気鋭のオルガニスト中田恵子が挑むパイプオルガン×バレエの融合！一流の振付・ダンサーと共に

――中田恵子さんの新シリーズ「オルガンavec」は、初回からバロック・アンサンブルとの共演という画期的な企画でした。今回の第2弾はバレエとの共演ということで、こちらもまた、これまで体験したことのない舞台となりそうです。

オルガンには足鍵盤があり、演奏している姿はまるで踊っているかのようで、舞踊とも相性がよいのではないでしょうか？　現在、舞台への準備が進んでいることと思いますが、オルガン音楽と舞踊の組み合わせについて、感触はいかがですか？

中田　客席からオルガンがよく見えるという、小ホールの舞台の特性を活かした企画をやってみたいといつも試行錯誤しています。

バレエは大好きなのですが、ピットに入ったオーケストラの演奏を伴う時、当たり前ですがバレエに目がいくので、音楽に関して言えば、音楽だけを聴く「演奏会」とはまた聴き方が変わってくるのかなと思います。

舞台上にあるオルガンで、視覚的にもバレエと相互に交わる舞台を作ってみたいと思い今回の企画を考えました。演奏を通してリズムを刻む私の中にある体感は、きっとダンサーの皆さんが踊る感覚にも通じるものがあるのではないかと思います。遠藤康行さんの演出によって、その相互作用がさらに面白く出る舞台になると感じています。

――プログラムは14世紀からスタートし、徐々に時代が進んで20世紀に至る14曲からなります。選曲はどのようにされたのでしょうか？　

また、曲が書かれた年代によって、舞踊のスタイルも変化していくのでしょうか？　

中田　プログラム最初の「エスタンピー」は、現存する最古の鍵盤楽器のための楽譜が収められた『ロバーツブリッジ写本』に入っているのですが、この曲は元々踊りのための音楽だったと言われています。音楽は、古代に始まったとされる踊りの歴史と共に、その傍にずっと存在してきたのではないでしょうか。

第1部では「エスタンピー」に始まり、現代曲に至るまでの音楽の歴史をオルガンで辿ります。舞踏に関しては、その音楽の歴史を現時点から振り返り浮かぶインスピレーションを基に、遠藤さんが振付してくださっています。

第2部は、全体を通してどこかストーリー性がある舞台になるように曲を選びました。バレエ音楽をオルガン用に編曲した作品もあれば、オルガン作品で「これはバレエと合うだろう」と考えて入れた曲もあります。バレエ音楽の方は、遠藤さんと相談しつつ決めました。またオルガン作品の方は、バレエとやったら視覚的にも面白いのではないか、と思いペダルだけで演奏する曲（アルカン「ペダルのための練習曲」）を入れたりもしました。

プログラムから、遠藤さんがイマジネーションを膨らませて、人間の内面にフォーカスした表現を考えてくださっています。何か具体的なストーリーがあるというよりは、誰しもがそれぞれの心に持つ「物語」を自由に創造していただける、そんな舞台になるのではと思います。

――ゲストダンサーに新国立劇場プリンシパルの渡邊峻郁さんを迎えます。渡邊さんに白羽の矢を立てた理由は？

中田　渡邊峻郁さんは、遠藤さんにご紹介していただきました。新国立劇場でもお仕事をされている遠藤さんは、渡邊さんと何度も共演されています。クラシックにもコンテンポラリーにも精通されており、創作に臨む情熱も素晴らしいとのことで、今回の舞台でご一緒できるのを本当に光栄に思っています。遠藤さんも渡邊さんも私もフランスで学んだという共通点があり、舞台を作り上げていくのにお互い共感できる部分があるのではと、そこも楽しみにしています。

――最後に、お客様へのメッセージをお願いします！

中田　昨年から始めたこの「オルガンavec」シリーズは、私にとって挑戦で、常に期待と「やってみないと分からない」スリルと共にあります。見たことのない舞台を実現する瞬間に、皆様に立ち会っていただけたら嬉しいです。オルガンとバレエの融合、楽しんでいただけるよう精一杯頑張ります！