
ステュリアルテ音楽祭で、美しい歴史的パイプオルガンを聴く「オルガンの旅」開催

海外のクラシック界のニュースやコンサート、オペラ公演の様子を、現地在住の筆者がいちはやくお届け。今回はオーストリアの音楽シーンから、8月に開催された音楽祭のもようをレポートします。
オーストリアの夏を彩る音楽祭の現地レポート、今回は『音楽の友』2026年9月号で報じたステュリアルテ音楽祭の続報を。7月19日に、一日がかりでシュタイアーマルク州各地の町を訪れて同州のもっとも美しい歴史的なパイプオルガンのいくつかを聴く、「オルガンの旅」に参加した。
朝9時にグラーツ歌劇場の脇から出る参加者用のバスに乗り、向かった先はフュルステンフェルト。東に向かって50分ほどバスで走り、オーストリア最東部のブルゲンラント州まであともう少しという位置だ。
10時45分からアウグスティーナ・エレミーテン教会で、グラーツの著名なオルガン製作者ヨハン・ゲオルク・ミッテルライターが1724年に製作したオルガンの響きを聴いた。ヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンク、ジョン・ブルらの9つの作品中、タイトル通り光っていたのはオーランド・ギボンズ《アルマン:王の宝石》で、質素ながらも趣のある教会に、王冠の宝石の輝きが溢れたように感じられた。
バスに戻り、次はフュルステンフェルトから見て南西の方角にあるシュトラーデンへ。約1時間の道中になり、緑豊かな車窓の景色を楽しんだ。「教会山」、「天の山」などと呼ばれるシュトラーデンの丘の上には4つの教会が立っており、ほぼオリジナルのまま生き延びた二つのロココ様式のオルガンがある。
まずその一つ、17世紀に建てられた聖フローリアン教会にある、1776年に作られたオルガンを堪能したが、これはオルガン製作者クリスティアン・クレヴォによる唯一現存する作品と考えられている。ゲオルク・ムッファト《ガヴォット》やヘンデル《カプリッチョ》ヘ長調のほか、J.S.バッハの従兄でドイツ語による最初の音楽事典の著者でもあったヨハン・ゴットフリート・ヴァルターらの作品に触れられたのも興味深かった。
続けて同じ丘にある、1535年に完成された聖ゼバスティアン教会に移動して、1780年にルートヴィヒ・グレスが作ったオルガンを聴く。90人しか収容できない会場なので、参加者の約半数はその間にワイン付きの昼食を取り、1回目のコンサート後に入れ替わるというスケジュール。モーツァルト《ロンドンの楽譜帳》から「ソナタのフィナーレ」ヘ長調やハイドン《フルート時計》から「メヌエット」ハ長調 Hob.XIX:8がよく似合う小型のかわいいオルガンで、ほぼ真下に座っていたため鍵盤のカタカタいう音まで間近に聞こえた。
旅の最後に、ヨーロッパでもっとも大きく重要なオルガンの一つを聴く
再びバスで35分ほど、今度は西の方角にあるザンクト・ファイト・アム・フォーガウに向かったが、スロヴェニアのすぐ近くの道を通る本格的な「旅」となった。ザンクト・ファイト・アム・フォーガウ教区教会でのコンサートの初めには、この日すべての演奏をたった一人で受け持ったオルガン奏者ペーター・ヴァルトナーが、オルガンや曲について解説してくれた。

この教会の初期バロックのオルガン(17世紀、作者不詳)は、かつて有名な巡礼地マリアツェルのバジリカにあったもので、ヨーロッパでもっとも大きく重要なオルガンの一つだという。マリアツェルで処分されてしまうことなく、1753-56年の間にここに移されたのは幸いだった。
堂々たる音色によって奏でられたのは、ハンス・レーオ・ハスラー、ジョヴァンニ・ガブリエーリ、ジローラモ・フレスコバルディら7人の作曲家たちが書いた作品。最後を飾ったヨハン・カスパール・ケルル《バッターリア》(戦い)は、陣地を構える軍馬たちのギャロップに始まって、けたたましいトランペットのファンファーレや激しい剣の衝突音までを、色彩豊かに壮大に描写した。アンコール曲はティールマン・スザート《ダンサリー》から「ロンド第9番」。
北に向かって45分ほど走り、グラーツに戻って来たのは予定通り18時。シュトラーデンへのバスのなかではサンドウィッチが配布されたし、参加者を誘導するスタッフたちも親切で、この内容で91ユーロなら、早々に完売になったのもうなずける。音楽から歴史、建築、宗教、自然、食文化まで、オーストリアのあらゆる面を味わえる、すばらしい催しだった。2027年のステュリアルテ音楽祭は、6月25日~7月25日に「Phantastisch!」(ファンタスティック)の標語の下に開催される。





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