勅使川原三郎が愛知県芸術劇場監督として『風の又三郎』『天上の庭』を上演

開館30周年を迎える愛知県芸術劇場。芸術監督である勅使川原三郎と、ダンサー・振付家・アーティスティ ック・コラボレーターの佐東利穂子が、9月に上演されるプロデュース公演2作品について記者会見を行ない、意気込みを語った。

7月にヴェネツィア・ビエンナーレ2022 ダンス部門において金獅子功労賞を受賞したことも記憶に新しい勅使川原は、2019年に愛知県芸術劇場アドバイザーに就任、その後2020年から愛知県芸術劇場の芸術監督を務めている。

9月3日（土） 、4日（日）の宮沢賢治の原作によるダンス『風の又三郎』は、オーディションによって選ばれた愛知にゆかりのあるダンサーたちと共に、昨年から引き続いて2回目の上演。

「愛知県のダンサーたちが結集して、去年以上のものにする意気込みで稽古中。いかに劇場をより活性化させ、地元の人たちが参加し、仕事ができる場所にするか。地元のダンサーが活き活きと毎年公演できる、育つ場所にしていきたい。結果として、愛知県独自のダンスが生まれれば、より素晴らしいと思う」（勅使川原）

舞台ではダンスだけではなく、朗読も担当する佐東は作品についてこう語る。

「宮沢の作品は子どものためだけのものではなく、私たちが今もずっともっているものがあると感じている。声に出して読むとなおさら活き活きとして、風景や、風が言葉のリズムで運ばれてくる。子どものころに感じた独特の寂しさなどが、ダンスの構成と相まって、素晴らしい作品になっている。ダンス作品は踊って成長し、豊かになっていくものだと思うので、再演の意味は大きい」（佐東）

9月16日（金）、17日（土）に上演される「ダンス・コンサート 勅使川原三郎 ライヴミュージック&ダンス『天上の庭』」は、原作がある「又三郎」とは異なり、文学的なメッセージがない。ダンサー2人とチェリスト、ヨナタン・ローゼンマンで創りあげる作品だ。

「『天上の庭』とは、地上と天上界のあいだ、空ともいえるが、浮世を離れた、純粋な音楽とともにダンスする世界を描きたい。重力を無視するような、重力を受け止めるような、人知を超えた音楽の力と、ダンスが出会う天井の庭で遊ぶ。ダンスと身体、音楽と空間が絡み合い、音楽と体が調和する。“見える音楽、聴こえる踊り”を、と考えている」（勅使川原）

「ヨナタンさんとは初めてのコラボ。プログラムを考えている段階で、実際にお会いして、リハーサルができたことは大きい。彼がどのように音楽を捉えているかが分かるし、今ここでなにをするべきかをニュートラルに話すことができた。全身で彼の音楽を感じ、そこにいるということが、彼を知ること、音楽を知ることになったと感じている」（佐東）

曲目は、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲、ガスパール・カサドの作品、ゾルタン・コダーイのチェロ・ソナタが予定されている。

「共演という形で、同じ舞台でものを作るときには、唯一無二、そこでしかできないものをつくることが第一の目的。それは生きている証でもある。繰り返し演奏されてきたクラシック音楽にも新たな息を吹き込み、価値観を共有することができる」（勅使川原）