
《トゥーランドット》世界初演から100年 フランクフルト歌劇場が54年ぶりに新制作

海外のクラシック界のニュースやコンサート、オペラ公演の様子を、現地在住の筆者がいちはやくお届け。今回は5月のドイツの音楽シーンから、主にミュンヘンのオペラとコンサートの模様をレポートします。
フランクフルト歌劇場のプッチーニ《トゥーランドット》が新制作初日を迎えた(初日と所見日:4月12日、指揮:同歌劇場オペラ音楽総監督トーマス・グッガイス、演出:アンドレア・ブレート、美術:ヨハネス・ライアッカー、衣裳:ウルスラ・レンツェンブリンク、他)。
今年は《トゥーランドット》世界初演から100年。各劇場が新制作、再演を行っている。《トゥーランドット》は未完のため、どの版を採用するか注目されるが、フランクフルトはリューの死で終わるトスカニーニ版を基本に、ルチア・ロンチェッティに作曲を委嘱したプロローグ〈私は沈黙しよう〉を冒頭に置くことで補完した。
フランクフルト歌劇場が《トゥーランドット》を新制作するのは54年ぶり。アンドレア・ブレートはドイツ・ムジークテアターの重要な一角を占める演出家だが、これがフランクフルト歌劇場におけるデビューだった。舞台は現代の中国やロシアを想起させる収容所・監獄で、象徴的な動きに集中する。人間味に乏しい演出は、救いのないトスカニーニ版であることを考えると納得もいく。
題名役エルザ・ファン・デン・ヘーファーはドラマティック・ソプラノらしい存在感を示し、リュー役グアンクン・ユーは涙を誘う。カラフ役アルフレート・キムは強靭な歌唱を聴かせ、観客の大拍手を浴びた。
トーマス・グッガイスの指揮は、音響の作りかたと整理に不満が残る。だが、まだ若い。今後を見守りたい。
ベチャワとウィリス=ソレンセンのコンビに注目 バイエルン州立歌劇場《トロヴァトーレ》再演

バイエルン州立歌劇場のヴェルディ《トロヴァトーレ》再演を観た(初日:2013年6月27日、所見日:5月6日、指揮:アンドレア・バッティストーニ、演出:オリヴィエ・ピィ、美術と衣裳:ピエール=アンドレ・ヴァイツ、他)。
この再演はピョートル・ベチャワ(マンリーコ)とレイチェル・ウィリス=ソレンセン(レオノーラ)のコンビが注目された。確かにベチャワのピュアな美声と安定した歌唱は期待を裏切らず、ウィリス=ソレンセンは中音域に問題を残しつつも、ベルカントの魅力を伝えていた。
演出と美術は19世紀の産業化を背景に、ステージがひんぱんに回転する。エロ&グロも散見されるが、作品のテーマとの関係性には疑問が残る。結局、ルーナ伯役アルトゥール・ルチンスキ、アズチェーナ役ユディット・クタージを加えた4人の歌手が公演を救っていた。
ヴァンスカとラトルが指揮したバイエルン放送響のコンサート
5月のバイエルン放送交響楽団のコンサートは、オスモ・ヴァンスカ指揮(1日、イザールフィルハーモニー)、サイモン・ラトル指揮(9日、イザールフィルハーモニー)を聴いた。ヴァンスカのプログラムは、サミー・ムーサ《エリジウム》、サミュエル・バーバー「ヴァイオリン協奏曲」(ルノー・カプソンvn)、シベリウス「交響曲第1番」。ヴァンスカはさすがにシベリウスの色彩感、響きの作り方がうまい。しかし振り過ぎが気になった。
ラトル指揮のプログラムはハイドン「交響曲第86番」、オンドレイ・アダメク《ホエア・アー・ユー?》(マグダレーナ・コジェナーMs)、ブラームス「交響曲第4番」。ハイドンではパリのエスプリが効き、ブラームスでは新発見もあった。たとえば第2楽章のポリフォニックなつくりは音楽の多面性を際立たせ、第4楽章の音楽的ドラマトゥルギーの進行は見事だった。
シャニ指揮ミュンヘン・フィル、圧巻だったマーラー《巨人》
4月24日、ラハフ・シャニ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のプログラムは、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番」(チョ・ソンジンp)とマーラー「交響曲第1番《巨人》」だった(イザールフィルハーモニー)。圧巻はマーラーで、楽章ごとの特徴を強調し、そのうえで全体をまとめあげる。音の立ち上がりがよく、始末も巧い。これにより各音のつなぎが鮮明で音が濁らず、音楽が清潔で前進力に満ちていた。このコンビの今後が楽しみだ。





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