審査員コッホが語るショパンとコンクール「ピリオド楽器演奏の世界は聴覚上の大冒険」
2023年10月に開催される第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで審査員を務めるトビアス・コッホにインタビュー! ピリオド楽器演奏や即興について哲学的な答えが炸裂! このコンクールの楽しみ方についても教えてもらいました。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ピリオド楽器やその演奏を通して過去を振り返ることは数多くの可能性をもたらしてくれる
——ピリオド楽器によるショパンコンクールを開催することに、どのような意義があるのでしょうか?
コッホ 私たちがスタインウェイ、ヤマハ、ベーゼンドルファー、ファツィオリといった現代の素晴らしい楽器で聴いているのは、ショパンの時代のものとは異なる部分もあると思います。ショパンの音楽美学は、プレイエルやグラーフ、エラール、ブロードウッドといった楽器と密接に関わっているからです。
美の概念は時の流れとともに変化し、今と昔で大きく違っています。そのため、私たちは「いかに失われた音楽文化と向き合うのか?」、「どんな橋を自分たちの音楽や文化との間にかけるのか?」といった疑問を抱くのです。そういった疑問こそが、このコンクールのスタート地点です。過去、現在、未来についての問いが立てられています。解釈する者が、一人ひとり、自分の力で答えなければなりません。私は、それが若手音楽家にとって極めて大切なことであると思っています。
ドイツ出身。デュッセルドルフのロベルト・シューマン音楽院を卒業後、ウィーン、グラーツ、ブリュッセルで学ぶ。ピリオド楽器奏者として評価を高め、ヴェルビエ音楽祭、ワルシャワ・ショパン・フェスティバルなど各地の音楽祭で演奏するほか、1995~99年にマインツ大学にて、2008年~ロベルト・シューマン音楽院にて教鞭を執る。第1、2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール審査員。
コッホ ピリオド楽器やその演奏を通して過去を振り返ることは、私たちに数多くの可能性をもたらしてくれます。21世紀においても、新たな音響上の真実を発見するチャンスになるのです。そうした取り組みは、とても魅力的な冒険といえます。私たちは、まるで月にでも旅行したかのように、出発前と変わることができます。
この音楽の将来を見越した問いに対し、ポーランド国立ショパン研究所は、多大な労力と愛情を費やしています。私はそれに心から感銘を受けています。もちろん、音楽に客観的な真実などありません。作品は常にそれ自体で存在するからです。しかし、解釈者や聴き手として、私たちは繰り返し冒険に乗り出し、新たな視点を得るべきです。それだけが、独自の真実、過去へ通じる入り口を見つけることに繋がります。
トビアス・コッホの最新作『モニューシュコ作品集』
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