような出来事があれば教えてください。

中野りな Aspen Music Festival and School(米コロラド州アスペンで毎夏開催される、コンサートや若手音楽家の教育プログラムで知られる音楽祭)で聴いた、レオニダス・カヴァコス(ヴァイオリン)とエンリコ・パーチェ(ピアノ)のリサイタルが、最近の中では特に印象に残っています。モーツァルトやフランクのソナタ、また私が今勉強しているベートーヴェンのソナタなどを含む、聴き馴染みのあるプログラムでした。これらの作品を二人が演奏している音源や動画も以前に聴いたり見たりしたことがありましたが、そのときの演奏は、それまでに聴いたどの演奏とも違い、さまざまな仕掛けやサプライズ、アイデアにあふれていました。

例えば、ベートーヴェンのソナタでは即興的な装飾音を多く加えながら演奏していました。まるで音楽が生命を取り戻したかのように、生き生きとしていてとても新鮮で、終始驚きながら、二人の演奏から生まれる音楽に魅了され続けていました。二人の掛け合いも絶妙で、聴いていてとても楽しく、「このコンサートに来て本当によかった」と、とても幸せな気持ちになりました。

Q5. ご自身の演奏会で、「ここはぜひ注目して聴いてほしい」「この瞬間を味わってほしい」と思うことはありますか?

中野りな まず、純粋に音楽を楽しんでいただきたい、と思っています。そして、一つひとつの作品に注目して聴いていただくことも嬉しいのですが、プログラムを考えるときには料理のコースを組み立てるように、全体の流れや作品同士の相性もたくさん悩みながら曲を選んでいるので、その全体のマリアージュも含めて楽しんでいただけたらと思っています。

また、共演者によって演奏解釈を少し変えてみたり、その方との演奏だからこその新しい表現に出会うこともあります。そのとき、その共演者との間に生まれる、化学反応のようなものも楽しんでいただけたら嬉しいです。

コンサート会場では、より自由に音楽を楽しむことができる

録音や配信ではなく、実際にコンサート会場で音楽を聴くことの魅力は何だと思いますか?

中野りな コンサートでは、その日、その場所でしか生まれない、何ものにも代えがたい特別な音楽体験ができると思っています。ホールの響きや音はもちろん、奏者からあふれてくるエネルギーを全身で感じることができます。

もちろん、録音や配信などで気軽に音楽を楽しむことができるようになり、本当に便利で素晴らしいことだと思っています。私もよくスマホで音楽を聴いたり、YouTubeで配信や動画を見たりしていますし、そこで音楽を聴いて感動することもよくあります。ただ、録音や配信では音量や画角などがコントロールされているので、自然と、無意識のうちに聴き方や見方もある程度導かれていることが多いと思います。

一方で、コンサートでは、自分が聴きたいように、見たいように、より自由にその音楽を味わうことができます。例えば、交響曲の中である奏者にソロパートがあった場合、配信ではその奏者がズームアップされることが多いと思いますが、コンサート会場では全体を見ることができます。もちろんその奏者に注目することもできますが、その裏で何が起こっているのか、指揮者に注目したり、他のパートを聴いたりすることもできます。そうすることで、録音や配信では気づかなかった新たな発見もあるでしょう。

このように、コンサート会場では、より自由に音楽を楽しむことができるのではないでしょうか。 時にはアクシデントもあり、必ずしも「完璧」な演奏ではないかもしれませんが、それも含め、その場の空気、聴こえてくる音、目に映る景色や表情、奏者や聴衆のエネルギー、そのすべてが、そのときにしか生まれない特別な時間をつくっていると思います。

出演情報
TOPPANホール ニューイヤーコンサート 2027

日時: 2027年1月8日(金)19:00開場

開場: TOPPANホール

出演: 中野りな(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、伊東 裕(チェロ)、北村明日人(ピアノ)、谷 昂登(ピアノ)

曲目: ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第3番 ハ長調 Op.2-3、ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第4番 イ短調 Op.23[中野、北村]、ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3[谷]、ベートーヴェン/ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.16[中野、田原、伊東、谷]

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