読みもの
2022.08.16
五月女ケイ子の「ゆるクラ」第5回 クラシック作曲家たちの恋愛事情編

作曲家たちの恋の修羅場~ドビュッシーとプッチーニ

クラシック音楽に囲まれる家庭環境で育ったイラストレーターの五月女ケイ子さん。「ゆるクラ」は、五月女さんが知りたい音楽に関する素朴な疑問を、ONTOMOナビゲーターの飯尾さんとともに掘り下げていく連載です。五月女さんのイラストとともに、クラシックの知識を深めていきましょう! 今回は恋愛事情編のなかから修羅場に注目します。

イラスト・執筆
五月女ケイ子
イラスト・執筆
五月女ケイ子 イラストレーター/脱力劇画家

山口県生まれ横浜育ち。幼い頃から家にクラシックが流れ、ロックは禁止、休日には家族で合唱するという、ちょっと特殊な家庭で育つ。特技はピアノ。大学では映画学を専攻し映画研...

お助けマン
飯尾洋一
お助けマン
飯尾洋一 音楽ライター・編集者

音楽ジャーナリスト。都内在住。著書に『はじめてのクラシック マンガで教養』[監修・執筆](朝日新聞出版)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシッ...

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恋多き作曲家たちが活躍した時代には、不倫って、わりと当たり前のことだったそう。上流階級の御夫人にとっては、結婚してからが自由恋愛の始まりで、才能あふれる作曲家との恋は、既婚女性のステータスだったのかもしれませんね。それゆえに、恋の修羅場は山のようにあったことと思われます。その中でもものすごいやつを飯尾先生にお聞きしました。

女性の敵!? 二人の恋人を自殺未遂に追い込んだドビュッシー

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修羅場界でも悪名高きドビュッシーは、彼の度重なる浮気のせいで、なんと二人の女性に拳銃自殺未遂をさせてしまいます。

しかも、そんな修羅場の最中に、浮気相手と愛の逃避行へ。そこで《喜びの島》という曲が作られるのですが、許されない恋だからこその盛り上がり感がすごすぎて、狂気すら感じるこの曲を、妻の立場で聴いたら、文春砲炸裂してしまえと願っても致し方ありません。

ドビュッシー《喜びの島》

でも、この一件で、友人たちはドビュッシーの元を去り、のちに結婚したその浮気相手は大の贅沢好きだったせいで、苦しく寂しい人生を送ったそう。

そこで飯尾先生が一言。「ザマアミロですよね」はい。私もそう思います。曲とかけ離れたダメ男っぷりにダメージが大きいです。

オペラのような修羅場が現実に起きたプッチーニ

20年付き合った末にようやく結婚できた妻がいるのに、プッチーニは女遊びがやめられません。嫉妬に狂った妻が、小間使いドーリアとの仲を疑い、いじめ抜いた挙句、なんと、服毒自殺させてしまいました。死後の調査でドーリアは処女と判明、まったくの濡れ衣だったというのです。

彼の作品には、悲劇に陥っても、自己犠牲の精神で、男を守って死んでゆく主人公が多いそうですが、そういう女性が彼の好みなのでしょうか。だとしたら、実生活で起きたオペラさながらの事件に、自己陶酔しつつ「これは使える」と、ちゃっかり芸の肥やしにしていたかもしれません。

修羅場をも糧にして名曲が生まれる?

ほかにも、別の人と結婚してしまった婚約者とその親を殺そうとピストルを買い、バレないように女装までして、追いかけ回したベルリオーズ。ゲイと言われていて、男性の恋人もいたのに、何を血迷ったか、女性と結婚したチャイコフスキー。案の定、ストレスでおかしくなり、自殺未遂の末、家をでてしまいます。作曲家の恋の修羅場を挙げたらキリがありません。

でもその修羅場さえも糧にして、世間の目も気にせず、胸を掻きむしるような感情を迸らせて、一途に自分の「好き」を貫いたからこそ、人々の心を揺り動かす名曲が生まれたとしたら、不倫とか許されない恋なんて、もう音楽にとっては、必要悪なのかも。

その陰で、彼らに振り回された女性たちのことを考えると、全力で「お疲れ様でした」と労いたい気持ちになりました。天国で女子会を開き、男たちをディスりまくって、憂さ晴らししてほしいです。

イラスト・執筆
五月女ケイ子
イラスト・執筆
五月女ケイ子 イラストレーター/脱力劇画家

山口県生まれ横浜育ち。幼い頃から家にクラシックが流れ、ロックは禁止、休日には家族で合唱するという、ちょっと特殊な家庭で育つ。特技はピアノ。大学では映画学を専攻し映画研...

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飯尾洋一
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飯尾洋一 音楽ライター・編集者

音楽ジャーナリスト。都内在住。著書に『はじめてのクラシック マンガで教養』[監修・執筆](朝日新聞出版)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシッ...

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