レポート
2026.05.15
【最新】海外クラシックNEWS~fromドイツ②

会場を沸かせたヘンゲルブロック&ミュンヘン・フィル、ホーネック&バイエルン放送響

海外のクラシック界のニュースやコンサート、オペラ公演の様子を、現地在住の筆者がいちはやくお届け。今回は3月末から4月にかけての旧西ドイツの音楽シーンから、オペラとオーケストラのコンサートをレポートします。

取材・文
来住千保美 Chihomi Kishi
取材・文
来住千保美 Chihomi Kishi

音楽学/音楽ジャーナリスト。1991年からドイツのケルン、デュッセルドルフ、現在はミュンヘン在住。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒業、ドイツのケルン大学法学部を経て...

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

ヘンゲルブロック指揮ミュンヘン・フィルのコンサートから

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4月16日バイエルン放送交響楽団(ヘラクレスザール)、17日ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(イザールフィルハーモニー)のコンサートを聴いた。双方とも指揮者の病気によるキャンセルを受けて代役が登場し、プログラム後半は同じ作品という、アクシデントと偶然が重なった。

まずバイエルン放送響は、予定されていた指揮者のヨアナ・マルヴィッツがマンフレート・ホーネックに代わった。元のプログラムはヒンデミット「交響曲《画家マティス》」、プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」(同響第一コンサートマスターのラドスラフ・ズルチvn)、ヴァイル「交響曲第2番」だったが、プロコフィエフはそのままで、ほかをハイドン「交響曲第93番」、ベートーヴェン「交響曲第7番」に変更した。理由はホーネックのレパートリーにある。大編成でマエストロふうの力に満ちたベートーヴェンに、聴衆は大喝采だった。

ミュンヘン・フィルは指揮者がラファエル・ピションからトーマス・ヘンゲルブロックに代わった。ヘンゲルブロックは元のプログラムをそのまま受けた。前半はピション自身が組み立てた「管弦楽組曲《神々の領域》」で、ラモー、ルベル、グルックの合計16作品で構成されている。この珍しい凝ったプログラムを、古楽エキスパートのヘンゲルブロックならではの力量で、古楽に慣れないオーケストラを引っ張る。ベートーヴェン「第7番」は、前夜のホーネックとはまったく違った。12型、対抗配置で第二ヴァイオリンは11人。テンポ、リズムを明快に刻み、魅力的なデュナーミクとフレージング、各パートの対話を中心に楽曲構造を明確にしていた。ノン・ヴィブラートではないが、ヴィブラートは控えめだ。聴衆も大きな長い拍手で讃えた。

ケルン市立歌劇場が〈ワルキューレ〉新制作~アルブレヒト指揮、若く優秀な歌手陣

ケルン市立歌劇場の〈ワルキューレ〉新制作上演の第1幕から©Matthias Jung

ケルン市立歌劇場のワーグナー〈ワルキューレ〉新制作を観た(シュターテンハウス、初日と所見日:3月29日、指揮:マルク・アルブレヒト、演出:パウル=ゲオルク・ディットリヒ、美術:ピア・デーデリヒスとレナ・シュミート、衣裳:モナ・ウルリヒ、他)。同劇場は2025年11月26日の〈ラインの黄金〉初日から、《ニーベルングの指環》新制作を始めている。

第1幕は強制/難民収容所。ジークムントとジークリンデは常にカメラで監視されている。ロマンティックな美しい森と月(月は第3幕につながる)が現実の過酷さを際立たせる。

第2幕、ヴォータンはナチスの将校を思わせる軍服姿で登場する。同時にステージ上手のレントゲン写真などがヴォータンが科学者であることを示唆する。

第3幕、ワルキューレたちは妊婦と助産婦で場所は病院とラボだ。ここではかなりどぎつい出産シーンが続く。ステージ後方では、『産めよ、増やせよ』のスローガンの元に生まれた子供たち(未来の兵士、英雄)が木馬に乗って無表情で遊んでいる。上手には胎児のホルマリン漬けが並び、現れたヴォータンは白衣を着ており、ナチスの医師・科学者ヨーゼフ・メンゲレを彷彿とさせる。飛行服のようなものを着たブリュンヒルデは最後、ステージ奥のカプセルに入る。彼女は未来への架け橋・生き残りという設定だ。

各幕の流れと関連付けはスムーズで、第三帝国時代でも現代アメリカでも、影の実力者は科学および科学者であるということもわかりやすい。ただ、それだけに安直でもあることは否めない。

ヴォータン役は〈ラインの黄金〉に続き、ジョーダン・シャナハン。役デビューだが、バイロイトやミュンヘン(バイエルン州立歌劇場)、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場にも登場しており、すでにワーグナー・バリトンの重要な一角を占めている。ブリュンヒルデ役トリーネ・メラー、ジークリンデ役アストリッド・ケスラー、ジークムント役ダニエル・ヨハンソン、フンディング役ティール・ファーベイツなど、若く優秀なアンサンブルを揃えた。アルブレヒトの指揮は歌手を支え、音響に注意を払う。経験を積んだステージ・コンタクトと音楽作りだ。

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来住千保美 Chihomi Kishi
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来住千保美 Chihomi Kishi

音楽学/音楽ジャーナリスト。1991年からドイツのケルン、デュッセルドルフ、現在はミュンヘン在住。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒業、ドイツのケルン大学法学部を経て...

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