レポート
2026.05.14
【最新】海外クラシックNEWS~fromイギリス

パッパーノ指揮ロンドン響が日本ツアー前のコンサート 勢いあるコンビに喝采

海外のクラシック界のニュースやコンサート、オペラ公演の様子を、現地在住の筆者がいちはやくお届け。今回は4月のロンドンの音楽シーンから、2つのコンサートをレポートします。

取材・文
原田 真帆 Maho Harada
取材・文
原田 真帆 Maho Harada ヴァイオリニスト・博士(音楽)

多様性のあるレパートリーの構築を目指して、日本と英国を拠点に活動。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て同大学音楽学部器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修...

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

今秋の日本ツアーでの曲目も入れた、アントニオ・パッパーノとロンドン響の公演から ©Mark Allan

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今秋に日本ツアーを控えるロンドン交響楽団と首席指揮者アントニオ・パッパーノの演奏会に出かけた(バービカンホール、4月16日)。曲目はショスタコーヴィチ「交響曲第5番」(京都公演でも演奏予定)をメインに、イモージェン・ホルスト「序曲《ペルセフォネ》」とコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲」という内容である。

イモージェン・ホルストは《惑星》を作曲したグスターヴ・ホルストの娘。存命中はその作品がしばしば演奏されていたが、かなりの多作にも関わらず出版の機会に恵まれなかったために、死後は演奏される機会が少ない。

《ペルセフォネ》は1929年に初演されたものの、次に演奏されたのは2024年のBBC交響楽団による録音であった。音楽ライターのリア・ブロードによる解説文が同時代に作曲されたラヴェル《ダフニスとクロエ》やドロシー・ハウエルの交響詩《ラミア》の影響を指摘する通り、みずみずしい木管の開始から鮮やかな色彩が聞こえてくる。後期ロマン派らしく9度や11度の和音が出てくる後半は、実に雄弁な響き。

ソリストにヴィルデ・フラング(vn)を迎えたコルンゴルトの協奏曲では、現実を超越した世界を思わせる第2楽章で、奏者の個性が遺憾なく発揮された。技術的なパートにおけるフラングの正確さは見事、ただ第1、3楽章で音が軋んでいるようにも聞こえた。複雑な管弦楽をオーケストラの側は難なくこなし、指揮者を追い越さんとする勢いだった。

その勢いは交響曲で拍車がかかる。パッパーノの指揮はとても明瞭だが、その手よりも先に下から音楽が上がってくる。たるみがなく引き締まった演奏で、とにかく綻びがない。大音量でも絶対に音が割れない。この純度の高さがロンドン響だと納得させられた。ショスタコーヴィチにしては清廉に過ぎる感もあったが、第4楽章冒頭のブラスの貫禄に唸った。オーケストラも指揮者も双方が余力を持って演奏しているように見える。聴衆はスタンディングオヴェーションで奏者を労った。

ヴィルデ・フラング © Mark Allan
ソリストとしてコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲」を演奏したヴィルデ・フラング ©Mark Allan

アカデミー室内管弦楽団が女性作曲家を特集

イギリスは小規模編成の楽団もおもしろい。4月9日にはアカデミー室内管弦楽団を聴いた。拠点であるナショナル・ギャラリー横のセント・マーティン・イン・ザ・フィールズ教会にて、この日は女性作曲家を特集したプログラム。新古典主義を意識してルーツの違う作曲家4名を集めた。

目玉はジャマイカ出身で英国拠点のエレノア・アルベルガに委嘱した「交響曲第2番」の初演と、アフリカ系アメリカ人として初の交響曲を作曲した女性と言われるフローレンス・プライスの「ヴァイオリン協奏曲第1番」。

まずはバツェヴィチ「弦楽のための協奏曲」で元気に開演した。この曲は2025年夏のBBCプロムスで尾高忠明とBBCウェールズ・ナショナル管弦楽団が演奏するなど、オーケストラの“前プロ(1曲目)”として定番になりつつある。コンサートマスターのトモ・ケラー率いるメンバーが楽しそうに弾く姿が印象的だった。

続いて二管編成の木管楽器と4本のホルン、そしてティンパニが入場し、エレナ・ウリオステ(vn)が奏でるプライスの協奏曲へ。この曲は随所でチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」をほのめかす。言うなれば「太陽さんさんのチャイコン」で、ソリストの明るい音色も手伝って会場ごと陽の空気に包まれた。

後半は立奏。2013年にピューリッツァー賞を受賞したキャロライン・ショウの、弦楽合奏による《Entr’acte》は、ポリリズムに強いショウらしくパートが複雑に分岐していたが、奏者同士がコンタクトをよく取り合って合奏していた。初演のアルベルガの交響曲は、弦楽器にオーボエとホルンが2本ずつ。本人いわく「ハイドンを想起させる編成だが、その小ささを感じさせないように書いた」そうで、目論見は叶っていたように思う。バランスも含めて難しそうなホルン・ソロは美しく完走。

好印象の演奏会で、今度はぜひ音楽監督ジョシュア・ベルが出演する回に戻ってきたい。

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原田 真帆 Maho Harada
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原田 真帆 Maho Harada ヴァイオリニスト・博士(音楽)

多様性のあるレパートリーの構築を目指して、日本と英国を拠点に活動。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て同大学音楽学部器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修...

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