5月19日(日)/ブックハウスカフェ(東京・神保町)

大人も子どもも一緒に歌い、笑った! 垣根なしの「間宮芳生の歌をうたう会」

レポート
2019.05.29

歌は万人のためのもの。個々の感性の違いはあるけれど、大人も子どもも同じように歌に参加して、何かを感じて、うちにもって帰ることができる。
そういう伝わる歌を作りつづけている作曲家の間宮芳生さんに共感した、絵本作家で詩人の本間ちひろさんが、去る5月19日(日)、東京・神保町のブックハウスカフェで「間宮芳生の歌をうたう会」を企画。ONTOMO編集部員も歌いました!

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写真・文:編集部
動画:本間ちひろ、編集部
主役
間宮芳生 作曲家
間宮芳生
主役
間宮芳生 作曲家
1929年6月29日北海道旭川市で、男ばかり4人兄弟の四男として誕生。父は高等女学校音楽教師。長兄が始めたピアノにならって、4歳の頃からピアノを弾きはじめ、6歳の頃、...
企画した人
本間ちひろ 絵本作家・イラストレーター
本間ちひろ
企画した人
本間ちひろ 絵本作家・イラストレーター
1978年、神奈川に生まれる。東京学芸大学大学院修了。2004年、『詩画集いいねこだった』(書肆楽々)で第37回日本児童文学者協会新人賞。作品には絵本『ねこくん こん...
歌った人
和田響子 ONTOMO編集長
和田響子
歌った人
和田響子 ONTOMO編集長
埼玉県出身。DTPや自転車の専門誌の編集部を経て、音楽之友社に入社。現在、Webマガジン「ONTOMO」とオンラインショップ「ONTOMO Shop」を担当。中学校か...

半世紀前からの物語

創る人のエネルギーは、圧倒的だ。

半世紀ほど前、作曲家・間宮芳生は、詩人の木島始とオペラ《ニホンザル スキトオリメ》を創った。

それから四半世紀ほど経って、その木島始絵本作家の本間ちひろは、四行連詩の文通を木島が亡くなる2004年まで続けていた。

1年がかりで創作された幻の作品、オペラ《ニホンザル スキトオリメ》は、2019年1月、野平一郎が指揮するオーケストラ・ニッポニカによって53年ぶりに再演。そのリハーサルから見学した本間は、木島の世界観を音楽の力でより強く感じる

その音楽の真髄や木島との共創の物語を訊くため、間宮芳生を訪ねた対談で、本間は「『空の向こうがわ』という歌を広めてほしい」という間宮の願いを真摯に受けとめ、即日計画した。それが5月19日の「間宮芳生をうたう会」だ。驚きの行動力だった。

さらに驚いたのは、作曲界のレジェンドとも言うべき間宮が、その会のことを聞き、対談で初めて会った本間の詩を歌にするという。うたう会で新作初演か?

木島始を通して出会った2人が、前進していくエネルギーを放ち、まわりの人々がのみ込まれ、感化されていく。創作への意欲がそうさせているのだろうか。リハーサルにも間宮が参加し、準備は整った。

詩の世界を感じながら歌う

さて、よく晴れた日曜日の昼下がり、「間宮芳生をうたう会」の当日。絵本・児童書の専門店、神保町のブックハウスカフェの2階に、大人も子どもも集まった。

1時間半のプログラムの途中で退席することになるかもしれないな……と思っていた子連れ編集部員も、終わってみたらアッという間。曲調がさまざまな5つの歌を、夢中になって覚えようと歌っているうちに時間が過ぎたというような、熱気あふれる会だった。

司会は本間ちひろさん、ナビゲーターはクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん、ピアノは道楽音楽家の亀田正俊さん。

歌は『間宮芳生歌曲集』(作曲:間宮芳生/音楽之友社/2017年)の中からセレクトされた。

「棒が一本あったとさ」(東京わらべうた)
「こころとあし」(詞:工藤直子)
「やまのこもりうた」(詞:工藤直子)
「ぼくはかぜのこ」(詞:工藤直子)
「空の向こうがわ」(詞:友竹辰)
「うたの実」(詞:ほんまちひろ+まみやみちお)※新作初演

間宮さんから作曲当時のエピソードをお話いただき、参加者全員で詩の世界をかみしめながら朗読、そのあとピアノ伴奏をつけて歌う、という内容で進められた会、ここからは、写真と動画で当日の雰囲気をお伝えしよう。

 

本間ちひろさん作の大きな絵本を見てうたう!

まずは、間宮さんのお茶目な自己紹介から。

「最初に作曲をしたのが6歳のとき。それと麻雀を始めたのがほぼ一緒(笑)。父親が麻雀が大好きで、友だちを連れてきては家で麻雀をしていて、人が足りないと駆り出されていた。父親は高等女学校の音楽の教師をしていて、男兄弟4人みんなピアノをやらされていたんですが、長男と一番下の私だけ音楽家になって、あとは脱落(笑)。独学で勉強して、芸大の作曲家を受けたら入っちゃったんですけど、今も作曲をしているという者です」

ここで一気に会場の空気がほぐれ、さらに飯田さん主導で、身体中の「首」のつく部分をほぐして、歌の準備体操が完了。

この会を企画した絵本作家、本間ちひろさん。
この日のために、大きな絵本をつくっていた。これって大切! みんなが顔をあげて歌えて、とてもいいアイデアでした。

「棒が一本あったとさ」(東京わらべうた)

1曲目は、だれもが歌える、わらべうた「棒が一本あったとさ」。間宮さんからは、民族音楽学者の小泉文夫さんとのわらべうたのエピソードが語られた。

「戦時中に都会から田舎へ疎開していた子どもたちが、戦後、日本中から東京に戻ってきたら、東京がわらべうたの宝庫になった。芸大の先生だった小泉文夫が学生と一緒に、東京中の小学校をまわって、子どもたちが歌うわらべうたを録音、簡単に楽譜にしたのが約2000曲。それがドサッと自宅に送られてきたんです。そこに付いていた小泉からのメッセージが『これで何か作れ』というもの。

NHKの『おかあさんといっしょ』で何曲かピアノ伴奏をつけたのと、それでは物足りないから50曲を選りすぐって、子どもの合唱とオーケストラの曲にしたのが、児童合唱とオーケストラのためのコンポジション『子供の領分』。最初がね……(わらべうたを口ずさむ)」

ここで間宮さんが歌った歌詞をそのまま文字にするのが気がひけるので、オーケストラ・ニッポニカの動画でご覧ください。※32秒くらいから始まります

この歌詞を見て、節を思い出せますか?
絵描き歌を間宮さんが実演! 右は、「おまけ」と言って歌って描いてくれた絵。

「こころとあし」(詞:工藤直子)

Q. この曲名を見て、何のことを歌っているかわかりますか?

A. ムカデ。それはそれは粋なメロディ、意外なカッコよさ! ムカデのあの姿を思い浮かべながら、テンポよく歌って、大人の童心も子どもの無垢な心も鷲掴み!

「やまのこもりうた」(詞:工藤直子)

Q. この歌、誰のための子守歌だと思いますか??

A. クマ。しかも、長〜い冬眠の前の、うつらうつらしている様子が目に浮かぶ……。上手に眠れるかな? 山の中での親子の姿を想像していると、「ねむくなっちゃう〜」という子どもの正直な声が聞こえてきて、一同微笑むのでした。

「ぼくはかぜのこ」(詞:工藤直子)

風の子どもが、きゃっきゃと遊びながら、軽やかに駆け抜けていく感じが楽しい歌。「節の上がり下がりがあまりないのでね。横にぴゅーぴゅー走っている感じ」と間宮さん。

「ぼくは かぜのこ きかんぼう」が「かあさんかぜに しかられて」いる1番につづき、2番の「ふざけんぼう」、3番の「あまえんぼう」、そして4番の「きのは」や「ことり」と遊んでいる姿……歌うと、子どもたちへの愛しい気持ちがあふれだしてしまう筆者でした。

「空の向こうがわ」(詞:友竹辰)

この会を開くきっかけとなった歌が「空の向こうがわ」。

「人間同士が争いをしない、という夢を見たことがあるんです。縄文時代の日本人は、戦をしたことがなかったらしいんですよね。そういう世界があったんだ、もういっぺん、そういう世界に住みたいという願望が私の夢に出てきて……。

それを友竹さんに話をしたら、それにのっとって詩を書いてくださったんです。これは今、とっても考えなくちゃいけないことだと。なぜなら同じ種類で争っているのは人類だけだから。いろいろ調べていたら、北米のナバホ族という先住民族のことを知ったんです。ナバホ族の創世神話には、戦争の話が出てこない。そして、その神話によると東西南北には色がある。東は白で南は青で、西は橙で北は黒。それが歌詞に入ってきているんですよ」(こちらの記事も参照

特に3番に心を揺さぶられて涙する人も見られ、穏やかな空気が漂う。

湾岸戦争が起こり、不穏な空気が漂う1991年、平和を願って生まれた歌。
千葉東高校での初演時に歌ったという櫻井良子さん(左)と菊地数馬さん。当時も間宮さんから直接話を聞いて、その憧れていた世界を想像しながら歌っていたけれど、大人になって世界の広さを実感してから改めて歌うと、違った思いが生まれると語る。

「うたの実」(詞:ほんまちひろ+まみやみちお)※新作初演

本間さんが手渡した詩「平和」をもとに、間宮さんはこの会に間に合うように歌「うたの実」を作った。クリエイトする人同士、共感する部分があるようだ。リハーサルや本番当日、本間さんが間宮さんとともにタクシーに同乗していたときの話。

「私のお絵描きワークショップで、子どもがのびのび描いた絵の、線のゆらぎが美しいこと。でも大人が『丁寧に』など言ってしまうと、線がかたくなってしまうと話すと、間宮先生が『音楽も、ピアノだってなんだって、play、遊ぶかどうかで音が違うの。心と体の動きは、切っても切れないの。こちらが楽しく遊んで作った曲を、遊びを忘れて弾かれちゃうとねぇ、困っちゃうよ』とおっしゃったのが楽しく深く心に残っています」(本間ちひろ)

心が共鳴しあう作曲家と絵本作家のコラボ作品を、ぜひ動画でお聴きください。

本間さんがポストカードに描いた絵と詩。ここから歌が生まれた。
当日の朝、できたてほやほやの「うたの実」の楽譜を受け取り、主宰のみなさんが歌とピアノでリードして初演。
歌にするために、間宮さんが歌詞を少しだけ膨らませている。

ゲスト登場! 「カニ ツンツン」(詞:金関寿夫)

『カニ ツンツン』という絵本を歌にした間宮さん。

「歌といっても、しゃべるような感じで、上がり下がりはあるけれど、音程は自由。この詞を作った金関寿夫さんは、とにかく大変な教養人で、この中にはドイツ語もイタリア語もある。モーツァルトも出てきて、僕はモーツァルトのところを、ちょっといたずらしたんですけどね」

さて、大人になると(日本人には?)、このユーモラスな自由さをパフォーマンスするのがハードル高し! ここはパーカッショニストの會田瑞樹(あいた・みずき)さんが熱演。

「歌いながら、金関寿夫先生のユーモアあふれる言葉遊び『カニ ツンツン』の気品と諧謔味が出ることを間宮芳生先生は大切にされていると感じました。さらに、間宮先生の著作でもたびたび登場するキーワード、“足の裏から感じるリズム”をこの作品から学べたように思います。何気ない日常、僕たちは足を踏みしめてリズムを生み出しています。その律動から音楽が生まれ、たくさんの民謡がごく自然に産み出されました。間宮先生の作品の根底には、その精神がいつもとうとうと謡われ、流れ出ていると思うのです」(會田瑞樹)

「大人が何をしているんだろう!?」と最初はびっくり呆然としていた子どもたちも、そのうち爆笑に変わり、みんな笑顔で閉会に。

『カニ ツンツン』(文:金関寿夫/絵:元永定正/福音館書店/2001年)。種々な民族の言葉と、金関自身の創作の言葉をコラージュふうに並べた、色彩豊かな言葉遊びの絵本。

動画撮影・編集:會田瑞樹

歌い終わって清々しい表情の、参加したみなさん。
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