インタビュー
2022.10.27
2023年にショパン国際ピリオド楽器コンクール開催! 課題曲の意図などが明らかに

古楽器でショパンを演奏する魅力とは? ピリオド楽器コンクール発案者にインタビュー!

ショパン国際ピリオド楽器コンクールは、ショパンが生きた時代のピアノを用いたコンクールとして、2018年に初めて開催され、2023年には第2回が開催されます! ピリオド楽器(古楽器)での演奏には、どんな魅力があるのでしょうか? また、モダンピアノのショパンコンクールでは、課題曲はすべてショパンの作品でしたが、なぜほかの作曲家の作品も取り上げられるのでしょうか? ピリオド楽器コンクールの発案者のスタニスワフ・レシュチンスキさんにメールインタビューで語ってもらいました。

三木鞠花
三木鞠花 ONTOMO編集者

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...

第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールより
写真提供:ポーランド国立ショパン研究所
©️Wojciech Grzedzinski

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

バッハとモーツァルトの作品はレントゲンのように一音一音が「見える」

続きを読む

——第1ステージではバッハとモーツァルトが課題曲に入っています。モダンのコンクールと違い、ショパン以外の作曲家を入れることで、どのようなことがわかりますか?

レシュチンスキ まず、19世紀前半に製作されたピリオド楽器演奏の特徴について、お話しします。一般に言われているよりも、ピリオド・ピアノは、モダン楽器に比べてより豊かで多彩な音色を奏でることができます。世界で名だたるピリオド・ピアノなら、なおさらです。

いい状態で、古楽器の修復作法にのっとってきちんと保管されたピリオド・ピアノには、それぞれに別格の魅力的な音の世界があります。現代の「演奏マシーン」とは対照的に、ピリオド・ピアノは、ピアニストが触れるたびに、とても洗練されたリアクションをしてくれます。1台1台に、複雑な「人間性」があるのです。音域が異なるから、雰囲気もがらりと変わります。荒々しい奏法は受け入れてくれませんし、適切でない見せびらかすような演奏—芸術的ではない演奏、巧妙さと言ったほうがいいでしょうか—もご法度です。

ピアニストが楽器の秘密を認識していないと、コントロールできなくなり、たちまち元気でやんちゃな子どものようになり、まったく理解できなくなってしまいます。演奏者が楽器を従わせることはできないのです。

スタニスワフ・レシュチンスキ
音楽学者、評論家、ジャーナリスト、マネージャー、教員。ワルシャワ音楽大学で学んだのち、レコード会社やワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団でのプログラム企画を歴任し、ポーランド音楽のCD制作にも尽力。1984〜2007年にはワルシャワのショパン音楽大学で教鞭をとる。ポーランド国立ショパン研究所が主催する「ショパンと彼のヨーロッパ」音楽祭ではディレクターを担い、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの創始者でもある。

レシュチンスキ ショパンの作品だけでは、ピリオド・ピアノを演奏する力量を十分に審査できるとは言えません。例えば、演奏が完璧ではなかったときに、その要因を素早く判断することができないからです。音楽性が乏しいせいなのか、楽器についての知識や技術が足りないせいなのか、わかりかねます。

バッハやモーツァルトの音楽は、形式が明確で規則性があります。演奏しているピアノから発せられる音には、複雑な問題が潜んでいるので、バッハやモーツァルトだと、それをどう処理するのか、ピアニストの手腕が非常にわかりやすいのです。さらにいうと、ショパンの作品がもつ「ポエティック」や「ロマンティック」の陰に「隠れる」ことができません。

バッハやモーツァルトの幻想曲は、自由な演奏が許される作品ではありますが、それでもバロック音楽のレトリックに基づいて書かれているため、作曲家が音楽で形作ったものは、ピアニストにとって、レントゲンのようなものです。一音一音がクリアに「見える」し、だからこそ、明確に評価の根拠となります

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ