インタビュー
2026.10.22
特集「鑑賞のヒント」アーティストにアンケートFile.1

バリトン歌手・大西宇宙の音楽鑑賞:聴いたままの体験を大切に

コンサートを聴くとき、どんなところに注目していますか? 予習はする? 初めて聴く曲や現代作品はどう楽しむ? 演奏家自身は、どんなふうに音楽を聴いているのでしょうか。
今回は、5人のアーティストに「鑑賞のヒント」についてアンケート。演奏家ならではの視点から、普段の鑑賞スタイルやコンサートをより楽しむためのこだわりや工夫を教えてもらいました。1人目は、バリトン歌手の大西宇宙さん。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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リハーサルの様子など裏側を想像してしまうことも!?

Q1. ご自身が聴衆としてコンサートに足を運ぶとき、どんなことに注目して聴いていますか?

大西宇宙 オペラの演出が複雑だったりすると、「どんなリハーサルをしたのかな」と、裏側でどんなことがあったか、つい想像してしまうことが、職業病? としてあります。

たいていの「舞台のしくみ」はわかってしまうことが多いですが、それでも「これ、どうやってやってるんだろう?」と思わせてくれるのは新鮮な楽しみを与えてくれます。万人にお勧めできる鑑賞方法ではありませんが(笑)。

大西宇宙(おおにし・たかおき)
バロック、ベルカント、ヴェルディ、ヴァーグナー作品に至るまで、正統なスタイルと端正な美声、そして演技力と知性を兼ね備えたバリトンの逸材である。
武蔵野音楽大学及び大学院、ジュリアード音楽院修了。シカゴ・リリック・オペラにてデビュー。
オーケストラ声楽作品のレパートリーはバロックから現代曲まで幅広く、カーネギーホールにて《カルミナ・ブラーナ》、シベリウス《クレルヴォ》、《ドイツ・レクイエム》のソリストを務め、ベートーヴェン交響曲第9番のバリトン・ソロは定評がある。
オペラでは2019年にセイジ・オザワ松本フェスティバルにてルイージ指揮《エフゲニー・オネーギン》の題名役で日本デビュー以来、国内外で活躍。昨今では《ドン・ジョヴァンニ》、《コジ・ファン・トゥッテ》、《魔笛》 で高評され、ダラス・オペラ《ラ・ボエーム》マルチェッロ役、ミネソタ・オペラ《セビリアの理髪師》フィガロ役で絶賛された。
CDは「詩人の恋」(ピアノ:小林道夫)をBRAVO RECORDSよりリリース。
五島記念文化賞オペラ新人賞、日本製鉄音楽賞フレッシュアーティスト賞、ホテルオークラ音楽賞受賞、令和5年度 (第74回) 芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
公式ホームページ takaoki.com/

予習はしない派! 純粋にその体験を楽しむ

Q2. コンサートに行く前に、演奏される曲について予習をすることはありますか?

大西宇宙 まったくしないことが多いです。演奏家として多くの曲に触れ合って、コンサートにもよく通う身としては、「初めて聴く音楽」という経験がどんどん貴重になってきます。なので、あえて予習はしませんし、お客さんに予習をしてきてほしい、とも思いません。聴いたままの体験を大切にしていただけたらと思います。

Q3. 初めて聴く曲や、少し難しく感じる現代作品などを楽しむためのコツはありますか?

大西宇宙 難しい音楽こそ、専門的知識や玄人的なことは忘れて、純粋にその体験を楽しんでいただきたいと思います。もしその音楽が「美しい」と感じなくても、現代音楽はそうした複雑で不可解な感情を呼び起こすこと自体が、作曲家や演奏家の「狙い」だったりしますよね。「初めて聴く」という体験はむしろ、作曲時の初演を追体験できるような貴重な経験だと思います。

舞台のすみずみに神経を研ぎ澄ませて

Q4. 最近聴いたコンサートで、特に印象に残っていることや、思わず誰かに話したくなったような出来事があれば教えてください。

大西宇宙 これを書いている旅路で、パレルモのマッシモ劇場でマスカーニの《カヴァレリア・ルスティカーナ》を鑑賞したところでした。若い頃から触れていたオペラですが、舞台となったシチリアの地で聴くというのは大変貴重な経験でした。

マッシモ劇場《カヴァレリア・ルスティカーナ》のダイジェスト映像

Q5. ご自身の演奏会で、「ここはぜひ注目して聴いてほしい」「この瞬間を味わってほしい」と思うことはありますか?

大西宇宙 オペラや舞台のよいところは、お客さんがステージのどこを観ていても何かが起きている、というところだと思います。

僕自身、舞台で起きていることすみずみに神経を研ぎ澄ませて、そのときに感じられたものにインスピレーションを受けながら自分の音楽を作っているので、そうした生の舞台ならではの楽しさを味わってほしいと思っています。

生の舞台ならではの立体感がある

Q6. 録音や配信ではなく、実際にコンサート会場で音楽を聴くことの魅力は何だと思いますか?

大西宇宙 音楽的にも視覚的にも、会場だけでしか味わえない「立体感」があると思います。最近は演奏会の映像も身近になりましたが、画面で見ている限りは、そこから得られるものは文字通り「平面」です。

でもステージでは、いろいろな方向から音が聴こえてきたり、座る場所によって見えるものが違ったりします。聴こえてくる方向や舞台の見え方もその時々によって変わるという、生の舞台ならではの感覚を一度は味わっていただきたいと思っています。

出演情報
全国共同制作オペラ「イル・トロヴァトーレ」

【大阪公演】日時: 2026年11月8日(日)14:00開演
開場: 枚方市総合文化芸術センター本館
詳しくはこちら

【東京公演】
日時: 2026年11月21日(土)14:00開演
会場: 東京芸術劇場コンサートホール
詳しくはこちら

出演:
レオノーラ :木下美穂子
マンリーコ :笛田博昭
アズチェーナ:谷口睦美
ルーナ伯爵 :大西宇宙
フェランド :田中大揮
イネス   :梨谷桃子
ルイス   :中井亮一

指揮:飯坂 純
演出:髙岸未朝
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
合唱:枚方シティオペラ合唱団

大西宇宙 バリトン・リサイタル with オーケストラ

日時: 2027年1月8日(金)19:00開演 

会場: 東京オペラシティコンサートホール

出演: 大西宇宙(バリトン)、ガエタノ・デスピノーサ(指揮)、ザ・オペラ・バンド (管弦楽)

曲目: 

R. シュトラウス:「憩え、わが魂よ」Op.27-1、「ツェツィーリエ」Op.27-2、「明日!」 Op.27-4
R.シュトラウス:歌劇『カプリッチョ』より 間奏曲(月光の音楽)
マーラー:『リュッケルト歌曲集』(全5曲)
ワーグナー:歌劇『ローエングリン』より 第3幕への前奏曲
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」より“夕星の歌”
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ
“あなたは私に手紙を書きました”
“あれがあのタチアナなのか”
ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロス」より第3幕への前奏曲
“私の最後の日”(フランス語版)

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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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