レポート
2026.09.15
初のオーケストラとの単独リサイタルへの挑戦

大西宇宙がデビュー12年目の節目に、2027年1月のオーケストラとのバリトン・リサイタル開催

アメリカでデビューして今年で12シーズン目を迎えるバリトン歌手の大西宇宙が、2027年1月8日に初めてオーケストラとの単独バリトン・リサイタルを行う。9月8日に記者会見をひらき、これまでの歩みを振り返りながら、昨年40歳を迎えた大西がバリトン歌手としての「第2章」とうたったコンサートへの想いを語った。

音楽の友 編集部
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1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

9月8日の記者会見から
©Taira Tairadate

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ジュリアード音楽院から始まった歌手人生

大西宇宙のキャリアの出発点はジュリアード音楽院での学びにある。武蔵野音楽大学・大学院を修了後、幅広いレパートリーを開拓したいという思いから留学先をアメリカに決め、ジュリアード音楽院の公式オーディション「IFAC・ジュリアード音楽院声楽コンクール」で最優秀賞を受賞し、ジュリアード音楽院に進学。世界から人々が集うジュリアード音楽院ではたくさんの出会いがあったという。

「ジュリアード音楽院の周りには、メトロポリタン歌劇場(MET)やニューヨーク・フィルハーモニックの本拠地など、ニューヨークを代表する団体が集結しています。それらに出演している歌手たちやMETのディクション・コーチなどが教えに来てくださることもあり、とても恵まれた環境で学べました。ニューヨークは『人種のるつぼ』といわれるように、さまざまな人種の人たちがいるからこそ、アメリカにいながらヨーロッパの伝統に触れることができ、実践的なトレーニングを受けました。アメリカの多くの声楽家たちは音楽院卒業後に劇場が主宰する『ヤング・アーティスト・プログラム』(若手研修所)に入ることを目指すのですが、そのなかで私はシカゴ・リリック歌劇場のオーディションを受けて、入団することができました。イタリアの古い伝統を受け継いでいるシカゴ・リリック歌劇場では、数々の公演を通して第一線で活躍するプロたちと共演させていただき、私にとって大きな財産になりました」

大西は自身のキャリアについて、《エフゲニー・オネーギン》を例にさまざまなつながりがあったと振り返る。

「ジュリアード音楽院在学中に《エフゲニー・オネーギン》の主要キャストを務める機会がありました。その後、シカゴ・リリック歌劇場2シーズン目にはタイトルロールの代役を務め、2019年のファビオ・ルイージ指揮によるセイジ・オザワ松本フェスティバルでは、タイトルロールで日本デビューを果たしました。このようにキャリアの連なりを考えると、起爆剤があったというよりも線でずっとつながっていたと感じます」

今回初めて自身の会見をひらいた大西。幼少の思い出からいまの活動まで盛りだくさんの内容を語ってくれた
©Taira Tairadate

大西宇宙のこれまでとこれからを表す多彩な作品

今回のリサイタルでも大西が大事にしてきた、人とのつながりが発揮されている。指揮を務めるガエタノ・デスピノーサは、ドレスデン国立歌劇場のコンサートマスターを務めていたが、同じくルイージの推薦をきっかけに2008年以降は指揮者として活躍。大西とは、2022年の新国立劇場「愛の妙薬」で初共演し、以後大西にとってデスピノーサはメンターのような存在だと語った。そのデスピノーサと、管弦楽「ザ・オペラ・バンド」とともに、3年近くかけて構想した渾身のプログラムを披露する。

「今回のプログラムでは、若いときの溌剌としたレパートリーから、40歳代を迎えて、よりキャラクターの深みに向き合っていきたい作品を選びました。マーラー《リュッケルト歌曲集》を軸に、作曲家自身がオーケストレーションを行ったR.シュトラウス《ツェツィーリエ》、《明日》などを取り上げます。私の歌手人生の転機となったチャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》からの作品や、ワーグナー、ヴェルディなど、これからの人生で取り組んでいきたい作曲家の作品も歌いたいと思います」

いまバリトン歌手としての転換期を迎えているという大西は、今後取り組みたい作品や、活動についても語ってくれた。

「バリトンのおもしろいところは、年齢によって歌えるレパートリーが変わってくるところです。年齢や経験を重ねないと出せないキャラクターの深みがあり、声楽家ならではの特徴かもしれません。そのような点から、これまで歌うレパートリーを慎重に選んできましたが、最近ようやく40歳代に差し掛かり、円熟したキャラクターを解禁し始めています。正しいテクニックで歌い続けていると、おのずと歌うべき曲が見えてくるのではないかと思っていますが、《リゴレット》や《ドン・カルロ》のタイトルロールなどをやってみたいですし、レパートリーとは別にキャラクターの深みをさらに掘り下げていきたいです。

また、自分が学んだことを共有するというかたちで、少しずつ教える活動もしています。生の劇場の経験をしている人はすごく少ないと思うので、プロを目指している若い人たちに、自分の活動を通じて刺激を与えられればと思っています」

大西の新たな幕開けとして開催する貴重なオーケストラとの協演や、今後の活動に期待が深まる。

公演情報
大西宇宙バリトン・リサイタル with オーケストラ

日時・会場:2027年1月8日19時・東京オペラシティ コンサートホール

出演:大西宇宙(Br)、ガエタノ・デスピノーサ(指揮)、ザ・オペラ・バンド

曲目:R.シュトラウス《ツェツィーリエ》、マーラー《リュッケルト歌曲集》から、ワーグナー「歌劇《タンホイザー》」から〈夕星の歌〉から、他

問合せ:ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212

詳細はこちらから

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