パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌2021を現地と配信で楽しむ

PMFが帰ってくる。札幌の夏には、やはりこのフェスティバルが必要だ。

1990年夏、20世紀を代表する音楽家レナード・バーンスタイン（1918～1990）の感動的なスピーチと渾身のタクトに導かれ、国際教育音楽祭パシフィック・ミュージック・フェスティバルPMFは歩み出した。

先日も、レニーことバーンスタインの熱きオーケストラ・リハーサルの模様がNHKでオンエアされ、PMFの美学・理念、実践にあらためて関心が寄せられたところである。

PMFは出逢いの場を創った。名演奏は数知れない。札幌から世界のステージ、オーケストラ、オペラハウスに羽ばたいた若者も多い。

そう、このフェスティバルには30年を超える歴史で培った音楽的な財産がある。

この夏、PMFオーケストラJAPANが結成され、フェスティバルの顔となる。日本在住のPMF修了生、音楽大学や大学院に在籍中の俊英、プロオーケストラの首席奏者による「一期一会」のアンサンブルだ。

マエストロにも人を得た。「最適任者がやってくる」が正しい。コロナ禍のオーケストラに手を差し伸べ、評価も人気も高めた原田慶太楼が、改装された札幌コンサートホールkitaraでのPMF2021＜オープニング・コンサート＞と同内容の＜札幌公演＞を任され、バーンスタイン、ガーシュウィン、コープランドに腕を揮うことになった。

原田慶太楼は1985年東京生まれ。ミシガン州の音楽芸術高校でブラスの匠フレデリック・フェネルに学び、昨年から米ジョージア州サヴァンナ・フィルハーモニックの音楽・芸術監督に就任。東京交響楽団正指揮者としての活動も始まったMo（マエストロ）Keitaro Haradaが惜しげもなく十八番を披露するわけだが、実は彼、すでにPMFのステージを経験している。

最初は2011年のPMF＜コンダクティング・アカデミー＞の優秀な若手指揮者として、その後2016年、2018年にも招かれた。颯爽としたバーンスタインの人気作、表情豊かだったチャイコフスキーのバレエ、オペラ・アリアなどを思い出す。

今年の開幕、PMF再開を寿ぐのは、原田慶太楼でないと駄目なのである。ニューヨークの息吹を知りジャズとも相愛のピアニスト三舩優子、2年ぶりの登場となるコンサートマスター郷古廉（ごうこ・すなお）の出演も喜ばしい。ソロも素晴らしい郷古！

そして、名物＜ピクニックコンサート＞と＜GALAコンサート＞を任されたライジングスターに喝采を。

日仏の国際指揮者コンクールで認められ、今ベルリン・フィルのキリル・ペトレンコのアシスタントを務めている沖澤のどかと、人気ヴァイオリニスト三浦文彰も、PMFオーケストラJAPAN同様、2021年の華だ。こちら2公演のコンサートマスターはNHK交響楽団で長く首席奏者を務めた永峰高志が迎えられる。これも国際教育音楽祭ならではの好ましいキャスティングだ。

今年は——初の事業ながら——デジタルコンテンツ＝動画配信がきわめて充実。家に居ながらにして、PMFファカルティ（教授陣）の室内楽のほか、前述の各種豪華コンサートが楽しめる。

有料配信では、オープニングコンサートやピクニックコンサートといったPMF の“名物”を試聴することができる。無料コンテンツで公開されるのは、修了生による演奏動画ギャラリー「PMF Connects」やPMFアカデミー・オンライン・マスタークラスなど。

有料配信、ライブ、オン・デマンドを、思い思いのスタイルで行き来するのも音楽好きの「特権」で、これは大きな、好ましい話題を呼び起こす。