武満徹さんとサイコロ

今年は武満徹生誕90年。先日ギターの荘村清志さんに武満作品による公演についてお話を聞きました。武満さんがギター曲を書くようになったのは、若き日の恐れ知らずな荘村さんが、「世界のタケミツ相手に、誰の紹介もないのに」曲を書いて欲しいとアタックしたことに始まるそうです。

武満さんは若い荘村さんの演奏はもちろん、人柄にも関心を持ったのでしょう。よく呼び出しては一緒にお酒を飲み、麻雀をしたといいます。

荘村さんから伺った数々の思い出のうちなぜか記憶に残ったのは、その麻雀のエピソード。親を決めるために振るサイコロがない、別のもので代用しようとなった折、サイコロのない麻雀なんて絶対にイヤだ！ と、武満さんが30分くらい駄々をこねた、というのです。想像するとおもしろい。そんな少年のような人だからこそ天才的な作品が書けたのだろう、と荘村さんはおっしゃっていました。

そんななか、パーヴォ・ヤルヴィ＆N響による武満アルバムが届きました。パーヴォさん念願の録音だそうで、研ぎ澄まされた音楽が収められています。しかしこのジャケットのお写真、サイコロがなくてご機嫌ななめな武満さんに、どうしても思えてしまう。