ベートーヴェンとお母さん
ベートーヴェンイヤーがやってきた! 年間を通して楽聖をお祝いする「週刊 ベートーヴェンと〇〇」シリーズ、スタート! さまざまなキーワードから、新しい作曲家像が浮かび上がってくるかも?
第1回は、ベートーヴェンとお母さん。意外と肝っ玉お母さんだったらしい?
東京郊外生まれ。著書『ベートーヴェンの愛弟子 – フェルディナント・リースの数奇なる運命』(春秋社)、『ベートーヴェン捏造 – 名プロデューサ...
しっかり者のお母さん、マリア・マグダレーナ
ベートーヴェンの伝記は、たいがい、息子にむりやり楽器を弾かせようとするお父さんと、それを止められずにおろおろするお母さん……というシーンから始まります。40歳という若さで亡くなったことも手伝って、ベートーヴェンのお母さん=かよわい薄幸の女性、というイメージをもっている方も多いのではないでしょうか。
ところが、実際のお母さん──マリア・マグダレーナは、実は意外と気が強く、しっかり者の女性だったようです。ボンから約60キロ離れた小さな町、エーレンブライトシュタインで宮廷料理長の娘として生まれた彼女は、最初の夫とわずか2年で死別。その後、ベートーヴェンのお父さんヨハンと結婚し、ボンに移り住みました。
当初は義父(ベートーヴェンのおじいちゃん)から結婚を反対されていた彼女ですが、芯のある性格が気に入られて、だんだんと打ち解けるように。
ベートーヴェンが13歳のころ、ライン川が氾濫してボンじゅうが水浸しになったときには、「これくらいの水で怖がることはないわ」と言っておびえる住人たちを励まし、先頭に立って救出作業にあたったとか。酒飲みの夫に悩まされるいっぽう、ご近所さんからは人気者だったとも伝えられています。
ベートーヴェンはのちにオペラ《フィデリオ》で、夫を監獄から救い出す男装のヒロイン「レオノーレ」を描きました。ひょっとしたらベートーヴェンは、お母さんの勇姿をレオノーレに重ねていたのかもしれません。
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